
このところ、少年の頃のことをよく思い出す。
一面に白や朱の花が広がる野原で遊んだこと。
コウモリの棲んでいた薄暗い洞窟を友と探検したこと。
珍しい蝶を探し求めて林の中に入り、網で捕獲したこと。
カタバミの葉を絡めて引き合い相撲をしたこと。
桑の実をポケットに入れ、食べながら歩いて家についたとき、白シャツが青く染まっていたこともあった。
いろいろの名前は忘れる一方だが、こうした思い出はクリヤーな映像となって浮かぶから不思議だ。
学校生活でのいいことわるいこと含めてのあれこれも。
『少年の日の思い出』(ヘルマン・ヘッセ)が教科書に載っていたその前後の頃のことである。
「過去を振り返ることが多くなると歳を取った証拠だ」と言うが、たしかにそうかもしれない。
信州の花の春もさらに進む。
見れば姫リンゴにも花。
白雲や林檎の花に日のぬくみ (大野林火)


