
長寿をテーマにした読売新聞に98歳にして現役植物画家の熊田千佳慕が採り上げられていた。
森にいる昆虫や動物、身近な植物などを描く、日本におけるボタニカルアートの草分けであり第一人者だ。
彼の作品に登場する生き物たちは、どれもが親しみを感じさせあたたかい。
それもそのはず、彼は描くまでに体を寄せ目を近づけ観察し、肌を触れ会話して描く。
まずは対象と友達となり、そしてそれと一心同体となって描く。
彼はこう語る。
「僕は70歳でボローニャの国際絵本展で評価を得て、ようやく花開いた。
それまでは、泥水の中にいるような人生。
80代のときは、本当に青春だった。
描けば新たな発見がある。神様が今まで見えなかったことをこれでもかと見せてくれる。
一生現役だから、僕には老後がない。
ときめかなくなっちゃったら、おしまい」。
と今もファーブル昆虫記を描き続ける。
そして100歳の展覧会の予定まで入っているという。
※参考文献 【PingMag】97歳現役、植物画の巨匠:熊田千佳慕 取材鈴木隆文
その記事の最後の方に「自彊不息」という言葉が出ていた。
「易曰,天行健。君子以自彊不息」、古代中国「易経」にある言葉だという。
易に曰く,天行健なり。君子はもって自ら彊(つと)めて息(や)まず。
天地の運行がすこやかであるように、君子も自ら努め励み、怠ることはない。
人みな不断の努力が大切であり、たゆまぬ向上心こそが自らを高めるということだろう。
熊田の言葉を読みながら、「年」をいいわけにしてはならないと自らを糺す。
お前自身は自らを高める努力をしているのかと、自分に問いかける。
身についてしまひし芸や寒ざらへ (下田実花)