
家にはよくアマガエルがくる。特に夜になると南向きのガラス戸に何匹かへばりついているのをよく見る。それはちょうどアマガエルを腹の方から見ることになるので、指の吸盤などがしっかり見えておもしろい。時々、小さな蛾がくると、じっくり時間をかけて近寄る。そして自分の瞬間移動の間合いになったところで、蛾を捕らえる。その一瞬の動作はあまりにも素早い。
そんな生き物のユーモラスというか、厳しい現実というかを目の前でドラマチックに見せてくれるアマガエルである。
時折、彼は知らない間に家の中に入り込んでテーブルの上に居たり、急須の蓋にちょこんと座っていることがある。その小さな体、目に飛び込む鮮やかな緑の色、そして何より、まるで鳥獣戯画に出てくるような均整とれた顔から、家族は皆、彼をかわいがる。「だめじゃない。ちゃんと外で遊んでね」といってそっと手に取りシンビジュウームや月下美人の葉の上に乗せる。そこで彼は30分ほどじっとしてる。葉の上に乗るそれがまた絵になる。
昨日は雨、傘を差して畑や花のあるほうへ足をやる。雨のしずくを受けて、またそれぞれの姿や表情が違う。雨に打たれる薔薇もいい。芳香に誘われてピンクの薔薇に近づくと、彼が雨宿りしていた。外の一枚の花びらを床にしてその上の花びらを屋根の庇にして。その様子に見とれて雨の中を少し眺めていた。