
「艶々して美味しそうに見えたから柿を一つ採っちゃった」
そう言って家人が私に渡した。
実の重さで撓んでいる枝から手の届くところのものを採ってきたようだ。
受け取ったその朱はまだ薄かった。
「早い。葉がほとんど落ちた頃が収穫時期だよ」
「食べてみる?」
「固いから1週間ほどおいた方がいい」
「じゃ、そうする。色がきれいだったのは夕陽のせいだったのかもしれないね」
木に登って収穫するのはずっとずっと私だけ。
そんな作業をしたことのない家人は、その時期を把握していない。
葉はだんだんに落ちつつある。
ビクを腰にして捥ぐのも近々。
テラオカアザミがまた咲いた。
アブが飛んできてとまった。
このところ庭で再びの花がよく見られる。
水音の消えては生れあざみ咲く (稲畑汀子)


