
そして、私は『いっぽ』を書いたのでした。
あの春、三月のことです。
いっぽ
いっぽ
いっぽ
いっぽいっぽはちいさいけれど
いっぽがなければつぎへはすすまない
いっぽがうしろにみちをつくる
いっぽ
いっぽ
いっぽ
いっぽいっぽはちいさいけれど
いっぽをつなげればどこまでもいける
いっぽがたしかなみらいをつくる
ただうしろのあしをまえにうしろのあしをまたまえに
いっぽ
いっぽ
いっぽ
いっぽいっぽをそろえてふみだせば
ひろくてながいおおきなみちになる
いっぽ
いっぽ
いっぽ
今年も春、三月です。
白い椿が咲いています。
東北の春はまだ厳しい寒さなのでしょう。
けっしてあの春の出来事を忘れないように、ひとり『いっぽ』を歌います。
流れ得ざる水の淀みの椿かな (正岡子規)

