
野菜蔓を切って片付け、棚じまい。
支柱を取り外そうとした時、ちょこんと座るのが居た。
どうやら体色を灰色に変えた日本雨蛙。
バサバサ、ユラユラしていたはずなのに、まあ、よくも逃げず。
指の先は丸く膨らんでいる。
これが硝子窓にも止まれる究極の吸盤。
じっとして動かない。
いい顔をしている。
横からや後ろからや、どの角度から見てもその姿は絵になる。
しょうがないので、離れたところから外していく。
でも移動しない。
だんだんその横棒に近づく。
結わえた針金も取られ、棒も大きく揺らされる。
体の向きを変えたりするが場所を移るつもりはなさそうだ。
そこがいいのか。
と、ピュッと下半身から水が飛び出す。
ビックリ、まさにびっくり。
カエルのションベンを初めて見た。
めったにない体験というか、その光景にうれしくなる。
棒も残り僅かとなり、彼のその場もいよいよとなったとき、オクラの葉の上にピョンと飛び移る。
着地もピタッと決まり見事。
すべての支柱を抜き取り、束ねて仕舞う。
このあと、きっとカエルのションベンを、その瞬間を見ることはないだろう。
なにかいいことがありそうな気がする。
やや高き枝に移りぬ雨蛙 (長谷川櫂)




