
「あ」 坂村眞民
一途に咲いた花たちが
大地に落ちたとき“あ”とこえをたてる
あれをききとめるのだ
つゆくさのつゆが
朝日をうけたとき
“あ”とこえをあげる
あれをうけとめるのだ
花の声を聞き取れる耳があったなら。
花と語れる言葉を持つことができたのなら。
花の心を感じることができたのなら。
もっと優しい自分でいられるのに。
花をじっと見ている私は花にじっと見られている私かもしれない。
声なき声を聞く。
十二月のはじまりはあたたかだった。
ここへ来て薔薇の花が増えていく。
薔薇には不思議が宿っている気がする。
蒼天に優しき声の冬薔薇(ふゆそうび) (文)
