
日曜日の午後、椅子に腰掛けたまま少しまどろんでいた。
と、「こんにちは」と大きな女性の声。
さらにもう一度。
あわてて頭と体をシャキッと整え、玄関に出る。
ドアを開けてにこやかな顔で立っていたのは遠い親戚の穂波さん。
「お客さんもいっしょです。連絡もせず突然にすみません」
「作品を見せて貰ったり、話を聞かせてもらおうかと思って」とご主人の清人さん。
後ろには初対面のご夫婦。
とりあえず上がっていただく。
穂波さんが話す。
京都の知人で、木曽に別荘があり、家に寄ってくれたのでお連れしたのだと。
能面を打っておられる方だった。
清人さんが私の話をしたらぜひ会いたいとのことだと。
小一時間、表現のこと、材料のこと、そしてそれぞれの作品のことなどの話を。
帰り際、穂波さんが「ねえ、篆刻を教えてくれない?」という。
最近興味が出てやりたくなったのだと。
すでに材料や道具は買いそろえたらしい。
「いつでもどうぞ」と応じる。
「じゃ、近いうちに来るね」と、京都ナンバーの車に乗り込んでいった。
送り出した後、気がついた。
そのご夫婦のお名前を聞いていなかったことを。
先方からは名乗らなかったし…。
今度穂波さんが来たときに確かめることにしよう。
ツルムラサキの棚を片付けた。
今年もしっかり収穫でき、よく食した。
まだピンクの花が咲き、葉も艶々している。
一方、黒い実も目立つようになった。
時期的にはもう終いにしていいだろう。
送られつ別れつ果ては木曽の秋 (松尾芭蕉)



