蓮池 ~えっ、88ですか?~
- 2016/07/08(Fri) -
蓮池1

叔父さんが来てくださったのは暑さがピークになる午後の時間。
右手に杖、左手に風呂敷包み。
いつもながらのにこやかな表情。
「10分ばかり早く着いたなあ。いつも通りの時間に出たんだに」

「新しいのができたで、持って行くけど」と電話があったのは三日前。
手作り紙細工の新作のプレゼントである。
四季折々の風景や伝統行事などを、カッターと鋏を使って細密に作り上げる。
できた作品をその都度私達に届けてくださる。

風呂敷の結びを解く。
出てきたのは「蓮池」と書かれた小さな箱二つ。

池から伸びて立ち上がり開く二つの蓮華。
その横にはこれからの蕾と咲き終わりの姿。
五枚の葉はその高さを微妙に変え、配置のバランスを取る。
池の周りを草と木杭と石が縁取る。

幾重にも重なる花びら、1㎜にも満たない繊細な蕊、花後の蜂巣、緩やかに起伏する柔らかな葉…。
僅か15㎝程の空間に、静謐な時の流れる世界が表される。

2時間程、制作のこと、花のこと、個展のことなどを話題にする。
「叔父さん、ところで今年でおいくつでしたっけ」
「88な。この前お祝いをしてもらって」
「えっ、88ですか?」
「来週は運転の講習会にも行かなきゃあ。こうして出掛けるにもまだ車は必需品な」

「えーっと、貰いたいのがあるんだに。黒竹が一本欲しいんだけど」
それを細く割り咲いて、ひごにし材料にするのだ。
もう、次の作品の構想が出来ているらしい。
一緒に庭に出て、適当なものを見繕って貰い切る。

「あれも紫陽花かな。珍しいな。」
「柏葉紫陽花です。持って行って植えますか」
「嬉しい。いいかな」
一株を堀り上げ、鉢に入れて車に乗せる。

「またうちにもお出かけて」
「えーっと、名前は柏葉紫陽花だったな」
四つ葉マークを付けたシルバーメタルの車はそろそろと出て行った。

   蓮池のまひるの風の匂ふなり  (五十嵐播水)

蓮池2

蓮池3

蓮池4

蓮池箱

蓮池箱2
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コメント

身近に素敵なおじさまがいらっしゃるんですね。羨ましいです。
可愛らしい、心のこもった丁寧なお仕事見習わないとと思いました。
2016/07/08 08:31  | URL | miya #gSYF2qqM[ 編集] |  ▲ top


素晴らしいなぁーー。hiougi様の彫刻も、そんなお血筋なのでしょうか、と思ってしまいました。

私の所は、亡くなった母、そして母の妹の叔母の二人が、俳句を楽しんでいました。

美しい作品を見せていただいて、心あらわれるようでした。
2016/07/08 13:40  | URL | mimiha #-[ 編集] |  ▲ top


心のこもった素晴らしい作品に魅せられました ♪

老いを前向きに捉えられる感じがして
感謝の念が湧いて来ました。
有難うございます ♪
2016/07/08 20:59  | URL | 優 #-[ 編集] |  ▲ top


88才米寿のお祝いをすまされても、お元気でこんな細かい仕事がお出来になるなんて、あやかりたいです。ご本人もまわりの皆もしあわせですね。
私の里でもそうでしたが、田舎は車が必需品でなかなか手放せないですね、どうぞお怪我のないようにと祈っています。
2016/07/09 16:55  | URL | しーちゃん #-[ 編集] |  ▲ top

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