
初日の出を見た後の元日のお節の時。
「11:50に出れば一番いいんじゃない?」と家人。
初詣は毎年車で30分ほどのところにある古刹へ。
昼食時なら混雑を避けられるのではないかと。
しかし、考えることは誰も一緒のようで、メイン道路から左折して寺に向かう道はすでに車の長い列。
ちょっと動いては停まりを繰り返して少しずつ前に進む。
車窓から右手には宝剣岳と千畳敷カール。
動かない時間、その景色を眺める。
ようやく駐車場。
降りて山門をくぐり杉並木の続く参道に立つと、そこも長蛇の人の列。
石畳は凍結した雪が人の足で磨かれたようになっていて滑る。
好天なのだが、樹齢数百年の巨木に遮られて陽は差し込まず寒い。
前の列の母親が「ちゃんと手を繋いでいなさい」と強い口調で子どもに。
本堂前の石段では人数を制限して上がらせていた。
本尊を正面にして、静かに「秘めた願いと新たな誓い」の手を合わせる。
昨年は出ていなかった寺のシンボルの霊犬(木彫)が鎮座していたのもうれしい。
三重の塔の脇を下って鐘楼の横に出る。
その入り口は塞がれ打鐘は禁止となっていた。
そして再び参道に合流すると、人の列は来たときと変わらず山門近くまで伸びている。
足を乗せるところを選びながら慎重に歩を進める。
車にたどり着きエンジンをかけてほっとする。
駐車場を出ると、下る道はまだ車が長く繋がっていた。
家に着くなり家人は「ああ、疲れた」。
過去の心をリセットする一年に一度だけの特別な時間と空間と儀式。
私は清々しかった。
胸の内人に語らず見せず両の手に包み収めて初詣 (居山聞涛)





