
土曜日は木曽へ出かけた。
中央アルプスを伊那から標高1160メートルほどの権兵衛峠で抜ける。
4本のトンネルを潜り下った民家が見えるそこはもう木曽路。
突き当たる国道を左に折れ、木曽川沿いに南下する。
大きな蕎麦屋が見えたので入る。
珍しい名の“すんきそば”を注文する。
説明書きを読めば“すんき”とはカブ菜を乳酸菌で自然発酵させた無塩の漬物だとある。
それがそばの上に乗っている。
古くから続く冬の木曽の味。
19号には木曽義仲、御嶽山などの案内、そして「寝覚の床」に着く。
駐車場に車を置いてその近くまで遊歩道を降りて行く。
観光はオフシーズン、まったく人は居ない。
さらにすぐそばまでと岩場を下りて上って手を使って…たいへん。
少し汗ばむ。
まるで石切場のような箱型の大きな岩が両岸に並ぶ。
そんな中に丸く抉られたポットホールもある。
淵は緑色してかなり深そう。
場所を移動しながらその自然の為す造型を目に焼き付ける。
そして登り切った所のお堂が「浦島堂」。
腰を下ろして休憩すると、目の前をガタゴトの大きな音を立てて松本行きの特急が通っていく。
「秋の紅葉の頃は見事だろうね」
「新緑の五月も素敵だと思う」
「またくるか?」
対岸からツッツッツッとジョウビタキの声が聞こえた。
帰りは運転を代わってもらい、木曽谷の景色をのんびり眺めつつ、いろいろに思いを馳せて感慨とともに家路に就く。
木曽川の今こそ光れ渡り鳥 (高浜虚子)


