
昨日の夕食前のことだった。
「歳の数だけ食べてね」
「………」
小皿に盛られた豆が出された。
小さな子どもなら喜ぶだろうが。
歳の数だけなんて、そんな…。
一つ一つ頭の中で数えながら口に入れる。
間にお茶を入れながら豆を噛み砕く。
そして、最後の一つ。
やれやれだ。
あごも頑張った。
口の中に小さな粒がいくつも残る。
リンゴで口直し。
果たして奥に潜む邪鬼(よこしまなこころ)は出て行ったか。
季節を分けて今日の暦は立春。
窓を開けて両手の拳を上に突き出し背伸びする。
目に入るコブシの蕾はまだ固い。
春立つや愚の上に又愚にかへる (小林一茶)

