
鳴門金時を掘っていた時、家人が電話の子機を持ってきた。
「東京の佐藤さんから」と手渡す。
「モシモシ」
反応がない。
向こうの声は聞こえるが、ここからの声は届かないらしい。
「おかしいなあ、聞こえないのかなあ」と彼。
私は呼びかけながら家の方へ近づく。
風知草のそばに出たところでようやくクリアに繋がる。
「お久しぶり。展覧会さあ、いつ東京に来る?」
すでに搬入と初日に行っていることと、15日が最終日で3時から搬出となっているのでその日にも行くことを伝える。
「じゃあその日美術館で会おうよ」
佐藤君は新潟三条出身で大学時代の友人。
学科は違ったが、なぜか馬が合い、銭湯もよく一緒に行った。
トラッドスタイルを好み、学内ではよくアイビールックに身を包んでいた。
卒業後彼は東京の大手出版社に勤めた。
今はご夫婦で海外旅行などを楽しんでいる。
何年ぶりになるのだろう。
13時に会場で待ち合わせすることが決まる。
鳴門金時は焼芋に良さそうな形と大きさのがたくさん出てきた。
霜が降りる頃にしよう。
庭の南では秋の陽を受け貴船菊が揺れる。
観音の影のさまなる貴船菊 (阿部みどり女)



