
この菊、たしかヨーロッパ産の菊だったような気がするが、その名が出てこない。調べてみるがなかなか答えにたどり着けない。そのうちいつかきっと分かるだろうとその作業を放棄する。
ついでに「菊」にどのくらいの異称があるか、古来からの呼び名にはどんなものがあるかなどを手近な本で見ることにした。「大般若、、承知の花、隠君子、草の主」など、おもしろい名がたくさんある。また、「秋しくの花、いなで草、 契(ちぎり)草、かたみ草」など、情緒的な味わい深い言葉もある。「少女草、弟草、花の弟、翁草、 女花、齢草」などは老若男女すべてを網羅していてこれも楽しい。ほかにも「かわら蓬、金草、黄金草、千代見草、残り草、初見草、星見草、鞠花、百夜草、山路草」という名も見つけることができた。いつ頃からこのような名が定着したかは分からないが、天地人の様々な視点から名付けられているということは、やはり「菊」が我が国において多くの人々に古くから愛されたからに他ならないのだろう。
でもやはりこの花には「菊」の名が一番ふさわしい。
さながらに河原蓬は木となりぬ 中村草田男
黄菊しらぎくその外の名はなくもがな 嵐雪
たそがれてなまめく菊のけはひかな 宮沢賢治