
気がついたときにはそれはすでに終わりに近づいていた。
レオパ(愛称)の脱皮である。
いつもなら始まる兆候(体全体が白くなる)があってすぐに解るのだが、うっかり見すごしていた。
見れば残るのは顔半分と尻尾だけになっている。
多くの場合、脱いだ皮は自分で食べる。
今回も周りに皮があまりないということはもうほとんどは腹の中に収まったのだろう。
レオパは年に何度も脱皮する。
その様子はいつ見ても楽しい。(懸命になってやっている彼には申し訳ないが)
鼻の先を脱ぐとき、あるいは人間の赤ちゃんのような指先を脱ぐときなどは特に愛らしい。
玄関チャムが鳴って馴染みの配達員さんが届けたのはイエコオロギ。
レオパの大好物の餌。
無くなる直前だったのでいいタイミングだ。
ヤモリの一種であるヒョウモントカゲモドキの彼がわが家にやって来てから11年目になる。
これまで一度も体調を崩すこともなく今に至っている。
そのスローな動きと温和な性格、そしてつぶらな瞳と口元の微笑み(のように見える)に長年癒やされてきた。
また時々見せる四肢を投げうって、だらりとした無防備な姿もかわいい。
人間でいうならその年齢はすでに後期高齢者の域。
大事にしなくてはと思う。
そうこうしているうちにすべてを脱ぎきった。
冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ (川崎展宏)





