
棋士の羽生善治さんがタイトル通算獲得数で八十期を達成したという。
まだ四十歳、さらにその数を増やすのは確実であり、この先きっと破られない記録となっていくことだろう。
その羽生さんの言葉がコラム「中日春秋」に紹介されていた。
「私は、どんなひどいミスをしても、すぐ忘れるようにしてきた。おかげで最近は、努力しなくてもすぐ忘れられる」と。
結果としてのミスを引きずることなく、それを“忘れ”早く切り替える。
ただ、その“忘れ”の意味するところは、蹉跌をきちんと分析した上、ポジティブに次へ生かすという姿勢にほかならない。
失敗を悔やみいつまでも胸の中に貯めておく凡人としては、考えさせられる。
そういえば、以前お聞きした青山俊董師の講話の中にも同じような言葉があったのを思い出す。
いつどこにあってもこのところ、是道場なれば、前後を裁断して今日、只今、今ここをなせ。
いつどこにあってもここが勝負どころである。今の途中途中の一歩が自分自身の道場である。
過ぎ去れを追うことなかれ、未だ来たざるを思うことなけれ。過去そは過ぎし、未来そはまだ来たらず。
今日、まさになすべきことをなされ。誰か、明日死のあることを知れ。
コラムの中から共感した羽生さんの言葉をもう一つ。
「リスクを冒さないとプロ棋士としての成長はない。リスクを取らないことが最大のリスクである」。
積極果敢なチャレンジ精神こそが自分のうちにある記録を積み重ねることになる。
過去を作り替えることはけっしてできない。
確かな今を創ってこそ先の道は拓ける。
“前後を裁断して今日、只今、今ここをなせ”
難しい事だが、心しよう。
コスモスのまだ触れ合はぬ花の数 (石田勝彦)

