
片付けている。
色々を。
本棚も。
ひよどりが赤い木の実を啄む一月のひだまりの中
日曜の新聞をぼんやり眺めていると
ある詩集の書評が目を引く
初めて知る女流詩人
さりげない当たり前の言葉の中に
心を動かされることの多いこのごろのこと
その詩人との出会いを求め
新聞の切り抜きを持って注文する
書店の手配も及んで
手元に届いた本のページをめくると
そこには彼女の生き様のファイルともいうべき深淵の世界が
苦悩と呻吟の流麗な相克
歓びと摂理の間で揺れ動くあからさまな感情
歪曲と混迷した叙情の時間
どこか なぜか
一つひとつの言葉が描く映像に
そういえば
手が最後の一ペ-ジになったとき
桜の木の影が部屋深く忍び込んでいた
私もまた
今 多くの矛盾と悔恨を抱えつつ生きているように思う
蹉跌と蹉跌のはざまをよろけ飛び越え歩く私
幾度となくつまづきつつも
それが独自的存在としての私らしく生きている証ではないか
弱くとも薄くとも脆くとも
むりせず
今の自分らしさを認め
これからも
昔綴った文章を集めたファイルが出てきた。
18年ほど前のものだ。
感熱紙にワープロで打たれており、文字が消えかかっている。
これも私の歴史…。
今本棚にその詩集はない。
暮れに買い求めた胡蝶蘭がまだ部屋を潤す。
花言葉には「幸福が飛んでくる」「変わらぬ愛」「あなたを愛します」などとある。
そうか、今日は2月14日。
バレンタインデー心に鍵の穴ひとつ (上田日差子)
