
内陸の山裾にある地では日の出が少し遅い。
年改まり、空は澄んで雲一つ無い凛とした初めの朝である。
ひとまず仕事の手を休め、家族揃って眺望のきく地へと車を走らせる。
そこには左手から右手いっぱいに広げても抱えきれないほどのパノラマが広がる。
南アルプスの連なる嶺々の一角が明るくなり始める。
その位置は一月ほど前より南の方に移動し、今は荒川岳や聖岳のあたりのようだ。
黄金色の線が一気に伸び、たちまちいくつもの帯となって広がる。
そしてすべてが顔出した初日の出、あまりにも目映くて日の輪郭は見えない。
諸事の願いと思いを託しつつ、強い光が徐々に嶺の上から離れゆくのをしばらく眺める。
神を隠して迎えた今年の正月、めでたき色の箸置きはない。
池田満寿夫を選び、干し柿を丑年の食い初めとする。
連嶺に礼をして年の改まる (福田蓼汀)
