マサキ(柾の実) ~愛の手紙~
- 2016/01/17(Sun) -
マサキの実0

中原悌二郎集を読んでいた。
71頁からは『妻 信への書簡』が載る。

―大正6年1月16日の手紙― (長文につき部分を抜粋)
二人は前年に婚約し、東京と新潟に離れて暮らす。

(六行略)
 東京は毎日好天氣、然し寒さは可成り強い。だがそれも朝晩だけ
なので日中はもう春のように暖い。毎日、新聞であなたの方の大雪
だといふ記事を見て、さぞおつらい事だろうと心配して居った。
毎日何と言ふ事なしにあなたの事のみを思つて暮らして居る
(五行略)
 あなたの言ふ通り愛程強い力を持つて居るものはない。そして
愛から出る力は最も眞實な力である。それは萬物を生かす力であ
るからである。
エマーソンが言つて居る。「戀とは一人の人間を通じて全宇宙
を愛し全人生を愛する事」だと。
 愛は生活を創造する。凡てのものを生み出す力である。私達は
我々の愛の形の上に現實の上に表現していかなくてはならぬ。又
表現をせずに居られないのが愛の力である。
(二行略)
 愛は實現を欲し、表現を欲する。愛情を實現して行くのが卽ち生
活である。かゝる生活は不斷の喜びであり、不斷の感謝である。
かくてこそ、人生は賛嘆す可きもの、生活は賛美す可きものであ
る。私達は二人の愛情によつて最も幸福な生活を送り度いものと
思って居る。よし多少の障害があつたにした處、また物質的の苦労
があつたにした處、そんなものは二人の愛情を弱めるよりは却つて
力をそゝぐ肥料になるだらう。
我々は我々の愛情を空想や想像の上ではなく現實の上に表現し
て行かなくてはならぬ。そして表現して行くのは喜びであるから
だ。兎に角、全力を盡くすと言ふ事は、それが愛が動期になつて
居る時は何時でも身軆の上にも精神の上にも健康をもたらすもの
だ。

二人の間では、こんな熱くて真っ直ぐな内容の手紙のやりとりがかなりの数に上る。
その一年後挙式をあげる。
しかしその間、悌二郎は病に冒され、麗しきはずの新婚生活もままならず、その三年後この世を去る。享年34歳。
彼の手紙に綴られた賛美すべき幸福な家庭は形とならずじまいのまま。

およそ100年前の若き彫刻家の愛の手紙。
いつの世にも往々にして、純粋で繊細な人程、訪れる悲しみが早い。

   木に眼が生つて人をみてゐる   (八木重吉)

マサキの実8

マサキの実5
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コメント

中原悌二郎・・ あっ そうです。隣の旭川市では彫刻家の為に
「中原悌二郎賞」を設けていたのでした。
明治時代に大倉組(現在の大成建設)の大倉喜八郎が寄贈した
偕行社という洋風の建物が今も残り、現在は彫刻美術館になって
います。ただ、老朽化が激しく、昨年からメンテナンスの為に
閉館しています。
数年前に開かれた舟越保武の彫刻展が素敵でした。

34歳の若さで生涯を閉じた中原悌二郎。そして、今も彼の名前が
賞として生きているのは素晴らしいなと、思わされました。
2016/01/17 10:41  | URL | mimiha #-[ 編集] |  ▲ top

思いやりを注いで
マザー・テレサは言う

愛というのは、どれだけ多くのものを与えたかではなく、
そこにどれだけの思いやりが注がれたか、
ということなのです。

目に見えないやさしさを感じられる、そんな豊かな心を育てられたらいいなと思います。
大正の時も、万葉の頃も、そしていまも、ひとを思う心はかわらないのですね。
2016/01/17 15:21  | URL | 万葉 #-[ 編集] |  ▲ top

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