
ことぶき屋の店先です。
幟が立っています。
年末大売り出しです。
福引きもあるようです。
一等は何でしょうか。
郵便ポストにはそろそろ年賀状が投函されているはずです。
雪が残る道を托鉢僧が通ります。
山頭火さん?
「後ろ姿のしぐれていくか」
寒い中お疲れ様です。
叔父からの電話があったのは朝9時。
「師走の飾りができたで持って行くけど、今日は都合はどうだい?」
「出かける予定はないのでいつでも大丈夫です」
「じゃあ、1時半にいくでな」
「楽しみにお待ちしています」
ほぼ時間どおりに車が入ってくる。
杖を右手に左手には風呂敷包み。
ライトブラウンの靴はぴかぴかに磨き上げられ、ズボンにはアイロンの筋がぴしっと入っている。
一人暮らしだが今なおお洒落である。
座して結びをほどいて出してくださったのが、年の暮の田舎の銀座。
なまこ壁に縁台、どこか映画にでも出てきそうな懐かしい風景だ。
背景はいかにも寒々とした冬の空の色。
店の看板や幅5㍉ほどの旗に書かれた文字も見事。
芸の細かい紙細工である。
小一時間、昔の大売り出しや初売りの様子についての話が弾む。
「次は正月飾りを持ってくるでな」
「ありがとうございます」
折々の季節や行事に合わせ、想を練り上げて作って下さる。
毎回の豊かなアイディアと繊細な手作業に敬服する私である。
早速玄関に飾らせていただく。
福引のかんらかんらと回りけり (辻 桃子)


