ホオズキ(透かし鬼灯) ~『大つごもり』~
- 2021/12/31(Fri) -
透かしほおずき1

秋のことです。
たくさんの鬼灯を採りました。
半分はそのままにし、半分は透かし鬼灯にしました。
それを玄関に、あるいは部屋にと飾って楽しみました。
季節も進み、片付けて箱にしまいました。

そしてまたあらためて五つを出して並べました。
新年に縁があるというものではありませんが、その雰囲気に収まっている気がします。

去年の今頃は樋口一葉を書き写していました。
「ゆく雲」、「十三夜」、「にごりえ」、「たけくらべ」。
そして十一月下旬から十二月にかけては「大つごもり」。
描かれる人物の心理描写が何とも言えません。

さて、淡々と淡々と、静かな年の暮です。

   昨夜よりやや傾きてわれに近し年果つる夜のオリオン星座 (百)

透かしほおずき2

透かしほおずき3

1大つごもり

大つごもり2
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ロウバイ(冬の臘梅) ~すでに春の色を覗かせて~
- 2021/12/30(Thu) -
冬の臘梅031

正月花を飾り終えて、家人はのんびり過ごしています。
お節は先ほど届きました。

私は床の間の掛け軸を「竹の図」に替えました。
これで外も中もほぼ終わりです。

臘梅にたくさんの蕾が見えます。
すでに春の色を覗かせているのもあります。
黒くなった古い実もところどころに残っています。

さても三十日です。
このあとは日記でも読み返しましょうか。

   懐かしく思ひ出を語る面ざしに遠き昔の面影(おもかげ)を追ふ (松)

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雪の朝 ~続く足跡~
- 2021/12/29(Wed) -
雪の朝の足跡031

しんしんとした朝。
そして3時45分、いつものバイクの音。
ガタガタ、新聞が挟まれる。
いつもならタッタッタと走るのが聞こえるがそれはない。
取りに行く。
庭が一面白い。
ふんわりとした中に沈む靴跡が伸びる。

お茶を飲む。
続きを書く。
湯呑みが冷たくなった。
お茶を注ぐ。
書き終える。
新聞を読む。
着替える。

5時15分、米を研ぐ。
予約スイッチを入れる。
シンクに置かれたゴボウを洗う。
メークインを洗って皮を剥く。
板膳を並べ、箸置きと箸を置く。

部屋に戻り明るくなるのを待つ。
6時、まだ暗い。
家人が起きてくる。
テレビが点いて賑やかな声が届く。
そしてリズミカルな包丁の音。

7時、朝食。
ニュースでは各地の雪の様子が映し出されている。
そしてオミクロン株の市中感染拡大の懸念。
すませて椀や皿などを洗う。

防寒ブーツを履いて外に出る。
梨の木の横に動物の足跡が続いている。
一瞬イヌかなと思ったが、でも違うよう。
足跡とともに太いやわらかな筋もある。
雪の上を尾が引きずったようだ。
そんな下につくほど長くて太い尾の動物……。
キツネかもしれない。
だいぶ前になるが、近くの林檎畑で見たことがある。
たぶんキツネ。
キツネにということにしておこう。

雪かきをする。
軽い雪だった。
40分ほどですんだ。
手が冷えた。
ボウルにお湯を入れて手を暖めた。

珈琲を淹れてまた部屋に入った。

昨日の朝のことである。

   雪面は昇華せざりし思惟のごととけ初めてより鈍く光りぬ  (恵)

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冬の川 ~凍てつく朝に~
- 2021/12/28(Tue) -
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昨日は寒い朝だった。
かなり凍みた。

家の横には川が流れている。
庭に立つと、ところどころが凍っているのが見える。
前の日にはなかった。
彼岸桜の下から降りる。

ぶつかる飛沫が様々な氷の形を作っている。
水の落ちるところには氷柱や氷筍。
石の上は泡のように。
草の茎や葉も中に包み込まれている。

場所を移動して見る。
足を滑らせた。
倒れずにすんだが、冷たい水が長靴に入った。
戻ることにした。

また時々見ることにしよう。

   追はれるごと心乾ける師走の町赤きシクラメン抱きて帰る (百)

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メジロ (目白) ~冬の訪問者~
- 2021/12/27(Mon) -
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「日本列島には数年に一度の強い寒気が入り、大雪と厳しい冷え込み」
そんな予報で迎えた昨日の朝。
ここは晴れて青空が広がっていた。

義兄のところへ年暮のお届けをする。
会うのは夏以来だが、元気だった。
「ちょっと待って」と義兄嫁(ねえ)さんが手作りの柚子ジャムをくださった。
家にくっつくようにして大きな柚子の木があり、それには取り残した柚子の実が一つあった。
「それも持って行く?」というので、いただいた。

10時、紅茶で寛ぐ。
しばらくすると外に小鳥の声
ピチュピチュピチュ。
ピチュピチュ。
ピチュピチュピチュ。
そっと窓を開ける。
李に目白が一羽いた。
時々冬芽を啄んでいる。
同じ枝に2~3分いて飛び去った。
楽しい時間をありがとう。

町の広報車が火災予防を呼びかけていた。

   足早に師走流るるわがめぐり心ざわめく落ち葉焼きつつ  (百)

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ノリウツギ(冬の糊空木) ~「えーっと、あと何を話そうと思っていたのだったか」~
- 2021/12/26(Sun) -
冬の糊空木031

車で35分程の市に一人でお住まいの叔父から電話があった。
「干柿が届いた」と。
今年で93歳になるが、言葉は明瞭で声にも張りがある。
以前は折々車で訪ねてきてくださった。
しかし、三年前に免許を返納、それ以来外出もほとんどしなくなったと。

話題を次々に替えて、楽しそうに話してくださる。
特に花についてはたっぷりと。
「えーっと、あと何を話そうと思っていたのだったか」
部屋を明るくしていた太陽は里山に隠れた。
そして「長くなったなあ。また、お二人でおでかけて」と叔父。
電話のディスプレーに刻まれた時間は29分33秒。

私も嬉しく、そして穏やかな気持ちになったクリスマスの日のことである。

花梨の木の前には冬色になった糊空木がある。

   記憶とはおぼろなるもの確かなる記録に過去はよみがへりくる  (百)

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ツタ(蔦) ~今年最後の勤務日だと~
- 2021/12/25(Sat) -
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家の西側には蔦が広がる。
桜や李を抜けた陽が当たる。
その中には南天が立つ。
いろいろな向きにいろいろな表情の葉、葉、葉。
そこだけを見ていると、一瞬冬を忘れてしまう。

きょうは資料を届けに行く日。
彼女は今年最後の勤務日だという。
雪にならなければいいが。

   思ひ出は心に痛し良きことも悪しきことなど昔なつかしく (松)

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ノコンギク(冬の野紺菊) ~クリスマスの……~
- 2021/12/24(Fri) -
冬の野紺菊031

イヤホンを耳に付け、ラジオを聞きながら作業をする。
“らじる文庫”の時間。
昨日は竹久夢二の『クリスマスの贈物』だった。
一昨日は久坂葉子の『クリスマスの出来事』だった。
どちらも再放送で、以前にも聞いている。

片付けて部屋に戻り、書架から二人の本を取り出す。
紅茶を啜りながらページをめくる。

葉子の作品はやはり鋭く尖って重かった。
夢二の童話は頷きながらさらさら読めた。

庭の片隅には冬姿の野紺菊がある。

今夜は姉の送ってくれたローストチキンをいただこう。


   クリスマスの夜を祝ひつつ飢餓の国・動乱の国こよひ如何にと   (百)

竹久夢二童話集

久坂葉子作品集

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リュウノヒゲ(竜の髯の実・竜の玉) ~冬の庭作業~
- 2021/12/23(Thu) -
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薔薇を剪定した。
寒肥を施した。
尻のほうでビリッと音がした。
棘で防寒着が2㎝程裂けた。

小径を縁取るクリスマスローズの古葉を切った。
葉がなくなった株元には花芽がたくさん出ていた。
手際よく進む。
すると花芽を一つ切ってしまった。

風知草のすべてを刈り取った。
その中に白実南天が小さく育っていた。
隠れていた万年青も顔を出した。
玄関周辺が広くなった。

北側の竜の髯には葉の中に実がある。
先日の雨のためかその瑠璃色には土がついている。
一つ転がっていた。

予定よりも多くのことができた。
終わる頃には防寒着も要らなくなっていた。
お茶に干柿を出してくれた。

   吾が悔いの涙滴るきららかに霜深き日の青き竿より  (恵)

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アマチャ(冬の甘茶) ~姉ごころ~
- 2021/12/22(Wed) -
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今年も遠くに住む姉からの小包が届く。
中身はクリスマスに合わせてのローストチキン。
何年も続く“姉ごころ”。
「ありがとう」の電話を入れる。
そして互いの無事を確かめ、短い会話で切る。
もう二年も会っていないか。

庭の南には枯れ色の甘茶。
それに傾きかけた陽があたる。
脈がくっきりと浮かぶ。

   寂しさの遣りどころ無しさ庭邊(べ)はただひと色に暮れなづみつつ (松)

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マサキ(柾の実) ~小さな朱色~
- 2021/12/21(Tue) -
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柾の葉は冬でも青々としている。
その中にいくつもの小さな赤い実。
それは裂けて中から種が顔を出す。
つやつやとした珊瑚のような朱色の。

ツッツッツッ。
近くでジョウビタキの声がする。

遠くには真っ白な塩見岳。 

   もろもろを包みて温き陽の光危ふき冬の心を放つ (百)  

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シモバシラ(霜柱) ~冷えた~
- 2021/12/20(Mon) -
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冷えた。
ものすごく冷えた。

霜柱で辺りが埋め尽くされる。
絨緞を敷いたように一面白く。

水飴のようになって立つ氷の柱。
ぐにゃり。
ぐるぐる。
土を付けたままにょきにょき。
あるいは葉を乗せて持ち上げ。
まるで生きて動いているかのよう。

向こうへ行かなければならない。
その上を歩く。
ザクッザクッ、ザクッザクッ。
ああ、申し訳ない、もったいない。
長靴の形にツブれていく。
後に私の歩幅が黒く続く。
ボウルを持つ手袋した手がかじかむ。

冷えた。
ものすごく冷えた。
同時に清々しさを得た朝だった。

   忘れむと思ひつつ摘む菜畑に土もちあげし霜柱あり (恵)

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サザンカ(山茶花) ~冬だからこそ~
- 2021/12/19(Sun) -
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山茶花が咲いている。
垣根のとは別に離れたところで1本。
その下枝や横枝は切ってある。
幹がすっと立ち、花はまとめて上だけに。

濃い照り葉の中に黄色い蘂の赤い花。
その朴訥とした落ち着きの佇まいは、不思議と周りの冬景色と調和する。

山茶花は冬を選ぶ。
冬だからこそ自分らしさを強く保つ。

   思ひ出は切なきものを若き日の若き心よ今歸り來よ  (松) 

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ミツマタ(冬の三椏) ~「十二月の雨」~
- 2021/12/18(Sat) -
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夜に雨が降った。
窓打つ音が大きかった。
通常のこの時期なら雪なのだろうが。

朝、ぐるりとひとまわりする。
水溜のできたところへ山砂を入れる。

三椏の蕾には小さな丸い雨の粒。
その中に周りの景色が取り込まれている。
ふと浮かんだ「十二月の雨」という言葉。
デュオの歌のタイトルにでもなりそうな。

「ゴボウを洗って」というので洗った。
「カブを漬けるから皮を剥いて」というので剥いた。
そして「これ、このあいだお見えになったKさんからいただいたきんつば」と皿に。

その後、夕方まで鑿と彫刻刀を持って木に向かった。

   感情のたかぶるを押さへこのままにただに黙(もだ)したり運命(さだめ)に負けて (松)

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キセキレイ(黄鶺鴒) ~冬の川のトリミング~
- 2021/12/17(Fri) -
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家の横は川になっている。
庭に立つとすぐ下に見える。

チチッチチチッチッ…と声がした。
そのかたを見ると黄鶺鴒が一羽。
浅い流れの中に小枝のような細い脚を入れて。
嘴を水に差し込んだりしながら何かを探すように移り歩く。
冷たくないのだろうか。
水平に伸びた長い尾は時折り上下に振られる。
一つひとつの動きが見ていて飽きない。
さらに近づくと、下流の方へ飛んでいった。
黄鶺鴒はこうしてほぼ一年を通して身近で見られる。

鳥のいる冬の川の情景をトリミングしたひととき。

   燃えてゐるノートに秘めし想ひ出は炎の中より白き字の浮く (恵)

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シモノハナ(霜の花) ~関屋の秋丁字の茎に~
- 2021/12/16(Thu) -
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このところの朝は連日氷点下。

そうなると庭には一つの楽しみが。
セキヤノアキチョウジを見に行く。
期待の通りにその茎には霜の花。
冷え込んだ朝だけに見られる不思議で美しい造型。
今はまだ小さいのが数個。
これからさらに数も増え大きくなっていくのだろう。

9時半には女性二人の来客の予定。
部屋を暖めて、資料の準備をしなければと中に入る。

そして時間通りに車が着く。
およそ2時間、大学院を出たばかりのその語りに熱い情熱と強い意志を感じて。
まだ話したりなくもさらに別の機会にと。

   重荷ひとつ下ろし夜のオリオン座ひときは澄みてわれにまたたく (百)

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アジサイ(冬の紫陽花) ~「寒い冬には根を張れ」~
- 2021/12/15(Wed) -
紫陽花の茎に氷032

昨日の朝はだいぶ冷えた。

陽が差し込む玄関のドアを開ける。
その右手には麦色に染まった風知草の上に紫陽花。

その茎の数カ所が光っている。
秋に剪定したその切り口そばが。
何だろうと近づく。
氷だった。

根から吸収された水分が道管によってその先まで届けられ、行き場を失って染み出たものが凍ったらしい。
初めて見る。
「発見!」、感動、感動と子どものように心が弾む。
これまでにない新しいプレゼントをいただいた気分でうれしくなった。

見ればもう新しく青い芽もある。
凍てつく土の下では活発に根が働いているのだ。
ふと、いつかどこかで聞いた「寒い冬には根を張れ」と言う言葉が思い浮かぶ。

   信ずるもの実在のみと言ひきわが奥底に貘は夢食ふ (ふみ子)

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紫陽花の茎に氷033

紫陽花の茎に氷034
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カキ(冬の柿畑) ~ファイト~
- 2021/12/14(Tue) -
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「包丁を研いでくれたの?よく切れるようになった気がするけど」
久しぶりに木彫制作をしている。
切れ味が悪くなった彫刻刀を研ぐついでに包丁もやっておいた。
「おまんじゅう出しておいたから」と。
休憩にした。

家の南隣に干し柿用の柿畑がある。
11月の中頃に収穫する姿があったが、半分近くを残したまま終わりにしたようだ。
そのいい色した熟柿がたくさん。
そこによく鵯が来て啄んでいる。
彼等にとっては選り取り見取りでさぞかしうれしいことだろう。
落ちて転がるのもいかにも美味しそうで。

後一週間で仕上げようと思っているが……、なぜか以前のようにすいすいとはいかない。
感覚が鈍っている。
声に出さずに「ファイト」と励ます。

   忘れたき我を呼び戻す過去達よ明るき歌の生まるるは何時  (百)

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コケ(冬の苔) ~衰えた身と心に収められるだけのものを~
- 2021/12/13(Mon) -
冬苔034

陽が西に傾く。
赤みを帯びた低い光が草木を照らす。

それは杏の木の下にこびりつくように生えている苔にも。
目を寄せてみれば、その中に伸びる米粒のようないくつもの胞子嚢。

これまでの研究に関する本や資料を提供したいと、知人を訪ねた。
戦時中に発刊された貴重な本などもある。
引き受けてくださる事になった。

人生も苔むせば。

   昨日に変はる新しき風頬に受け裡なる過去に終止符を打つ  (百)

冬苔032

冬苔035

冬苔036

日本美術院史1-2

日本美術院史2-2
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シュウメイギク(冬の秋明菊) ~移ろう様~
- 2021/12/12(Sun) -
冬の秋明菊031

秋明菊にも冬。
彼の姿は白い綿に。
中には小さなごま粒の種。
その移ろいの様もまたの趣。
形あるものの哀れとはかなさと。

   いくつかの傷もある身の來(こ)し方(かた)を心に秘めて生き繼(つ)ぎて來(き)し   (松)

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ブルーベリー(冬紅葉) ~スーッと~
- 2021/12/11(Sat) -
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知人に届ける資料を作成し、印刷を終えた。
20ページと、少し厚くなったそれを整えようと持ったとき、左手の人差し指の腹に痛みが走った。
出ていた一枚の紙がスーッと切ったのだ。
横に1㎝程の血が出た。
すぐに止めて、絆創膏を貼った。

少し懐かしい感覚になった。
昔は書類や資料を作ることが多かった。
その時に、何度か経験していたことだった。
そんなことなどを思い出しつつホッチキスで綴じた。

一日経った今でも少し痛みが残っている。


ブルーベリーの紅葉は遅れて今。
冬の光を集めて静かに。

   寂しさの心に觸(ふ)るるものありて今日のひと日を顧(かへり)みるかな  (松)

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オオサカフユザクラ(大阪冬桜) ~ちらほらとちらほらと~
- 2021/12/10(Fri) -
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ちらほらと。
裸木にちらほらと。
白い小さな花がちらほらと。

大阪冬桜は二季咲きの八重の花。
年を越して春、再び他の桜に合わせても咲く。
そのときはにぎやかにあふれるように。

一枝剪って、座卓に置いた。
家人は咲いていることさえ気づいていなかった。

師走の青い空に桜の花がちらほらと。

   もろもろを包みて温かき陽の光危ふき冬の心を放つ (百)

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サザンカ(山茶花) ~「人のため」~
- 2021/12/09(Thu) -
山茶花2033

道沿いにも山茶花の花があります。
冬の日の垣根の中です。

あれ?
ん?
同じ木に白いのと赤いのが咲いているのです。
確かこの木は赤い花の木だったと思うんですが。
花の形も少し違います。
花びらの数もだいぶ違うようで、白はたっぷりです。
おもしろいですね。

ラジオから「人のため」という言葉が耳の中に入ってきました。
世界でトップに立った著名なアスリートの方が、裏方として目立たぬ場所で次の世代のために黙々と働いている話でした。
一年が終わろうとする今、自分を振り返ります。
私は「人のため」どれだけのことができたのでしょう。
今年の“年頭の所感”に書いたことをあらためて思い出し、残る日の中、小さなことでも意識して過ごすことにします。

   思ひ出は心に痛し忘れねばならぬことなり忘れ得ずして (松)

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山茶花2032

山茶花2034

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新しい常設展示 ~知人の作品を観る~
- 2021/12/08(Wed) -
松澤さんの展示室1

ジャンルを超えて表現に携わる少人数のグループがある。
メンバーは洋画、日本画、彫刻の5名で、今はモデルさんをお願いしてスケッチやクロッキーなどをする。
先般もその会があった。
開始時刻頃になって洋画の一人から主宰者に出席できないので皆さんによろしくとの電話が入った。
事情があって自身の制作に忙しいとのことである。

近隣の市に全国でも知られた大手食品工業会社がある。
赤松や桜、楓など種々の木々に囲まれた広々とした公園のような中に本社がある。
そこには企画展が出来る大きなホールの展示場や植物をモチーフにした細密画の常設ギャラリーもある。
そのギャラリーの中に新たに常設展が加わった。
それは電話のあった仲間の作品の展示室である。

会が終わって電話した。
そこへの展示のための新作に取り組んでいる最中とのことだった。

観てきた。
彼は一水会の会員であり、日展にも入選をしている写実の作家である。
もともとは銀行マンで、独学で洋画を始め、定年退職後制作に専念している。
まだオープンして間ものないこともあってか、観覧者は私一人だけだった。
受付の方が近寄って「いい絵ですね」と声をかけてくれた。
うれしくなった。
もういちど全体を見た。

外に出ると、何か湧き起こるものを感じた。


昨日は「大雪(たいせつ)」だった。
しかし降ったのは雪ではなく雨だった。

   老年は冬枯れにあらず人生の充実期といふ声のうれしく  (百)

松澤さんの展示室2

松澤さんの展示室3

松澤さんの展示室4
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サンシュユ(山茱萸の実・秋珊瑚) ~12月の第一週の日曜日には~
- 2021/12/07(Tue) -
山茱萸の実0321

一昨日3台とも冬用タイヤに履き替えた。
たとえば7月の第3月曜日が「海の日」と決まっているように、私の暦では12月第一週の日曜日がタイヤ交換の日になっている。
長期予報が暖冬であれ厳冬であれ、よほどのことがない限りずっと変わらずにそうしてきた。
SUVのは大きくて重く、そのチェンジにはけっこうな労力と時間を要した。 
年々腕力、体力の衰えを自覚する。
ともあれ、これでいつ雪が降ってもひとまず安心。
ちなみに普通タイヤへの履き替え日は3月第一週の日曜日である。

高台にある近くの温泉施設へ行って体をほぐした。
露天風呂からは雪に覆われた南アルプスの山並みが見える。
7種類の湯を移ってのんびりと小一時間。
温泉ってどうしてこうも気持ちいんだろう。
疲れが取れ、足先まで軽くなったような感じだった。

庭では葉をすっかり落とした山茱萸に赤い実がぶら下がっている。
艶やかで美味しそうなのだが、鳥すら食べない。
その横では冬芽も育ち。

   時折は大聲擧(あ)げて叫びたし心爽やかなる心地して (松)

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山茱萸の実0323

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干し柿と胡桃 ~12月になるとこうして~
- 2021/12/06(Mon) -
干し柿と胡桃031

玄関のチャイムが鳴った。
穂波さんだった。

「車がないから、いないかと思った」
家人は出かけ、私のは裏側に駐めてある。
「干し柿。それから胡桃も」
「ありがとう。うれしい。お正月に使える」
「あれ、干し柿の袋が一つ足りない。3つ用意したつもりだったんだけど。また後でもう一つ持ってくるね」
12月になるとこうして手作りのを干し柿をいつも届けてくれる。

家人が買い物から帰ってきた。
そしてすぐさま「食べよう」と、袋の口の麻紐を解き、中から二つ取り出して小皿に乗せた。
やわらかくてあまい。
おいしい。
食べるのがもったいない……。
お茶とともに、ゆっくり時間をかけて味わう。

一袋は新しい年のため残しておく。
正月の朝に供えた後、家族揃っていただくのを長年の習わしにしている。
家人の幼い頃の歯固めを受け継いで。

    くよくよと煩ふ勿れ高きを見よゆったりと舞ふ青空の鳶  (百)

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干し柿と胡桃033

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サザンカ(白山茶花) ~あ~あ~
- 2021/12/05(Sun) -
白山茶花0320

昼食後のことです。
いただいた私家版の歌集を読んでいました。
すると眠気がさしてきました。
少し寝ることにしました。
覚めて枕元の時計を見てびっくりしました。
2時間ほど経っていたのです。
あ~あ。

古い本や雑誌を処分することにしました。

白い山茶花が咲いています。

   忘却とはいと難しきことなるを此頃切に知りしせつなさ (松)

白山茶花0321

白山茶花0322

白山茶花0323

月光
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凍る ~氷点下の朝~
- 2021/12/04(Sat) -
霜柱

氷点下の朝。
水飴のような霜柱。
オレガノの葉は白く。
睡蓮鉢の表面には氷。

その時ならではの形が生まれ。
その時ならではの姿に変わり。

大方の葉は落ちた。
掃くのも短くてすむようになった。

部屋に戻るとスライサーと人参が1本出ていた。
「せんぎりしてね」という。

   「一日一生涯」とふ言葉沁むわが変哲もなき明け暮れを (百)

霜1

霜2

睡蓮鉢の氷1

睡蓮鉢の氷2
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東山魁夷唐招提寺御影堂障壁画展 ~「青の世界、墨の世界」~
- 2021/12/03(Fri) -
東山魁夷障壁画展パンフレット

昨日、『東山魁夷唐招提寺御影堂障壁画展』を一人で観てきた。
通常なら鑑賞後の感想の言葉がすっと出るところなのだが、今回はなかなか出てこない。
いや、その68面という壮大なスケールと制作に費やした10年という歳月という事実の前に簡単に出せない。
そしてその深淵なる精神性に。
それは単なる作品を超えた、歴史的偉業であり文化遺産である。

手元にある美術誌の中で解説される美術史学者の言葉を引用して、今あらためて振りかえる。

遠い昔、唐の高僧は度重なる試錬を乗り越えて来朝、この寺を開いた。
そこにいたる経緯と師の精神性の高さに感銘を受けた画家は、ここに壮大な障壁画を手掛け、ひとつの達成とひとつの挑戦を一度に試みた。東山芸術の頂点、その真髄はここにある。

・上段の間 「山雲」   とめどなく湧き上がる雲煙まとう山の量感
・宸殿の間 「濤声」   嶮岨な岩を乗り越えてもなお来たる波の永遠
・桜の間 「黄山暁雲」 絶え間ない雲の去来と峨々たる稜線の岩山
・松の間 「揚州薫風」 柳の葉ずれの音響く、鑑真和上の故郷に捧ぐ
・梅の間 「桂林月宵」 月光の下、たなびく雲つき破る奇峰の連立             (『太陽』菊屋吉生氏監修より)

東山魁夷はこの作画について次のように述べている。
「この障壁画も、私が描いたものではなく、描かされたものである。鑑真和上の精神から発したものが、私を導いて、この絵を描かせたと思われてならない」                                             (『自伝抄 旅の環』 リーフレットより)


支度を済ませ、予定の7:30分、エンジンをかける。
すぐに高速道に乗る。
車窓から北アルプスの白い峰々が目に映る。
穏やかな青い冬の日。
美術館に着いたのは10時頃。

見終わって、屋上テラスに上がると、目の前には善光寺本堂の大屋根。
風はない。
遠くに立ち上る白い煙はまっすぐに上がっていた。
帰ろう。
美術館裏手の駐車場で誘導にあたっていた係の人になぜかお礼を言いたくなった。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」と返ってきた。

   こだはりを捨ててゆるし仰ぎみる空の深さよ限りなき碧  (百)

善光寺
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冬の虹 ~成し遂げよう~
- 2021/12/02(Thu) -
冬の虹031

昨朝、いつものように庭を掃こうと外に出た。
するととてもこまかな雨が降っていた。
部屋にいるときは気づかなかった。
雪でなくてよかったと、諦めて部屋に入ろうとして西の方に目をやると里山の上に虹があった。
冬に虹は珍しいと、しばし眺めた。
そのうちだんだんに薄くなって消えた。

年内にもう一点作品を仕上げると自分に課した。
取りかかってはいるが少し遅れ気味。
負けず、言い訳せず、集中して成し遂げよう。

部屋では小さな白い蘭が開きだした。

   悔いになき日々を生きたし彫刻の篦を洗ひて12月を迎ふ   (上武旋転子)

冬の虹032

冬の虹033

キンギアナム03121

キンギアナム03122
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ジョウビタキ(尉鶲) ~大根と菠薐草~
- 2021/12/01(Wed) -
菠薐草と大根

義姉が大根と菠薐草を持ってきてくれた。
「もう今年はこれで最後かな」と。
「『東山魁夷障壁画展』を一緒に見に行きませんか?」
「もう見てきたの」
相変わらず、アンテナ高く身軽に動いている。

袋を開くとどちらもきれいに洗ってあった。
すぐに使えるようにとのその心遣い。

尉鶲は毎日のように訪れてくれる。
今は雌雄で一緒にが多い。
雌がガーデンチェアの背にとまれば、雄も同じところにと。
離れて花水木の枝に移れば雄も追う。
その睦まじさ。
「睦まじ……か」

そういえば義姉の歌集には重く苦しく辛い歌がいくつもあった。

   口開くことさへ重き家なかに己が言葉は風のごとく舞ふ  (恵)  

ジョウビタキの雌03111

ジョウビタキの雄03111
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