イソギク(磯菊) ~山里に咲く海辺の花~
- 2017/10/31(Tue) -
イソギク171

磯菊は小さな黄色い花。
やや厚めの葉は縁辺を白く囲む。

本来は海岸近くに自生するという。
それがここ山国の片田舎に根を下ろして10数年。

あなたの故郷は温暖な潮風の町。
思えばひとり家族と離れてはるか遠くの地。
黙々と異土でその生を育む。

ええ、はい、そうですねと呟く私。

   秋日和郷愁誘う磯の花 (あや)

イソギク172

イソギク173

イソギク174

イソギク175

イソギク176
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ウド(独活の実) ~夢の中で~
- 2017/10/30(Mon) -
ウドの実171

食べ物の好き嫌いはあまりない。
だがどうしても食べられないのが二つだけある。
特に「K」はいくらお金を積まれてもダメだ。
苦手とか嫌いというレベルではない。
生理的に受け付けないのである。
料理の中にそれが入っていることを知らずに、口に入れたとしても喉が即座に反応して戻してしまう。
何らかの出来事によるトラウマがあったのかどうかはよく分からないが、小さい頃からそうだった。
この歳まで、宴会などをも含め、様々な場面でも人に知られないようにうまく避け、上手に除けてきた。
それは普段の料理に多く使われる食材で、むしろ多くの人は好みかもしれない。
嫌いな物としてその名前を出すと、ほとんどの場合「なんでこれが?」と怪訝な顔をされる。
しかしこれだけは他人が入る余地のないデリケートな領域だ。

昨日のことだった。
夢の中で誰かの家に招待されて食事をしていた。
それがなんと、喉が拒絶するはずのソレが入った料理をいかにも美味しそうに箸で次々に運ぶ自分がいたのだ。
そして半分ほどを平らげた時、目が覚めた。
あり得ないことが夢の中で起きていた。
たとえ夢であったとしてもソレを自分が食べていたという恐ろしい事実。
こんなことは初めてだ。

首まわりに少しの汗を掻いていた。
ベッドから降りると、体が重くなぜだか腰が痛かった。

「夢の中だよ!夢!夢!」と、ほんとに頬をつねってみたくなった。
でも一体全体、この時期にどうしてこんな夢を見たのだろう。

多分この先も一生私はソノ「K」を喉に通すことはない。
いかに周りの人たちが、食物繊維を含んで健康にいいだの、味が染みこんで美味しいだの、その食感がたまらないだのと言おうが。


美術館へ出かける予定をも中止にさせた強い雨も朝のうちには上がるとのこと。
ずっと降り続いていたために体中に溜まっていた鬱屈した気分からもようやく解放されそうだ。
「♪知らない町を歩いてみたい。何処か遠くへ行きたい♪~」

独活の実が黒く色づき始めている。

   秋深き音生むために歩き出す  (岡本眸)

ウドの実172

ウドの実173
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ツキミソウ(月見草) ~雨の中で~
- 2017/10/29(Sun) -
月見草3171

月見草の蕾が外の包みを解き始め、中から花びらの白い色が覗いていた。

朝6時、弱い雨の中で開いた。

雨は強さを増した。

昼過ぎにはすでにだらりとした姿に変わっていた。
それには滴とともに跳ね上げられた土が乗っていた。

見せるわずかな花の時。
月見草のその時只今の一生。
雨と相まっていっそうの哀れを感じさせる。

水をたっぷり含んで薄いピンクに変わった花は濡れた地面に顔をつけていた。

  よりそへばほころびそめぬ月見草 (池内友治郞)
 
月見草3172

月見草3173

月見草3174

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バラ(蔓薔薇) ~頭上の花~
- 2017/10/28(Sat) -
蔓薔薇2171

蔓薔薇が咲いている。
植えたてからかなりの年月が経つ。
他の木に絡むようにして3~4Mほどまで伸びている。
この高さでは到底手を入れることは無理。
ましてや一輪、二輪切って活けたいなどは叶わない。
空を背景にした姿を仰いで眺める。

また台風が近づいているという。
雨、雨、雨の予報。
ここ最近の週末はどうも移ろいゆく秋をしみじみと楽しむことができていない。
もったいないような淋しいような気分。

  天国に近い薔薇です 空中修道院   (伊丹三樹彦)

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マメガキ(豆柿・信濃柿・小柿) ~毎年訪ずれる海外からのかわいいお客さん~
- 2017/10/27(Fri) -
マメガキ171

ツッ、ツッ、ツッ、ツッ。
ああ、30年近くも聞き慣れたその声。

庭に出る。

いた。
光沢のある灰色の頭部とオレンジの腹部。
羽の黒には小さな白い三角紋。
今年もまた庭にジョウビタキ。

来てくれてありがとう。
私の秋にはいつも彼がいる。
春までお気楽にどうぞごゆっくり。

上を見ればたわわに豆柿。
この色ではまだ渋い。
あと一月待てば黒紫になる。
そうなるととても甘い。
それが好き。

人なつっこい彼の姿と話しかけるような愛らしい声を聞きつつ熟すのを待とう。

   豆柿をこころみて渋大いなり  (皆吉爽雨)

マメガキ172

マメガキ173

マメガキ174
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キク(黄菊) ~花があり花にある~
- 2017/10/26(Thu) -
黄菊171

黄菊も開く。

そこに何年もある。
まわりに染まり、だんだん野性味を帯びて。

部屋に花がある穏やか。

てきとうに切って、好きなように挿す。
できるだけ欠かさずに。

好きな言葉、“花有情”。

    黄菊とは蕊に籠れる黄なりけり (久米三汀)

黄菊172

黄菊173

黄菊174
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コムラサキ(小紫) ~雪の便り~
- 2017/10/25(Wed) -
コムラサキの実171

少し前に仙丈や塩見など、南アルプスに初冠雪があった。
そして昨日は志賀高原からも雪の便り。

空気の冷えが一段と進む。
じきに冬鳥たちもやってくるに違いない。

コムラサキが鮮やかな実を付けている。
この撓む枝に愛らしいジョウビタキの乗る姿が見られるのも近いはず。

  冷たしや式部の名持つ実のむらさき  (長谷川かな女)

コムラサキの実172

コムラサキの実173
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ヤマブドウ(一才山葡萄) ~美味しいというわけではないが~
- 2017/10/24(Tue) -
山葡萄174

少しの山葡萄を採った。
洗って小さな白い磁器に入れて出した。

2粒を口に入れてから家人は言った。
「食べるところが少ない。そんなに美味しくない」
不満げだった。

たしかに、甘くて美味しいというほどではない。
でも、その野趣というか、素朴な味わいが山葡萄らしくていいのだが。

私は器を持って一人部屋を移した。
肘をつきながら、一つひとつ親指と人差し指に挟んで、残りの全部を食べた。

   野葡萄のむらさきあはき思ひかな  (島谷征良)

山葡萄171

山葡萄172

山葡萄173
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カリン(花梨) ~台風の後に~
- 2017/10/24(Tue) -
台風の後で171

大型で強い台風は昨日未明に県内に最接近し、各地で警報や避難指示等が出た。
学校にも多くの休校をもたらした。
そして高速道路の通行止めやJRも不通区間が出たようである。

風が収まった朝、外に出ると庭には折れた枝やちぎられて葉が散乱していた。
色づき始めたカリンの実はいくつも落下している。

地面が濡れていて片付けたり掃いたりするのに時間が掛かった。
作業をしているとだんだん青空が広がってきた。
久しぶりに汗をかいて気持ちよかった。

しばらくすっきりしない日が続いていた。
これでようやく、目に映る景色にも深まる秋らしさが戻って来そうである。

 やはらかき陽をまぶたにす颱風過 (石川桂郎)

台風の後で172

台風の後で173
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ベンケイソウ(弁慶草) ~強者の名を~
- 2017/10/23(Mon) -
ベンケイソウ172

濡れて弁慶草。
しとしとと。

滴を湛え。
強者の名の小さな秋の花。

佇めば、私も雨の物語。

   雨つよし弁慶草も土に伏し  (杉田久女)

ベンケイソウ171

ベンケイソウ173
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ホトトギス(杜鵑草・油点草・時鳥草) ~雨はきらいではないけれど~
- 2017/10/22(Sun) -
杜鵑草171

雨はきらいではない。
いや、どちらかというと雨の情景は好きである。

しかしこれだけ続くと、そろそろすかっとした気持ちのいい青空が欲しくなる。

曇りガラスを通して見るみるように、花たちもその彩りのトーンを抑えれる。
コントラストも狭まれて輪郭が弱くなる。
これはこれで一つの味わいなのだが。

杜鵑草が咲く。
花びらは不思議模様を纏う。
妖しげな美しさとでも言おうか。
蕊にはいくつもの透明の小さな玉。
女性の飾りを思わせる。
花言葉は「秘めた思い」「永遠にあなたのもの」。

台風も接近している。
まだ、澄んだ秋日和は先になりそうだ。

   ほととぎす咲かせかたぶく齢(よわひ)かな  (岩城のり子)

杜鵑草172

杜鵑草173

杜鵑草174

杜鵑草175
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ナツメ(棗) ~かたつむりがいた~
- 2017/10/21(Sat) -
ナツメの実171

そぞろに雨の中の花や木々を見て歩く。
澄んだ青を背景にした時と違う、しっとりとしたそして少し淋しげな表情があったりする。

棗がだいぶ割れている。
採るのをすっかり忘れていた。

大きめののを一つ口に入れた。
リンゴに似たほんのりの甘味と控え目な酸味がある。
私は好きなのだが、家人はそうでもないらしくほとんど手を出さない。

小籠を持ってきて摘んだ。

大きな蝸牛が枝に張り付いていた。
ミスジマイマイのように見える。
この場に似つかわしい。

洗って皿に盛った。
一つ二つ食べて「オイシイヨ」。
家人は反応しない。
昔から美容や老化防止にいいと聞くがもったいない。
今年も棗は私一人の胃袋に収まることになりそうだ。

    棗盛る古き藍絵のよき小鉢  (杉田久女)

ナツメの実172

棗とミスジマイマイ

ナツメの実173
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キブネギク(貴船菊・秋明菊) ~冷たい雨~ 
- 2017/10/20(Fri) -
八重秋明菊171

冷たい雨。
美しい秋だというのに。
感傷の秋だというのに。

心をも体をも震えさせるほど。
一体全体、どうなっているのだろう。

傘を差し、雨に濡れる貴船菊の傍で腰を屈めた。

手が冷たい。
脚が冷えた。
暖房を入れた。
がまんできそうもなかった。

  おもざしの思ひ出だせず貴船菊 (飯名陽子)
 
八重秋明菊172

八重秋明菊173
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カキ(富有柿の収穫) ~豊作に感謝~
- 2017/10/19(Thu) -
フユウガキの収穫172

腰ビクをして柿を収穫する。

脚立を使い低い所から採っていく。
さらに木に移って、高いところのを採る。
柿の木は折れやすい。
無理せず安全第一。
ビクが満杯になる度に降りては空にしてまた登る。
およそ3時間半。
コンテナ4つ分。

いつものようにてっぺんに近いもの数個を残した。
木に感謝を込めて。
そして鳥君達の分として。
  
   柿もぎつ風にそむけば待ちが見ゆ (太田鴻村)
 
フユウガキの収穫171
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ノギク(野菊) ~野菊の頃~
- 2017/10/18(Wed) -
野菊171

野菊も咲く頃となりました。

それぞれに名前があって、「野菊」と一括りしてはいけませんが。
でもいろいろな意味において「野菊」のほうが、情緒的な深さがある気がします。

「野菊が好きだって…」
「野菊のような人だ…」

飾らず、純朴で。

  しがらみに少し浪たつ野菊かな (篠田悌二郎)  

野菊172

野菊173

野菊174
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アキチョウジ(白花秋丁字) ~秋雨は~
- 2017/10/17(Tue) -
白花アキチョウジ171

雨が降り続き、麗かな秋はどこかへ姿を隠している。
気温も急激に下がり、暦が一気に進んだように肌寒い。

傘を差して庭へ。

濡れる白いアキチョウジ。
細い茎に小さな花が並んでぶら下がる。 
粒の中に映る周りの雨景色。
花言葉には「秘めやかな思い」。

  秋雨は無声映画のやうに降る  (仁平勝)

白花アキチョウジ172

白花アキチョウジ173

白花アキチョウジ174

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月に雁 ~一緒に夕食を~
- 2017/10/16(Mon) -
月に雁297

朝、義姉から電話があった。
「夕食を用意するから、6時頃来てね」
家人が留守して四日目。
いろいろと気遣ってくださる。

1時からは講演会。
続いての会議は5時過ぎに終わった。
その後の懇話会は遠慮し、義姉の家に着いたのは6時丁度だった。

用意されていたのはチキンカレー。
カワタケ、ジコボウ、シイタケなどの茸類。
そして手作りコンニャクとジオウサイ。
小皿に鮮やかな紫の花菊の甘酢。
デザートは林檎の秋映と梨の南水。
秋の味覚に舌鼓。

箸を運びながら久しぶりに近況を尋ね合う。

明日は松本に歌会があるから早めに出かけるという。
そして下旬には東京まで『創画展』を観に行くと。
コンサートの予定も入っている。
いつも行動的である。
見習わなければ。

近々、家にも来ていただくことにして、お暇する。

実は朝、私が作ったのもカレーだった。

床の間の絵が九月のまま、替えなくては。

  釣瓶落しといへども光芒しづかなり   (水原秋桜子)

月に雁298

月に雁296
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ミゾソバ(溝蕎麦) ~すべて刈り取る~
- 2017/10/15(Sun) -
ミゾソバ171

艶々とした磁器のような透明感のある小さな花。
一面の溝蕎麦。
その中で蜂や蝶たちが無心に遊んでいる。
のどか。
いい光景。

腰を下ろして見ていたい気にもなる…が。
私は草払い機のエンジン音を響かせてそのすべてを刈り取った。

  みぞそばの信濃の水の香なりけり (草間時彦)

ミゾソバ172

ミゾソバ173

ミゾソバ174
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キク(菊) ~懐かしい文字~
- 2017/10/14(Sat) -
菊2170

隣村に住んでいる女性から便りが届いた。
その結婚式にも出席した20数年前の職場の同僚である。
以来、年賀の交換を続けてきた。

管理栄養士を目指して学生生活を送る娘さんのこと。
高校野球に打ち込む息子さんのこと。
この時期、果樹農家として多忙なご主人のこと。
自身の現在の勤めのことなどの近況に加え、一緒の頃の思い出など。
手書きの流れるような美しい文字は、昔折に触れて目にしたのと変わらずだった。

秋は人にペンを持たせる。

私も早速に万年筆で返事を書いた。

山茱萸の下では薄紅の菊が咲いている。

  今日はまた今日のこゝろに菊暮るゝ (松尾いはほ)

菊2172

菊2173
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カエル(日本雨蛙) ~作業中にションベン~
- 2017/10/13(Fri) -
カエル170

野菜蔓を切って片付け、棚じまい。

支柱を取り外そうとした時、ちょこんと座るのが居た。
どうやら体色を灰色に変えた日本雨蛙。
バサバサ、ユラユラしていたはずなのに、まあ、よくも逃げず。
指の先は丸く膨らんでいる。
これが硝子窓にも止まれる究極の吸盤。
じっとして動かない。
いい顔をしている。
横からや後ろからや、どの角度から見てもその姿は絵になる。
しょうがないので、離れたところから外していく。
でも移動しない。
だんだんその横棒に近づく。
結わえた針金も取られ、棒も大きく揺らされる。
体の向きを変えたりするが場所を移るつもりはなさそうだ。
そこがいいのか。
と、ピュッと下半身から水が飛び出す。
ビックリ、まさにびっくり。
カエルのションベンを初めて見た。
めったにない体験というか、その光景にうれしくなる。
棒も残り僅かとなり、彼のその場もいよいよとなったとき、オクラの葉の上にピョンと飛び移る。
着地もピタッと決まり見事。

すべての支柱を抜き取り、束ねて仕舞う。

このあと、きっとカエルのションベンを、その瞬間を見ることはないだろう。
なにかいいことがありそうな気がする。

  やや高き枝に移りぬ雨蛙  (長谷川櫂)

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シュウメイギク(秋明菊) ~秋風の中のひとひらの時間~
- 2017/10/12(Thu) -
秋明菊171

長い茎のその上にふんわりとやさしい白い花。
秋風に誘われてその顔をひらひらりと右に左に。
あどけない丸顔の蕾もゆらゆらゆらり上に下に。

「秋の明るい菊」を「秋の心」で見る秋風時間。

   秋色を観ろや歌えや人想えや (あや)

秋明菊173

秋明菊174

秋明菊175

秋明菊172

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カキ(富有柿) ~秋色の実り~
- 2017/10/11(Wed) -
フユウガキ171

柿が朱を増し、枝をしならせている。
秋の風情、秋の色だ。
そろそろ良さそう。
少し前から家人はせかせていた。
濃いのを三つ四つ採ってみた。
一つを割って剥く。
甘味は乗っている。
十分だ。
すべての収穫を今度の日曜日にしよう。

  朝の柿潮のごとく朱が満ち来  (加藤楸邨)

フユウガキ172

フユウガキ173

フユウガキ174
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ピラカンサ(Pyracantha・タチバナモドキ) ~電話と畑作業~
- 2017/10/10(Tue) -
ピラカンサの実174

連休は、いい秋日和だった。
遅くなったが、苦瓜とインゲンと琉球四角豆の棚を片付けた。

着替えてお茶を飲んでいたその時、電話が鳴った。
「もしもし…」
今年4月に“子ども食堂”を立ち上げた山岡さんのお母様からだった。
町の人々にも認知され、順調に利用者が伸びて活況を呈しているようである。
6月になって「食材となる野菜を自分達で育てててみたい」ということで相談があり、私の畑の半分をお貸しした。
しかし、あれこれと忙しいようで手が回らず、畑としての形になることなく放置されていた。
そして電話である。
「この時期にできる野菜は何かありますか?」
そう、山岡さん家族はこれまで野菜を育てた経験がほとんどない。
それゆえ、苗植えや種蒔きの適宜を把握できていないようだ。
とりあえず私の畑に来て、大根など、今育っている野菜の現状を見ていただくことにした。
植わっていない2畝はこれから先に玉葱と豌豆を植えることなども話す。

大根とターサイとほうれん草、それに春菊と小松菜の種は私が蒔いた残りがまだ十分あるので提供する。
発芽気温は20℃~25℃、この時期ぎりぎりのタイミングだが…。
急遽午後から一緒に畑作業をすることにした。
また作業着に着替え、支度をして、農具を用意する。

苦土石灰と堆肥だけは施してあるという。
しかし畝ができていない。
当然のことながら作ったこともない。
私が鍬で土を寄せ、レーキで整えて6つ作り、最後の一つは山岡さんのご主人に任せる。

種を手にとって実際にやり方を見せつつ説明する。
いよいよ親子3人で初めての種まき。
楽しそうに、そして真剣にやっている。
一箇所にかたまってしまったりする箇所が多く見られるが、これも経験だと。

水遣りや間引き、土寄せなど、このあとの作業について話す。

“子ども食堂”に自分で種を蒔き、育てた野菜が料理となって出される…、その思い。
うまくいくように様子を見守りたい。

タチバナモドキに柿のような小さな実がたわわになっている。
鳥たちにとっても、うれしい季節。

  天上の声の聞かるゝ秋うらゝ  (野田別天楼)
 
ピラカンサの実171

ピラカンサの実173
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ハマギク(浜菊) ~海辺がふるさと~
- 2017/10/09(Mon) -
浜菊171

朝の空気が気持ちいい。
雉鳩が庭に下りてきて尻を振りながら歩いている。
柿の葉が地面にカサカサと音を立てて落ちる。

朝陽が浜菊に差す。
「私の故郷は海辺」だとその名は示す。
そして「私は今、秋の信州で咲く」と。
思えば遠くへ。

  浜菊の咲くや遅々たる浦の秋  (小杉余子)

浜菊174

浜菊172

浜菊173
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キノコ(茸) ~観たかった作品~
- 2017/10/08(Sun) -
知美美術館パンフレットから

先日、菊池寛実記念知美美術館で「八木一夫と清水久兵衛 陶芸と彫刻のあいだで」展を観る。
現代陶芸のレジェンド、八木一夫氏の作品「ザムザ氏の散歩」(1955年)が展示されている。
38年前、定期購読していた雑誌に「オブジェ焼き」という言葉と共に紹介されていた白黒写真で初めて知る。

ギャラリーは緩やかにカーブを描く螺旋階段を下りた地下。
それは入ってすぐの右手に展示されていた。
機会があればいつかは必ず観たいと思っていた作品を前に、言いしれぬ興奮を覚えた。
想像した通りの哲学的でずっしりとした存在感を放っている。
総数55点、その一つひとつに深いメッセージ性を感じる。

清水久兵衛氏の構築性と動感ある金属彫刻および若い頃の陶芸作品にも魅せられた。

帰ったその日の夜、あらためて書架からその古い雑誌を取り出し読む。

翌日、畑に出ると、伸び始めたシュンギクのそばに薄紫のキノコが顔を出していた。

   膝まづくときの土の香きのこの香 (青柳照葉)


「現代彫刻」1979年28号1
「現代彫刻」1979年28号
「現代彫刻」1979年28号2
「現代彫刻」1979年28号
現代彫刻1975年9号
現代彫刻1975年9号
薄紫の茸1

薄紫の茸2
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キイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑草) ~上臈という名のおくゆかしさ~
- 2017/10/07(Sat) -
キイジョウロウホトトギス170

キイジョウロウホトトギスが咲きだす。
花茎はいくつもの黄色い花を乗せて撓む。
それは地面に着くまでになったりも。
覗く中には小さな透明のつぶつぶ。
“上臈”を名に持つこの花に逢えるのは秋が深まり行くこの時期。

  なんとなく人恋しくて杜鵑草  (寺田すず江)

キイジョウロウホトトギス171

キイジョウロウホトトギス172

キイジョウロウホトトギス173

キイジョウロウホトトギス174
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運慶展 ~深いまなざし~
- 2017/10/06(Fri) -
運慶展37

東京国立博物館(平成館)の開館は9時半、できるだけそれに合わせようとチエックアウトを早めに済ませた。
ホテルの最寄りの六本木駅から日比谷線に乗って上野に向かう。
しかし、着いたときにはすでに大勢の人が並び、入場制限がなされていた。

会場は3章のテーマによって構成されている。
第1章 運慶を生んだ系譜―快慶から運慶へ
第2章 運慶の彫刻―その独創性
第3章 運慶風の展開―運慶の息子とその周辺の仏師

展示の方法がまた見事。
キャプション、配置、ライティング、作品との距離と高さ…、どれをとっても見やすくわかりやすく美しく、観客第一。
私も前から後ろから、そしてサイドから。
離れて近寄って、全体とディティールを。
何度も行きつ戻りつしながら。
2時間ほどの観覧。

言葉にするのはよそう。
目に焼き付け心に深くしまう。

出口付近に新聞の記念号外がありいただく。

会場を後にしようとしたとき、偶然に友人の顔を見つける。
小諸の彼で奥さんと一緒だ。
みんな遠くから「運慶」に会いに来ている。

信濃路に向かう帰りのバスの中で、カタログを捲りながらその余韻に浸る。
 
  美術展友人と出会う帰り道  (あや)  

運慶展38

運慶展39

運慶展40
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ヘデリフォリウム(Cyclamen Hederifolium・原種シクラメン) ~都会の空気~
- 2017/10/05(Thu) -
ヘデリフォリウム1722

早朝の高速バスに乗って美術館に出かけた。

そのあと青山の明治記念館で行われたパーティーに出席した。
250人を越える参加者、著名な評論家も数名招待されていた。
初めての私はテーブルを囲んで交わされる芸術観や慣れない場の雰囲気に緊張。
周囲に無理に合わせるような背伸びはしなかったがちょっと肩が凝る。
皆さんの言も酔いとともに勢いを増し滑らかとなる。
解き放たれてホテルに戻ると、奇妙な疲労感に包まれる。

朝の目覚めは日常のサイクルと変わらずに3時過ぎ。
野山に囲まれた田舎と大きく異なる都会の空気の中でも体内時計はしっかり働いてくれている。

日々、鳥や野菜や花などと過ごすスローな流れの中にいる私はやはり自分のペースでのんびり動く方があう。
一つの経験にはなった。

   秋は美術の石柱(ひらし)囲む人ごころ (石原八束)

展025

展024

展021

展030

ヘデリフォリウム1724
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マリーゴールド(marigold) ~しのびよる秋~
- 2017/10/04(Wed) -
マリーゴールド1711

マリーゴールドが咲いてからもう長い。
独特の強い香りがする。
セセリチョウが遊んでいる。
片付けるのはもう少し後にしよう。

着る服もアースカラーというか、ナチュラル系のが多くなった。

   秋しのびよる金箔をおくごとく  (千代田葛彦)

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テラオカアザミ(寺岡薊) ~秋なのに~
- 2017/10/03(Tue) -
テラオカアザミ2171

「艶々して美味しそうに見えたから柿を一つ採っちゃった」
そう言って家人が私に渡した。
実の重さで撓んでいる枝から手の届くところのものを採ってきたようだ。
受け取ったその朱はまだ薄かった。
「早い。葉がほとんど落ちた頃が収穫時期だよ」
「食べてみる?」
「固いから1週間ほどおいた方がいい」
「じゃ、そうする。色がきれいだったのは夕陽のせいだったのかもしれないね」

木に登って収穫するのはずっとずっと私だけ。
そんな作業をしたことのない家人は、その時期を把握していない。
葉はだんだんに落ちつつある。
ビクを腰にして捥ぐのも近々。

テラオカアザミがまた咲いた。
アブが飛んできてとまった。
このところ庭で再びの花がよく見られる。

  水音の消えては生れあざみ咲く  (稲畑汀子)

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ツキミソウ(月見草) ~またその姿を~
- 2017/10/02(Mon) -
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月見草は夏にいくつか咲いた。
それは夕刻だったり、あるいは明るくなる前の朝に少しずつゆっくりと開いた。
その花の時はとても短く、哀れと儚ささえ感じさせる。

季節は進み、その存在をすっかり忘れてしまっていた。
その姿が昨日一輪あった。
ひんやりとした秋の早朝なのに、と思いつつも嬉しくなった。

しばらくの後、作業の手を休めてお茶を手に再び見ると閉じ始めていた。
そして、午後になると白い花は色をピンクに染めて萎んでいた。

蕾がまだ一つある。
これもきっと今日か明日のうちだろう。
朝か夕のいずれになるか…。

    開くとき蕋の淋しき月見草  (高浜虚子)

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