
11月霜月、木々が葉を一枚二枚、一枚と落とし、枝や幹を裸にしていく。昨日掃いた庭にまた天狗の団扇のような栃の葉が音を立てて落ちてくる。澄んだ夜の空気は大地から地表の熱を奪う。金沢では雪つりが始まったという。冬が足音を立てて近づいてくる。
玄関先ではまだハイビスカスが咲いている。幾分花は小さくなったとはいうものの、蕾はいくつもついており、しばらくは冷涼とした晩秋の風を受けながらも咲き続けそうだ。これはハワイアンイエローという名のハイビスカス、異国情緒の鮮やかな黄色が目を惹く。
手持ちの本によると、ハイビスカスは東南アジアでは靴みがきにも利用したりするとあり、shoe flowerとも呼ばれるという。そういえば少年の頃に近くの仏桑華をとっては手のひらでつぶして何かに塗って遊んだ記憶がある。花をすぽんと花柄から取り口に含んで甘い水を吸う、そんなことも懐かしい。芙蓉の仲間だというこの花に「琉球木槿(むくげ)」の異名があることも知った。
人は暖かな衣が欲しくなる季節、南国育ちのこの花に信州の冬はつらい。そろそろ、中に入れることにしよう。
いつまでも咲く仏桑花いつも散り 小熊一人