
このところ家人は毎朝怒っている。
窓を開けて、外に向かって大きな声で。
1回だけではない。
食事の前後にだいたい3~4回。
こうした姿が1週間ほど前から続く。
その相手はヒヨドリ。
「コラッ、アッチイケ!」と。
そして手を強く叩いて威嚇する。
数羽でやって来ては臘梅を食べる。
膨らんだ蕾から花びらを開きかけた一番いいところを。
地面には彼らが啄んだ後のものなどが多数に落ちている。
その様子がどうも我慢ならないらしい。
どうせなら、口を付けたものはきれいに食べて欲しい。
臘梅もそう思っているに違いない。
枝からはもう半分近くはなくなっただろう。
今年はどうやら揃って賑やかに満開を迎えるということはできそうもない。
私だって悲しい。
臘梅はその蕾の段階からまさに臘のような光沢がある。
黄色の花は空の青を背景にするとそのコントラストが一段と映えて美しい。
全開すると花びらは薄い膜のように透き通る。
そばへ寄ると芳しい香りもする。
「ほんとうににくったらしい!」
その怒りは当分収まりそうもない。
分からないでもない。
私はお茶を飲みながら黙って聞く。
鳥と花、それぞれの生態と宿命。
そして楽しみたい人、愛でる人。
臘梅の花言葉は「慈愛心」「思いやり」。
そんなことはもちろん家人には言わない。
臘梅を無口の花と想ひけり (山田みづえ)




