
新春飾りとともに、部屋には久保田米僊の「富士松原」を掲げる。
中腹に雲がかかる冠雪の富士が悠然と構え、その下には田子の浦そして駿河湾が広がる。
左手の岩肌の上に松が見える辺りが三保松原だろうか。
浜辺にはいく艘もの小舟、岩陰には帆を畳んだ船、遠くには霞んで帆掛け船と、長閑な漁村の風景が描かれる。
雄渾な筆遣いと繊細な描写によって、海と山の静かな空気とゆるやかな人の時間が映し出される。
見て、そびえる富士の如く、広き深き海の如く、青きたくましき松の如くにと、自分の来し方を見返し、心新たにする。
さても年改まるも、魔物のような恐禍は人の世を無慈悲に襲い続けている。
いっそう身を引き締め、心鎮め、己を律して「一足一足山をも谷をも踏み越えよ」う。
年改まり人改まり行くのみぞ (高浜虚子)
