
「母の顔」
お母さんの顔をみたくなった
お母さんの顔をとおりぬけると
本当のことがわかるように思えてならない
(定本 八木重吉詩集より)
先日、兄と姉から故郷の味が届いた。
鰹の加工ものと独特の香りがする漬物と、それにあれこれと。
昨年まで、それは旧仮名遣いの文字でしたためられた母の手紙の入った小包だった。
母にとって、私はいつまでも子どもでしかないお礼の電話でのやりとり。
自分の年を忘れて台所に立ち、手作りを子どもに送りたい親心。
一年。
耳が遠くなっても、携帯を離さずそばに置いていたという母。
0○05○○3○○○6、かけてももう出ない。
登録のままである。
こうして時が過ぎていく。
そして、いつしか当たり前の生活に。
仏壇の中で着物姿の母は正装に身を包んだ父の隣に並んでいる。
お母さん、空の上での生活はいかがですか。
お父さんと仲良くやっていますか。
人去つて空しき菊や白き咲く(芥川龍之介)
