
デンドロビウムの語は樹(dendro)の生命(bios)を意するとある。 (江尻 光一)
つまり本来は樹木に着生する蘭なのだろう。
私がこの花を購入したのはいつだったか、記憶は定かでないが、数年も前のことだったように思う。
直立した茎頂に7~8もの蕾が生まれ、その中の一つ二つが咲き出した。
少しフリルを持つ白を基調とした花びらの先端に紅色が施される。
花育ての技を十分得ていない私のもとでも、こうして和みの顔で部屋に訪れてくれるのは嬉しい。
全ての花が咲き揃うのが楽しみである。
根元にはいくつもの新芽が伸びている。
少しは園芸書を紐解いて、この後のケアをどうすればいいかも頭に入れておこう。
最近ある原稿を求められた折りに、阿部次郎の『三太郎の日記』より次の一節を引用した。
「汝を高むるものは、汝自身の中にあり」
何もしなくては何も生まれない。何かをすれば必ず何かを生む。
どんな小さな事からでも、プラスであれマイナスであれ、必ず「得る」結果を生む。
考え、動き、続け、積み重ね、推し進め、振り返り、そして再び行う。
それらはきっとさらなる行動と思考を生み、自らを高める…そういう思いを込めつつ。
次郎の言葉は人に与える言葉でなく、自分自身の生き方や実践への戒めである。
蘭の香にありて己の夜をもてる(瀧 春一)