
チャイムが鳴ってドアが開く。
そして「おるかや」と大きな声。
立っていたのは果樹農家の小松さん。
「ほれ洋梨よ」と言って、レジ袋を差し出す。
「ルレクチエの出荷がほぼ終わったもんで、はじいたものをちょっとだけどな」
「少し青いのはしっかり追熟させて、黄色くなってから食べてな」と笑顔で。
「いつもありがとうございます。どうぞおあがりください」
「なあに、まだほかにも配って歩かなきゃだで。あがれんのな。じゃあな」
もう何年もいろいろなものを持ってきてくださるが、そのたび忙しそうにそくそくとお帰りになる。
一度くらい、ゆっくりお茶でも飲みながら、いろいろとお話しをしたいと思うのだが。
お酒好きなのでいつかわが家にお招きして一献傾けるのもいいか。
とにかく面倒見がよく、皆から好かれている方だ。
お帰りになった後、“ル レクチエ”を見ていると心動かされるものがあった。
「いいフォルムだ…。木彫(もくちょう)で作品にしてみよう…」と。
今日はけふ明日はあした十二月 (保坂加津夫)
