
碩学のインタビューを集めた『黄金の時代』という本がある。
各分野におけるエキスパートの蘊蓄ある言葉が語り口調で収められる。
一人につき8ページ程のコンパクト版だ。
光る言葉、鋭い言葉、磨かれた言葉、愉快な言葉が並ぶ。
その中からいくつかを。
○安岡章太郎
・人間は50歳から子どもにはけっして見えない、豊かな複眼の世界がひらけてくる。
○会田雄次
・せめて60歳ですね。40歳なんて中身なしまだガキですね。私は60歳になってやっとこれからだと思いました。
○淀川長治
・年をとると、そこら体はガタきます。けど笑いころげ、ホロリと涙する…これがどんなに若さをたもつことか。 もう残り時間は少ないけれど、もっともっと勉強したい。
○藤沢周平
・人間にはある程度、痛みや苦しみも必要。それは“生”の証だから。
○戸川幸夫
・「見られている」と感じる、この動物的緊張でヒトは輝く。
○塩野七生
・マキャベリの言葉から、「しないで後悔するよりも、してしまって後悔したほうがよほど良い」を贈ります。
○田村隆一
・二流人間を目指すと一流が見える。いま、日本人は三流ばかり。外国人の目、猫の目で一度、見てごらん。
○宮脇檀
・家とは「宝島」である。掘れば掘るほど、いくらでもいろいろな宝物がでてくる。人間というのは、何か興味を持たないことには何も見えない。何も眼の中に飛び込んでこない。逆に何々が見たいと思うと、いくらでも向こうから飛び込んできてくれる。「忙しいからできない」という人がいるが、要するに時間の使い方と集中の問題。サラリーマンでも家にいる主婦でも、自分で自分の生活をプログラミング出来ている人は仕事にしろ家事にしろ旅行にしろイキイキとしていて、かつ意欲的。これを全部、人任せにしたり、タイムリミットなしでずるずるはっきりしない時間を積み重ねていくのは、本当に人生の無駄使いだと思うね。
○北島忠治
・僕は、自分が間違ったと思ったらすぐに非を詫びた。僕のモットーは“前へ前へ”、ラグビーと同じだ。
○西岡常一
・電気ノコギリだと切り口が毛羽立ち、水を吸いやすくなってすぐにカビが生えて腐る。ヤリガンナでで切ったものは水をはじく。
キャリアを積み重ねた人々の言葉には重みがある。味があり、深みがあり、説得力がある。
それらの言葉の少しでもを食べて噛んで飲み込む。
黄葉大樹そは歓喜とも悲哀とも (水野孫柳)

