ひだまりにたんぽぽのわたを見つけた。
一つだけだった。うれしかった。
幼い気持ちになった。
よく折っては茎を持って、フウーっと息を吹きかけて飛ばした。
風に乗って何処までも飛んでいった。
その行方を目で追ったっりした。楽しかった。
私はそこに花が咲いていたことを知らなかった。
確かに黄色い一輪の花があったのだろう。
私に花は見えなかった。
見ようとしなかったのか、見ても気づかなかったのか。
「人見るもよし、見ずもよし、吾は咲くなり」。
野の花は自分に忠実に自分を育む。
自分の為すべき事を成すべくして為す。
そう思って少し野に目を向けてみた。
オオイヌノフグリが星を見るが如く、無数に花開いていた。
周りに目を向ける余裕を持とう。
そう思った冬のひだまりだった。
たんぽぽの絮(わた)とは吹いてみたきもの (安部弘範)