アンズ(杏・apricot)  ~青春の木~
- 2016/03/31(Thu) -
杏161

何かを見て人は何かを思い出す。
人生の中ではそんなモノとの出会いや思い出があったりする。

杏は私にとって青春の木である。

「下宿屋」という言葉は今では死語かもしれない。
老夫婦が営むそれは善光寺裏にあった。
私がそこに引っ越してきたのは学生生活2年目の春だった。

庭に一本の老木があり、それが薄桃の満開の花をつけていた。
その優しい色を私は桜だと思っていた。
学部生活にも慣れた頃の夏、それは黄色い実をつけていた。

或る日の朝食時、腰の曲がった下宿屋のおばちゃんが私に言った。
「木に登って杏の実を採ってもらえますか」
そこで私ははじめてそれが杏の木であることを知った。
遡ってあの薄桃色は杏の花だったことも理解した。
私の採った杏はその日の夕食のデザートとなって、大きなちゃぶ台の上にあった。

いつの日か一家を成した時、私は庭にきっと杏の木を植えようと思っていた。

この花を見る度、そして実を収穫する度、頼りなく生きていたあの頃を思い出す。
杏は私にとってセピア色の思い出を伴う木である。

    花寄せて杏の花の深情(ふかなさけ) (大野林火)  

杏162

杏163

杏164

杏165
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ミツマタ(赤花三椏)  ~…ん~ん、香りがいっぱい~
- 2016/03/30(Wed) -
三椏50

山茱萸の下に赤花の三椏。
一つひとつは小さな筒状の花。
それが集まり、ひとまとまりに。

その中に一つだけ黄色のが。
なぜだろう。
面白い。
それを見つけただけで楽しくなる。

その香りはかなり強い。
数枝切って部屋にも。
男の性格そのまま。
ああいい香り。
一人満足。

春の花は人をも春にしてくれる。

   三椏の花に光陰流れだす (森澄雄)

三椏305

ミツマタ306

三椏307

三椏303

三椏301

三椏308


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サクランボ(桜桃・桜坊の花) ~花花花、実実実、鳥鳥私~
- 2016/03/29(Tue) -
サクランボ291

花を見ながら、のちの実りに思いを馳せていた。

桜桃の花が盛りである。
一見、それは桜の花と同じに見える。
色は白味を帯び一つひとつもきれいだ。
蕊は花から飛び出るように少し長め。

約二ヶ月後。
花は実となる。

もっとも、その時は鵯の方が収穫上手である。
8、9割はその嘴が飲み込む。
一方的な試合ばかりだ。

彼らも毎年のこと楽しみにしているに違いない。
今年は少しでもその得点の差を縮めよう。

夏のデザート。
期待と楽しみ。

   桜桃の花純白を通しけり  (福田甲子雄)

サクランボ292

サクランボ293

サクランボ294
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ホウチョウ(木彫包丁) ~質感を出すには…~
- 2016/03/28(Mon) -
包丁6

包丁を彫った。
桜の一枚板を使う。

桜はやや堅めの材。
赤味を帯びたその肌理(きめ)は美しい。

形を切り取る。
厚さのセンターに線を引く。
刃先と峰が真っ直ぐ通るように。
柄の形が対称になるように。

彫る。
刃全体を薄くしていく。
柄の握りの微妙なラインを出す。
刃と柄が合わさるマチの部分に少し難儀する。

今回は包丁のシャープな機能的特質を出すために刀痕を消す。
当て木を巻いた#80のサンドペーパーで凹凸をフラットな面にする。
同様に#240、#320、#400と徐々に番数を細かくしていく。
最後に#1000で仕上げる。

できあがったのを見ると木目(もくめ)の出た白木のままも味があっていい。
迷ったが、今回はよりらしさをと着彩を施す。
刃はデザイナーズカラーのシルバーを使う。
一度塗りのあと、サンドペーパーで研ぎ、再度塗ってより金属質を出す。
柄にはポスターカラーのホワイトとブラックを混色して、やや厚塗りの一回で済ませる。
乾いたところで、化繊布で磨く。
刃には少し艶が増し、柄には鈍色が出て、それぞれの質感が多少なり表われる。

ここまで。
それにしても桜は彫っていて気持ちのいい材だった。

家の桜もぼちぼち咲き出している。

   こだはりのさくらいつぽんありにけり   (山本嘉郎)

桜の板

包丁3

包丁1

包丁4

包丁4-1

ポスターカラー

包丁5

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ユキワリソウ(雪割草)  ~君も出てきたんだ~
- 2016/03/27(Sun) -
ユキワリソウ272

雪割草がまた顔を出した。
今度のは薄紫。
三角の葉はまだない。
花だけが土のすぐ上にある。
原種シクラメンの葉と銀杏の落葉に見守られるように。

雪割草はいつも突然だ。
何もないところにひょいと。
楽しく驚かせる。
この時期こんなことがしばしば。

落葉の下にはいろいろが出番を図っている。
次に出てくるのは何だろう。

  控へ目に雪割草の地を割りぬ  (吾孫のどか)

ユキワリソウ271
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ヤブカンゾウ(藪萱草)  ~新芽のやわらかな瑞々しさ~
- 2016/03/27(Sun) -
藪甘草162

藪甘草を食べ出してからすでに一週間程が経つ。

庭のあちこち、あるいは周りの土手に新芽が出ている。
籠を持っては集める。

さっと茹でておひたし。
香りはあまりないが、癖がなく食べやすい。
やわらかく、それでいてシャキシャキも。
削り節を載せて。
醤油をちょんちょんと。
時にはマヨネーズ。
味噌でも。
どれにもあう。
毎日でも飽きない。

まさに旬。
口が喜ぶ。
これからは野のもの、山菜の季節でもある。

   ざつくりと切られ水吹く春菜かな   (能村登四郎)

藪甘草161

藪甘草164

藪甘草163
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クンシラン(君子蘭) ~のんびりと心の中の一人異動~
- 2016/03/26(Sat) -
くんしらん265

職場でのお別れ会。
あるいは引っ越し。
そんなシーズン。
ラジオもテーマとして組む。
合わせた選曲。

新聞には人事異動の一覧。

季節は移ろい。
人も移る。

何処か遠くのもの。
何時しか過去のコト。
3月の下旬の陽を浴びる私。

部屋には君子蘭。

  君子蘭整理のつかぬ文机  (北さとり)

くんしらん264

くんしらん263

くんしらん262

くんしらん261
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スイセン(水仙) ~ひとかたまりの香りと新しい意思と~
- 2016/03/25(Fri) -
スイセン251

並んで咲くスイセン。
見ているとなぜか嬉しくなる。

春風が吹く。
いっしょにユラユラユラ。
そろってニコニコニコ。
思わず口角が上がる。
自ずと頬がゆるむ。

花は黄色。
しあわせ色。
葉はみどり。
上にぐんと。

見ていると…。

   水仙の葉先までわが意志通す  (朝倉和江)

スイセン253

スイセン254

スイセン255

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シロバナジントウゲ(白花沈丁花) ~香を浴びる~
- 2016/03/24(Thu) -
白花沈丁花160

スーッと胸の奥に入ってくる香り。
隅々までも。
その届け主は白い沈丁花。
沈の香。
丁の香。
心静まる。

花香浴とでも言おうか。
春の花が五感を奮わせる。
背中を押してくれる。

  素直なる心に導く沈丁の香 (あや)

白花沈丁花161

白花沈丁花162

白花沈丁花2436

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ナス(木彫茄子) ~やわらかな感じ…、春だもの~
- 2016/03/23(Wed) -
木彫ナス1

色艶、フォルム…いい。
一袋4つ入って197円の春ナス。
食材でなく彫刻のモチーフとして。

材は科の木。
大きさを決め、木取りする。
鉛筆の線のぎりぎりで鋸を入れる。
荒取りして面を落としていく。
大丸刀でぐいぐいとおよその形を出す。
実の部分を徐々に丸くしていく。
蔕の微妙な動きと凹凸のある質感を表していく。
特に実と接する箇所や僅かに浮き上がったところの細かい表現を。
最後に果柄の部分のディテールを。
彫りの終了。

今回は怪我をしなくてよかった。
この後着彩して仕上げ。

   少年や六十年後の春の如し (永田耕衣)

木彫ナス2

木彫ナス3

木彫ナス4

木彫ナス5
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ウメ(梅・豊後梅) ~花の数だけ実になる~
- 2016/03/22(Tue) -
豊後梅161

草取りをしている背後から「あれは彼岸桜ですか?」の声がした。
ジョギングの途中で立ち止まったのは近くの中山さんだった。
「いえ、梅です」
「へえ~、きれいですね」
「桜はもう少し先でしょうか」
若い頃は駅伝の選手、70越える今でも毎日運動を続けておられる。

中山さんが彼岸桜かと尋ねたのは豊後梅の花だった。
一重のやわらかな5弁の花びらは薄い桃色で美しい。
実梅として植えたものだが、このように目にも味わいを届けてくれる。

この花が6月には実の数となる。
7月初旬、黄色く色づき始めたのを収穫。
そして私は梅干し作りをする。
毎年の楽しみの一つである。

くしゃみが出る。
鼻水が出る。
目が痒い。
目薬挿そう。

  梅は一人か四五人で見る花か   (大井雅人)

豊後梅164

豊後梅163

豊後梅162

豊後梅165
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サンシュユ(山茱萸) ~いっぱいの黄色~
- 2016/03/21(Mon) -
山茱萸161

『桂東雑記』(白川静著)に次のように書かれている。

 春という字

 春という字の形は、見るからにのどやかである。
 春霞のたなびくような三本の線の上から、光が放射するように裾が開いて、その下に日があらわれる。

 「はる」の語源では「発(は)る」「張(は)る」とするのがよい。
 春は張りゆくとき、屯のようなかたまったものが、次第にその身を開いてゆくときである。
 長い冬ごもりに堪えて、日一日の陽光を待つ。
 長い苦渋に堪えたもののみがもつ新鮮な美しさと、華麗さがそこにある。

葉のない枝幹が黄色に染まる。
まさに“春黄金”というに値する幸せ色、元気溢れる色。
それをまとうのは山茱萸の木。
新しい気を外に飛び散らせるかのような小さな花たち。
“「はる」は「発(は)る」「張(は)る」とするのがよい”の実感。

  枯色に山朱萸の黄の新しや  (高木晴子)

山茱萸162

山茱萸163

山茱萸164

山茱萸165
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ヒメリュウキンカ(姫立金花)  ~「またありがとう」の春の日~
- 2016/03/20(Sun) -
姫立金花161

     不思議

  心が美しくなると
  そこいらが
  明るく かるげになってくる
  どんな不思議がうまれても
  おどろかないとおもえてくる
  はやく
  不思議がうまれればいいなあとおもえ〈っ〉てくる       (『定本 八木重吉詩集』より)

黄色い姫立金花が開いた。
春の明るさを思わせるつやつやかな花だ。
蕾が一つ、蕾が二つ、蕾が三つとなり。
一つ咲き、二つ咲き、三つと咲く。
そして今日も蕾は増え、今日も花は増えていく。
花は明るい陽射し共に起き、光が弱くなる頃に眠る。
季(とき)と時を感じる花の不思議。

花言葉には「あなたに会える幸せ」。
野の花に「またありがとう」と春の日。

   花咲くといふ静かさの弥生かな  (小杉余子)

姫立金花163

姫立金花162
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ジンチョウゲ(沈丁花) ~彼岸に広がる花の香り~
- 2016/03/19(Sat) -
沈丁花191

庭に広がる澄んだ香りは沈丁花です。
離れたところからでも鼻に入り込みほどの強さです。
瞼閉じてもそこにあることを教えます。

過ぎた日のことです。
ふる里の母にその香りを届けたく、一枝持っていたことがあります。
「あら、いい香り、素敵」と喜んで、一輪挿しに挿して玄関に飾ってくれたのでした。

今日は笑顔で着物姿の、額に入った写真の前にも置きます。
香りを一緒に楽しんでもらうことにしますね、お母さん。

  母にも香り届けよ沈丁花 (あや)

沈丁花192

沈丁花193
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カスミザクラ(霞桜) ~桜切る馬鹿です~
- 2016/03/18(Fri) -
霞桜伐採3

霞桜伐採1

霞桜伐採2

霞桜16318

天気予報の中で、併せて桜の開花予報も出されていました。
どうやら各地とも平年よりかなり早いとのことです。
桜の名所もお迎え準備に大わらわの事でしょう。
それぞれの地域文化のおもてなしで。
もうすぐ日本の美を象徴する華やぎの季節が訪れます。

 春なのに お別れですか
 春なのに 涙がこぼれます
 春なのに 春なのに
 ため息またひとつ
そんな歌も聞こえてきます。

春なのに、桜の樹を伐りました。
大きな霞桜です。
花びらの小さな白に近い可憐な桜です。
我が家のシンボルツリーでした。
昨年の年の暮に決めていました。
花が咲く前の方が未練なくていいと。

切った枝には膨らむ蕾がたくさんありました。
春なのに お別れです。
ごめんなさい。

部屋からのお花見も今年からは出来なくなります。
満開時にいただく幸せ気分は言うに及ばずです。
共に過ごしてきたその美しい姿のアルバムを捲りつつ。
春なのに お別れです。
ありがとう。

   さまざまのこと思ひ出す桜かな (松尾芭蕉)

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ケヤキ・マツ・コナラ(欅・松・小楢) ~伐る~
- 2016/03/17(Thu) -
ケヤキ1
                               
卒業式シーズンです。
テレビでは各地から様々な思いや長い歴史を携えた涙や笑顔の映像が流れます。
喜びや悲しみ、いさかいやきずな、悩みと奮起…その一つひとつがそれぞれの育ちにきっと繋がっていることでしょう。
別れの言葉、思い出の言葉、希望の言葉、決意の言葉が込められた答辞。
最近涙もろくなりました。

欅と松と小楢を伐りました。
すっきりしました。
落ち葉掃きとドングリ、少し淋しくなりますが。

私も歳と体力に応じて環境を整えていきます。
少しずつ身の回りのものから卒業します。
相応にコンパクトな生き方で。

   一を知って二を知らぬなり卒業す (高浜虚子) 


ケヤキ2
                             
ケヤキ3
                             
黒松1
                             
コナラ
                             小楢
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カエデ(木彫楓・科の木) ~思うところあって彫る~
- 2016/03/16(Wed) -
木彫イロハカエデ0

春ですが、秋の楓を彫りました。

ほどよい厚さの科の板があります。
大きさと形を決め、切り取ります。
葉の先端と葉柄の部分は折れないように特に慎重に。
丸刀で全体の動きをざっくり形作ります。
実際の厚さと同じくらいまで全体を薄くしていきます。
平刀を用いて丸刀痕を消すように削り取り、滑らかにします。
走る主脈を、その細さと高さに注意して表します。
最後に小刀で鋸歯を出して終了です。

左の親指を3㎜ほど切ってしまいました。
ちょっと痛かったです。
慣れから来る油断です。
いけません。

あとは秋に撮った写真でも見て彩色を施すことにします。

  春の夢心驚けば覚めやすし  (富安風生)

木彫イロハカエデ2

木彫イロハカエデ1

木彫イロハカエデ3
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クリスマスローズ(Christmas rose) ~新しい心の朝をいつも…~
- 2016/03/15(Tue) -
クリスマスローズ3152

純粋に。
清らかに。
ひたすらに。

  朝々はとびはねる魚のように私の心に来ます。
  またいつでも愛するものを、心の底から抱擁し得る気持ちで一日を送ります。
  めいめい勝手に自分のしごとをしながら。
  あるじも私も、静かに、単純に。 (光太郎・智恵子展から「智恵子の言葉」)

光太郎と智恵子の貫く愛の姿。

春愁、一人時間。
時々そんなことも思い出すがいい。
静かに、単純に。

クリスマスローズの装う時。
葉と花が同じ暗紫色のも咲いた。

  縁とは絆とは春の愁いかな  (富安風生)

クリスマスローズ3151

クリスマスローズ3154

クリスマスローズ3153

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ツバキ(椿) ~流木と遊ぶ、創る~
- 2016/03/14(Mon) -
流木に椿1

そうだ、川に行こう。

向かうは、リニア新幹線のルートに決定している山合いの村。
そこのダムの下流にはいつもたくさんの流木がある。
川に降りると、よりどりみどり。

岩などに当たり、余分な所がそぎ落とされて、全体に丸みを帯びている。
どれもが造形的にユニークだ。
何かしらの動物の顔に見えるものだったりもする。
オブジェとしてもけっこう様になるのも。

重さ、大きさとも一人で運べるものだけに。
20本程を乗せて戻る。
車から降ろして野外の作業場の横に積み上げている所へ声。

「ねえ、これ、うまく花生けに使えない?」
「ほら、こうやって立てて」
「どう、なかなかいいと思わない?」

つまりそうして欲しいというリクエストである。
花器に使いたくて取りに行ったんじゃないのだけれど…。
まあ、いいか。
やろう。

金ブラシで擦り、朽ちた部分を落とす。
直立するように底辺を少し切り取ってフラットにする。
底板に立てる位置を決めて、接着剤とビスで固定する。
うろの部分に細いガラス瓶を差し込む。
自然の風趣が出ていていい。
できついでに、庭の赤い椿を一枝取ってきて適当に挿してみる。

買いものから帰って来て、見て言う。
「オッケイ、いいねえ」
「そのまま飾っておいて」

ほんとは、流木を使って新たに木彫制作をと考えて取りに行ったはずだったのだ。
まあ、喜んでいるのでいいだろう。
自分の分はゆっくりと時間を掛けてやるとしよう。

気がつけば3月も半ば、心も整理整頓。

  新しき花器に一輪恋椿  (あや)

流木1

流木2

流木3
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ユキワリソウ(八重雪割草) ~根があってこそ~
- 2016/03/13(Sun) -
ユキワリソウ3141

昨日までそこには花色はなかったのです。
それが朝、いくつもの淡紫が落葉の中に。
八重の雪割草でした。
一日で…です。

表に見えない土の中で気力と活力をじっくり蓄えていた根。
それに呼応し、自分に一番いい時を適確に判断し開く花。
それぞれ一所懸命。

献身的な根と、根の思いも抱きしめて咲く花。
根と花の間に通じ合う絆と交わされる会話。

日々、昨日と違う今日の春があります。

    あらまあ~夢雪割草が咲いている (あや)

ユキワリソウ3144

ユキワリソウ3143

ユキワリソウ73142
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アセビ(馬酔木) ~届けられた旬の香り~
- 2016/03/12(Sat) -
アセビ3121

訪ねてきたのは義姉だった。
「フキノトオを天麩羅にしたので」と。
まめである。

庭を見渡す。
「もう馬酔木が咲いたんだ」
「赤いのね」
「春日大社を思い出すわ」
行動派の歌人で、全国各地をよく旅している。

帰り際にまた声がけ。
「温かいうちに食べてね」
「また二人でお出かけて」

折々のやさしい心遣い。
お一人暮らし。
本来は逆でなければいけないのに。
馬酔木の横で車は切り替えされて、スムーズに出て行く。

見送った後、垂れるピンクの花序を手に持つ。
口をつぼめた形は鈴蘭にも似て愛らしい。
また一つ、春の色、春の形が加わる。

花言葉に「二人で旅をしよう」「いつもあなたと一緒」「清純な心」「献身」など。
そろそろ明るい色を纏って春探しのドライブなどいいかもしれない。

  来し方や馬酔木咲く野の日のひかり   (水原秋桜子)

アセビ3122

アセビ3123

アセビ3124
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ツバキ(椿) ~「いっぽ」~
- 2016/03/11(Fri) -
シロツバキ3111

そして、私は『いっぽ』を書いたのでした。
あの春、三月のことです。

  いっぽ
  いっぽ
  いっぽ
  いっぽいっぽはちいさいけれど
  いっぽがなければつぎへはすすまない
  いっぽがうしろにみちをつくる

  いっぽ
  いっぽ
  いっぽ
  いっぽいっぽはちいさいけれど
  いっぽをつなげればどこまでもいける
  いっぽがたしかなみらいをつくる

  ただうしろのあしをまえにうしろのあしをまたまえに

  いっぽ
  いっぽ
  いっぽ
  いっぽいっぽをそろえてふみだせば
  ひろくてながいおおきなみちになる

  いっぽ
  いっぽ
  いっぽ
 

今年も春、三月です。

白い椿が咲いています。

東北の春はまだ厳しい寒さなのでしょう。

けっしてあの春の出来事を忘れないように、ひとり『いっぽ』を歌います。

  流れ得ざる水の淀みの椿かな (正岡子規)
 
いっぽ

シロツバキ3112
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クリスマスローズ(Christmas rose) ~春に三日の晴れなしと…~
- 2016/03/10(Thu) -
クリスマスローズ390

晴れ曇り曇り晴れ雨…。
このところは南の暖気と北の冷気の力比べ。
春の空はなかなか定まらない。

気温のグラフも上げ下げの乱れ線。
着る服も脱いだり重ねたり。
仕舞ったり、引っ張り出したり。
しばらくはそんなことだろう。

雨後のクリスマスローズ。
うつむき水滴を添える姿は…。

  これよりや恋や事業や水温む (高浜虚子)

クリスマスローズ391

クリスマスローズ392

クリスマスローズ394
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『春』(竹下夢二) ~“幸福(しあわせ)をさがしに”~
- 2016/03/09(Wed) -
竹下夢二「春」1

竹下夢二に『春』という童話集がある。
そのはしがきで彼はこう書いている。
「春」といふ字は音(おん)が朗らかで字畫が好もしいため、本の名にしたのです。(千九百二十六年十月)

たしかに「春」という字音には人を明るくさせる言葉薬のようなものがある。

扉はカラーで“幸福(しあわせ)をさがしに”。

この童話集の最後にあるのがタイトルにもなった「春」という戯曲。
兄と妹が主人公の短い話。

山に向かって歌う少年。
山彦が歌を返す。
「誰だ」『誰だ』
「人の真似をするのは失敬だぞ!」『人の真似をするのは失敬だぞ!』
「馬鹿野郎」『馬鹿野郎』

先生が登場し、それは山彦である事を教える。
「こちらで何かやさしい事を言ってやれば向ふでもやさしい事を返してくるのじゃ」

「こんにちは、ごきげんいかかですか」『こんにちは、ごきげんいかかですか』
「あなたは好い方ですね」『あなたは好い方ですね』

先生「どうだね,山彦は正直だらう」

いい言葉はいい言葉を返してくれる。
温かい言葉は温かい言葉を。
美しい言葉は美しい言葉を。
その逆も然り。
行為も同じだろう。

周りに居る多くの山彦から返ってくる声や姿は即ち自分の発した声や行いそのものなのではないかと…。

   窓開けて春春春とクレッシェンド   (あや)

竹下夢二「春」2

竹下夢二『春』4

竹下夢二「春」3
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意思を持った若い頃(木彫) ~「悩み多き者よ」「されど私の人生」などと~
- 2016/03/08(Tue) -
意思の人1

 もし私が入社試験の面接官だったとしたら、必ず一言次の質問をします。
 「あなたはこれまで人生に悩んだことはありますか?」と。
 そしてキッパリと、「悩んだことは一度もありません」と答えた人は採用しませんと。
叙述は不確かだが、これはたしか若い頃読んだ亀井勝一郎の文章の中にあったと記憶している。
悩むということは自己をしっかり見つめていることに他ならないと説いていたように覚えている。

勢いに任せて荒々しく自刻像を作ったのは悩み多き20代の頃だった。
それがなぜだか毀損されることもなく手元に残っている。
表現の巧拙は別として、手放せない思い入れがどこかにあったのだろう。

頭部に用いたのは小柿。
かなり堅牢な材だった。

最近になって下の部分に少し手を加える。
欅材をチェーンソーで切り取って、そのまま晒しておいたのを台座に据える。
それに馬の蹄鉄を。
アンバランスの妙。
静慮の中に動勢あり、沈思の中に情熱あり…。
そんなことなどを。

  肩に手をかけて話せば暖かし (大場白水郎)

意思の人2

意思の人3
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クリスマスローズ(Christmas rose) ~あなたの心に~
- 2016/03/07(Mon) -
クリスマスローズ370

訳あって隣町の古道具屋へ行った。
探し求めていたものを手に入れることができた。

その帰りのラジオで懐かしい歌を聞いた。
 あなたの心に 風があるなら
 そしてそれが 春の風なら
 私ひとりで ふかれてみたいな
 いつまでも いつまでも
中山千夏の「あなたの心に」だった。
すらすらと歌詞が出てきて一緒に口吟む。

そういえば,ひょっこりひょたん島やウーマンリブという言葉も…。
ハンドル握るほんの少しの時間、遠くなったよき時代、昭和の青春に浸る。

庭に薄緑のクリスマスローズ。
その花言葉に「追憶」「慰め」などを見つける。

  クリスマスローズあの日あの時あの歌と  (あや)

クリスマスローズ371

クリスマスローズ372

クリスマスローズ373
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ツバキ (椿) ~春の木ね~
- 2016/03/06(Sun) -
ツバキ362

お上品な椿。
うん。
薔薇に似ていない?
いわれれば。
やはり三月は椿ね。
まあ、そうだなあ。
だって、ほら春の木と書いて椿でしょ。
そういえばそうだ。

春うららかあ。
はしりつづけるハルウララ…。
ん?何それ。

  活け下手(べた)の椿に彼方(あちら)向かれけり  (大島蓼太)

ツバキ361

ツバキ363
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アオキ(青木の実) ~たのしみは~
- 2016/03/05(Sat) -
アオキの実341

「たのしみは意(こころ)にかなふ山あたりしづかに見てありくとき」と 詠んだのは橘曙覧。
同じ境地で庭を見て歩く。

時折鳥も来る。
 アかい実があるわ。
 オいしそうね。
 キになるわ。

アオキは常緑。
葉と枝は一年中青い。
それらの中に顔を出す楕円の赤い実。
その葉色との鮮やかな対照。

楽しみ見る小さな喜び。

  青木の実寡黙なるときわが血濃し  (岡本眸)

アオキの実342

アオキの実343
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ツバキ(椿) ~雲雀も鳴いたんだって~
- 2016/03/04(Fri) -
椿340

あたたかな雛祭だったね。
ポカポカだった。
重ね着のお雛様は暑かったんじゃないかしら。
あせをかいたかも。
桜咲く頃の陽気だって。
きっとさくらもどうしようかとまよっているね。
何時になっても雛祭は楽しみだわ。
おんなのこにもどるんだ。
うふふ、あの頃、あんな時もあったわなんて。
おすまししたしゃしんみてみたいよ。

色が混ざった椿…。
これもいつもよりはやい。
面白い。
うん、いいかんじだ。

ねえ、雲雀も鳴いたんだって。
ほお~。

いろいろに春だね。
いろいろがはるだ。

  椿咲くたびに逢いたくなっちゃだめ  (池田澄子)

椿341

椿342

椿343
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クリスマスローズ(Christmas rose) ~みんな動いている~
- 2016/03/03(Thu) -
クリスマスローズ261

鶯が鳴いたとか。
まだ上手ではないと。
ホーホケケケだったり。
ホーホケッで止まったり。

大きくゆっくり深呼吸して季節を吸い込む。
見て感じて楽しい終わりと始まりの入れ替わり。

心が張る。
びしっと。
心を墾る。
たがやす。
心は遥る。
とおくへ。
心も晴る。
あかるく。

  春愁を消せと賜ひしキス一つ   (日野草城)

クリスマスローズ262

クリスマスローズ263
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サザンカ(山茶花) ~それぞれにある想う日~
- 2016/03/02(Wed) -
山茶花321

それぞれにそれぞれの想う日がある。

そっと胸にしまう日。
過去と静かに語る日。
忘れ得ぬ人を浮かべる日。
転機となった日。
大切に秘め置く日。
悲しみに暮れた日。
幸せに感謝する日。
……それぞれの日。

あの日、手を握る私の顔を見て「君は誰?」と父は言った。
しばらくしてから、雲の上の人となった。
三月二日だった。
だいぶ経つ。

多くの過去が積み重なっていく。

春が来た。
まだ山茶花がいくつか咲く。

  また逢へた山茶花も咲いてゐる   (種田山頭火)

山茶花320
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