
薄紅色の小さな花がある。
花びらが形を揃えてきれいに咲く。
風が吹く度に右に左にと揺れる。
優しさ漂う秋の孔雀アスターである。
今晩は明月の夜、十五夜。
十五夜というと、その昔、中学校の国語の教科書に載っていた一茶の句を思い出す。
「名月をとつてくれろと泣く子かな」…、今でもこうして諳んじられる。
ほのぼのとした情景が浮かんでくる句である。
もっとも、一茶が詠んだ中味は単なる情景描写でなく、別のもっと深い意味があったという。
人が月に行く時代になったとはいうものの、空に浮かぶ月はロマンや情緒を駆り立てる。
あるいは自分の心を確かめたり、密やかな願いを託したりする。
今夜、兎の姿は見えるだろうか。
穂芒でも挿して、虫の音とともにその風情を楽しむこととするか。
けふの月長いすゝきを活けにけり (阿波野青畝)


