昨日の昼前のことである。
畑で苦瓜を採ったあと、藤のそばを通ったら、急にミーンミーンと大きな鳴き声。
声のする辺りに目をやると葉の陰にミンミンゼミがいた。
それも2匹。
しかも交尾中。
それぞれが頭を反対方向に向け、上下になって繋がる。
この状態ではどちらが雄雌はよく分からないので横に回る。
すると上のには丸みを帯びた平たい腹弁が見える。
彼が雄、先ほどの声の主だ。
下のは産卵管の周りを広げて受け入れている。
大事なときをあまりおジャマしてはいけない。
部屋に戻り苦瓜を渡す。
わが家の夏の料理には苦瓜が欠かせない。
「半分に切って中の綿を取って」
ハイハイ。
「刻んだのの水を絞って」
ハイハイ。
「あれやって、これやって」に言われるがままに素直に昼食のお手伝い。
食後、気になったのでもう一度見に行った。
2匹ともいなかった。
オスは新たな求愛行動に出かけたか。
メスは産卵の場所をさがしにか。
産卵後はすぐに死ぬという悲しい宿命を背負って。
初めて見た蝉の愛しあう姿。
今夏、私の思い出に加わる一つのページ。
鳴く哀れ鳴かざるあはれ蝉一と世 (大橋敦)



