
そぞろに雨の中の花や木々を見て歩く。
澄んだ青を背景にした時と違う、しっとりとしたそして少し淋しげな表情があったりする。
棗がだいぶ割れている。
採るのをすっかり忘れていた。
大きめののを一つ口に入れた。
リンゴに似たほんのりの甘味と控え目な酸味がある。
私は好きなのだが、家人はそうでもないらしくほとんど手を出さない。
小籠を持ってきて摘んだ。
大きな蝸牛が枝に張り付いていた。
ミスジマイマイのように見える。
この場に似つかわしい。
洗って皿に盛った。
一つ二つ食べて「オイシイヨ」。
家人は反応しない。
昔から美容や老化防止にいいと聞くがもったいない。
今年も棗は私一人の胃袋に収まることになりそうだ。
棗盛る古き藍絵のよき小鉢 (杉田久女)


