
先駆けて一本伸びて咲く赤いシクラメン。
他は未だ首をUの字にして小さな蕾のままだ。
同じように育てても同時に開花するというわけではない。
いち早く花開くもの、ゆっくり時間を掛けるもの、周りのあとに付いて咲くもの。
それぞれの場所、陽当たり、お隣さん、根張り、吸い上げ…。
目には見えない人の分からないところで自らの調べに合わせて育む花たち。
同じようでいて同じでない。人もそう。
ゆっくりな人、軽やかなリズムを刻む人、突っ走る人。
自分に合うペースを見つければいいのかも知れない。
シクラメンには篝火(かがりび)花という和名があるという。
燃える篝火を思い起こさせるところから牧野博士が付けたという。
物語や詩の世界のような美しい名で私はこの名が好きだ。
恋文は短きがよしシクラメン (成瀬櫻桃子)