
あれからずっと食器洗いは私がしている。
数日前から右と左両方の親指と爪の間が割れて痛い。
それで絆創膏を巻いてやってきた。
でも、翌日にはだいたい取れてしまう。
そんな私の様子を見て家人は言った。
「液体絆創膏がいいかもよ」
「そうだな」と軽く返事する。
ガソリンを入れたついでにドラッグストアに寄って“消毒もできる液体ばんそうこう”を買った。
帰ると、家人は買いものに出かけたようでいなかった。
さっそく箱を開けて割れ目を覆うように塗った。
すぐに乾き、しっかり保護されているのがわかる。
箱を棄て、私専用の薬置きにしまった。
食料品の入った大きな袋ともう一つ小さな袋を持って帰ってきた。
「はい」と渡されたのは、私の買ったのとは違う液体絆創膏の“エキバンA”だった。
さりげなく「ありがとう」と受け取った。
だが、「さっき買ってきた」とは言わ(え)なかった。
そしてだまって共用の薬箱に入れた。
夕食後、買ってきてくれたエキバンAを箱から出してすでに処置した上に重ねて塗った。
そしていつものように黒いエプロンをして食器を洗った。
きのうは冬至だった。
頼まれて落花生の殻を割った。
家人が左手橈骨を骨折をしたのは9月18日だった。
今ではすっかり完治し、元通りの生活に戻っている。
行く水のゆくにまかせて冬至かな (鳳朗)
