
2羽の雉鳩が住み着いている。つがいだろう。
掃いた金木犀の下に白い糞と羽が落ちる。寒くはないのか。
隣の柿畑では夫婦が三脚を立てて実を取っている。
これから干し柿にするのだ。手間のいる仕事である。
「また根切り虫がいたよ」と茶黒い虫を手に持ってくる。
このところ、タアサイがよくやられている。でも部屋まで持ってこなくても。
広告を見ていて隣で言う。「除雪機を買ったらどうお?」。「まだ自分でできるからいい。だいたい高すぎる」
「そんなの必要経費よ、いつも大変じゃない」。「なんとか頑張る」
「籾殻をもらいに行かない?」
軽トラを走らせて精米所へ。先客がいたらしい。糠もなかった。
台所で第9を掛けながらトントンしている。そして「大根を突いてえ」と渡される。
~春に 春におわれし 花もちる…きすひけ、きすひけ、きすぐれて~と歌いつつ手を動かす。少年の頃よく歌った。
「ギンナンも割ろうか?」
「まだだいぶあるから大丈夫」
「いつもありがとうね」
林檎が届いたとの電話が入る。思いの外早く着いたようだ。送ったのはフジと王林。
赤い菊が咲いている。
庭が淋しくなっていく。
ふと母の顔が浮かぶ。
その名を小さく口にする。
ものつくる時みな一人暮の秋 (後藤紀子)


