南天(赤熟の実) ~春草の「早春」~
- 2007/11/20(Tue) -
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     実南天紅葉もして真紅なり  (鈴木花蓑)
 
私が南天を庭に植えたのには理由がある。あわせて八つ手も植えてある。でも、多くの人にはその意味を簡単には理解できないかもしれない。

金地にヒヨドリが中央に二羽舞う六曲一双の作品、菱田春草の「早春」(明治44年)は彼の絶筆である。36歳にして世を去ったこの若き郷土の画家が、最後に光琳の境地で描いた作品である。12枚の屏風に描かれているモチーフはたった四つ。右端に南天、左端に八つ手、そして広くあいたその真ん中にヒヨドリが二羽空にある。幾何学的合理性を持つかのような隙のない空間の美がそこにある。眼疾に苦しみ、腎臓疾患を抱え、自らの死を予感しながら描かれた彼最後の画である。

初めて春草を知った20代後半から今日まで、彼の生き様に感銘を受け、一つ一つの言葉を深く心に刻み、何かあるごとに彼の画集を開いてきた。時には、彼が失明の危機に瀕し苦しんでいた茨城の五浦を訪ね、居を初めて構えた代々木の旧宅跡を訪ね、故郷天竜川の石で作られた墓石のある中野の大信寺を訪ねた。

春草を師岡倉天心は「不熟の人」と呼ぶ。彼の絵に対する炎のような情熱と絹糸のような感性、そして怜悧なまでの厳しい制作態度は「不熟の人」以外に形容する言葉はない。

 私は制作者として、春草の心を自分の世界に持ち続けようと南天と八つ手を植えた。気がつけば南天はその数を増やし、今では庭の至る所に10の数を超えている。今日もまたヒヨドリがやってきた。

南天の実太し鳥の嘴に (高浜虚子)
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コメント
おはようございます!
南天と八つ手にそんな思いがあったのですね!


私はほぼ復調!
会社にも無理しない程度に行ってます!
2007/11/20 09:26  | URL | 薄雪草 #-[ 編集] |  ▲ top

我が家の昔の庭には・・・
南天と八つ手がありました。
四季折々の花咲く庭で、
母なりの理由があって、庭師さんと相談し植えていました。
もしかしたら、古典の研究や絵の好きだった母。
なにかしら、思い入れがあったのかもしれません。
まだ、若くして逝ってしまったので、
もはや、聞くことは出来ません。
こうして、おはなしくださること、
とても嬉しく、又懐かしくも有り。。。。
感慨深いです。
2007/11/20 11:39  | URL | chiemi #-[ 編集] |  ▲ top


こんばんは〜
なぜ天才と呼ばれる人は若くして亡くなるんでしょうね。自分の死期を早くから何か察するんでしょうか?

想像するとき、南天の冬の赤い姿と八つ手の白い実を思いうかべてその対比の美しさに何か冴え冴えとした厳しさをも感じますが、この季節のせいかもしれません。
でも二羽のヒヨドリがそれを和らげてくれているのでは?と思います。想像上の話ですみません。
2007/11/20 23:07  | URL | sae #f6CisVbY[ 編集] |  ▲ top


南天

素敵ですね

雪が積もるととても素敵な感じになりますね
2007/12/06 14:37  | URL | ryuji_s1 #.FTrCIao[ 編集] |  ▲ top

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