クチナシ(梔子の実) ~今年一年をありがとうございました。~
- 2014/12/31(Wed) -
梔子の実311

梔子の実が黄赤色に熟している。
楕円の実には六つの稜が見られる。
その先は細く伸びて分かれた萼がやはり六つある。
ユニークな形である。
そういえば確か白い花も6弁だった。

その名は、「果実が熟しても口を開かないことによる」と。
実りを成して熟すも語らず、なお黙考するが如し。
で、口無しという。

さて一年が終わる。
何ができて何ができなかったか。
口無しにして静かに心で自己評価する日としよう。

どうぞよいお年を。

   大晦日定なき世の定かな  (井原西鶴)

梔子の実312
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ジョウビタキ(尉鶲) ~歳暮の朝の雨~ 
- 2014/12/30(Tue) -
尉鶲301

朝方の雪はすぐに霙になり、そして雨に変わった。

朝食を終えて、寛いでいると尉鶲がやってきた。
ガーデンチェアーの背もたれのてっぺんに立つ。
彼には師走の冷たい雨など関係ないのだろうか。
腹ごしらえになりそうなものも近くにはないのだが。
それとも私の様子を見に。
「やあ、ちゃんと大掃除はすんだかい? 新年の準備はどうなんだ」

台所からは田作りのいい香りがする。
「どう、からっとしている?」と一つ。
「ん、いい」

   年の瀬に雨降る小禽の愛  (あや)

尉鶲302
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ノギク(冬の野菊) ~或る時は澄み或る時は濁る~
- 2014/12/29(Mon) -
冬ノギク293

小包みが届く。
開けば、ふる里の磯の香りと土の匂いがするのが。
おせちの添えにとの心遣い。
懐かしさを加えて一緒に。

  私は雑草的存在に過ぎないけれどそれで満ち足りてゐる。
  雑草は雑草として、生え伸び咲き實り、そして枯れてしまえばそれでよろしい。

  或る時は澄み或る時は濁る。
  ―澄んだり濁ったりする私であるが、…
                       (昭和10年12月20日、遠い旅路をたどりつつ 山頭火) 『草木塔』より

いろいろな形の年の暮。
自分のスタイルを守って行こうか。

   年暮るる野に忘られしもの満てり (飯田蛇笏)

冬ノギク292

冬ノギク291
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マサキ(正木の実) ~さあ、働こう~
- 2014/12/28(Sun) -
マサキの実281

どんな一年でしたか?
あれやこれやそれの。
来年はどんな年にしたいですか?
ああのこうのそんな。

耳の向こうから聞こえるインタビュー。
いつもながらの暮れの一コマ。

でも本当のことは自分の奥深くに書き留めておく。
人前でそうそう簡単に言葉にはできない。
自分自身がもう一人の自分に答えるだけでいい。

正木に赤い実がたくさんだ。

一(度)、(立ち)止まって己の為すべきを思う。
それより生まれるを正というと。

さあ、働こう。

  街は師走陽はさんさん正木の実  (あや)

マサキの実282

マサキの実283
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ノスリ(鵟) ~獲物はなに?~
- 2014/12/27(Sat) -
ノスリ1

「ホウレンソウを5株ほど取ってきてえ」
そう言われ、庭から畑に回った時だった。
何か獲物を掴んでいる大きな鳥が、いきなり音を立てて飛び立った。
その脚の荷が重いのか、10㍍先の土手に降りた。
ノスリか。
どうやら、足もとでぐったりしているのは哺乳類のようだ。
茶色い毛に覆われ、耳らしきものも見える。
キツネ?野ウサギ?何だろう。

今度は隣家の倉庫の屋根に移動した。
遠くまで運ぶに苦労?
口を付けようとしない。
この獲物をどうしようかと思案している様子。
脚の爪を離し、周りを見渡して、誰かを待っているようでもある。
しばらくしてもう一羽が電線に留まった。
それで(夫婦の)話がまとまったのだろう。
獲物をそのままにして、2羽は何処かへを去っていった。

そうそう、ホウレンソウだ。

   鷹去りて毛物残る屋根の上  (あや)

ノスリ2

ノスリ3

ノスリ4

ノスリ5
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ヤツデ(八つ手) ~刀を手に、ただただコツコツと~
- 2014/12/26(Fri) -
八つ手15

八つ手を彫った。

枯れた八つ手を拾っておいたのだった。
造形的に美しいと思った。
そのまま置いても飾りにもなる。
チャレンジしてみるのもいい。

厚めの朴材にスケッチをして切り取る。
7本の指がそれぞれ違う向きを指し、動きがあって面白い。
角度を持って直線的に伸びる葉柄がアクセントを付ける。
複雑に変化して手強そうだ。

彫る段取りを考える。
葉柄は構造的に見て一番最後とするのがいい。
まずは丸刀で葉の全体を薄くしていく。
厚さが3㍉ほどになったところで、それぞれの一枚ごとの形を作っていく。
実際の厚さに近づけて、中央の葉から彫り下げる。
外側から始めると、手が触れて折れる恐れがあるからだ。
場所や形によって刀を取り替えて彫る。
逆目や木口は材を回しながら彫らなければ、逆剥けや止痕ができる。
細部になるにつれ彫り方も押し彫りと引き彫りを使い分ける。
特に輪郭の彫りには息を止めるほどに慎重に刀を当てる。
葉の厚さがはっきり表れるところだから。
厚さはおよそ0.3ミリほど、ところどころ材が紙のように透けるほどに。
力の加減をコントロールできず、穴を空けてしまった。
それも虫喰いのようでいいことにしよう。
そして仕上げは葉柄部分。
付け根がボキッといかないように、そっとそっと細くしていく。

そしてできた。

 自負も悔も胸におさめて年惜む  (稲岡長)

八つ手11

八つ手11-1

八つ手12

八つ手13

八つ手14

八つ手16
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カネノナルキ(花月・クラッスラ)  ~うっすらとした気持ち~
- 2014/12/25(Thu) -
花月253

盲目の若きピアニストの演奏を映像で見つつ、静かな夜を過ごす。
彼の暗闇の世界にはどんな聖夜が映っているのだろうか。

    「冬 」 八木重吉

  冬の
  うっすらとした気持ちに触れば
  一途な安らかなちからがわかるだろう

部屋にはカネノナルキが咲く。

ふと思い浮かぶのは、貧しくとも清く優しく美しい、「長い髪と金の鎖」の愛の形。
そして「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」。

   胸の奥に鎮魂の歌聞く聖夜かな  (あや)

花月252

花月251
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キジバト(雉鳩) ~静かに過ごす日となり~ 
- 2014/12/24(Wed) -
雉鳩242

年賀状を準備していたら雉鳩が桜の木に留まった。

  いい天気。
  久し振りに外に出て、背伸びして。
  ああ、気持ちいい。
  おや、弾むような音楽。
  鈴の音が入っていて楽しそう。
  賑やかいわねえ。

  しばらく巣の中でじっとしていたからあちこちが痒いわ。
  雪が続いたし、風も強かったしね。
  胸が、背中が、お尻の方も…。
  ねえ、何見ているのさあ。
  失礼ね。

  ああ、すっきりした。
  さあて、戻ろうかしら。

明日までには投函できるようにペンを持つとするか。

 飾りなきクリスマスも久し雉鳩がいる (あや)


雉鳩243

雉鳩244

雉鳩245

雉鳩246

雉鳩247
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ニホンズイセン(日本水仙)  ~少しの時間、せわしさもどこかへ~
- 2014/12/23(Tue) -
日本水仙231

冬の花です。
白い日本水仙です。
小ぶりです。
強い香りです。
とてもいい香りなんです。
ついつい鼻を付けていたくなります。

盃状の黄色い副花冠もまた可愛くて。
それで、お座敷にも。
ああ、芳しい。

「ねえ~、年賀状、できたのお~」

  水仙のひとかたまりの香とおもふ (黒田杏子)

日本水仙232

日本水仙233

日本水仙234
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メジロ(目白) ~お味はどう?~
- 2014/12/22(Mon) -
メジロ221

ピチュクチュピチュクチュ。
耳に届く元気な声。
ん、メジロだな。
窓の外を見ると、いたいた。
先日、鵯が食べ残した熟柿のそばだ。
一口突いては周りを見渡して。
体が少しふっくらとしているのは寒いからか。
羽の間に空気を入れて、ダウンジャケットにしているんだ。

そうそう、今日は冬至、「日短きこと至(きわま)る」と。
なんでも今年は「朔旦冬至」といって19年に一度に訪れる吉日だとか。
なにかいいことがあるとうれしいが。

  行く水のゆくにまかせて冬至かな  (田川鳳朗)

メジロ222

メジロ223

メジロ224
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師走の街  ~懐かしい風景~
- 2014/12/21(Sun) -
師走飾り1

ことぶき屋の店先です。
幟が立っています。
年末大売り出しです。
福引きもあるようです。
一等は何でしょうか。
郵便ポストにはそろそろ年賀状が投函されているはずです。
雪が残る道を托鉢僧が通ります。
山頭火さん?
「後ろ姿のしぐれていくか」
寒い中お疲れ様です。

叔父からの電話があったのは朝9時。
「師走の飾りができたで持って行くけど、今日は都合はどうだい?」
「出かける予定はないのでいつでも大丈夫です」
「じゃあ、1時半にいくでな」
「楽しみにお待ちしています」

ほぼ時間どおりに車が入ってくる。
杖を右手に左手には風呂敷包み。
ライトブラウンの靴はぴかぴかに磨き上げられ、ズボンにはアイロンの筋がぴしっと入っている。
一人暮らしだが今なおお洒落である。
座して結びをほどいて出してくださったのが、年の暮の田舎の銀座。
なまこ壁に縁台、どこか映画にでも出てきそうな懐かしい風景だ。
背景はいかにも寒々とした冬の空の色。
店の看板や幅5㍉ほどの旗に書かれた文字も見事。
芸の細かい紙細工である。

小一時間、昔の大売り出しや初売りの様子についての話が弾む。
「次は正月飾りを持ってくるでな」
「ありがとうございます」

折々の季節や行事に合わせ、想を練り上げて作って下さる。
毎回の豊かなアイディアと繊細な手作業に敬服する私である。
早速玄関に飾らせていただく。

   福引のかんらかんらと回りけり  (辻 桃子)

師走飾り2

師走飾り3

師走飾り4
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カリン(冬の花梨)  ~雪のベレー帽~
- 2014/12/20(Sat) -
雪のカリン1

まだいたるところに雪が残っています。
花梨にもちょこんと白いベレー帽です。
思わず頬が緩みます。
下の雪の上にも3つ転がっています。

大きくていい色で香りも佳くて。
でもカラスもヒヨドリも小鳥たちも食べません。
風呂に入れることにしましょう。

さてと、いい空気を胸いっぱいに吸って、作業の続きです。

   まだもののかたちに雪の積もりをり (片山由美子)

雪のカリン2

雪のカリン3
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レオパードゲッコー(ヒョウモントカゲモドキ・豹紋蜥蜴擬) ~寒いのは苦手なんです~
- 2014/12/19(Fri) -
レオパ1

我が家のアイドル、レオパ君です。
9年目の冬になります。
君付けをしていますが、実際のところ雄だか雌だかはよく分かっていません。
昼間は寝ていることが大半ですが、時々外に出されていじられています。
たまにエプロンのポケットの中に入れられて台所に立つこともあります。
きっと迷惑なんでしょうけど。
喋らない、啼かない、噛まない…性格はきわめて大人しく穏やかなのです。
動きもスローです。
そのつぶらな瞳がまたなんとも可愛いのです。
世話しているのは家人です。

で、彼を作りたくなったんですね。
私ではありません。
手がけたのは本来の飼い主さんです。

まずは石粉粘土で造型をします。
一番いい動きを捉えて形を決めます。
見て作るのですが、当然のことながらポーズを固定してくません。
それでもなんとかできました。
次はシリコンで雌型取りです。
脚は細かいので四分割にします。
そしてポリウレタン樹脂(レジンキャスト)を流し込みます。
型から外し、ルーターで細部を削り整え、最後に白いスプレーで着色して仕上げます。
雌型がありますので、いくつも複製できます。
今度はピンクや、黒、緑色や金色のも作るとのことです。

テーブルの上に作品を置いて散歩させると、その上に乗って遊んだりします。
もっともそれがなんなのか、彼は知らないでしょうけど。

そうそう、レオパ君は寒いのが苦手なんです。
ですので冬は専用のマットヒーター(床暖房)を入れてあります。
これで厳しい信州の冬を乗り越えています。

 小動物と吾のいる冬のしづけさ (あや)

レオパ2

レオパ3

レオパ4

レオパ5
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ヒヨドリ(鵯と柿)  ~降っていても~
- 2014/12/18(Thu) -
ヒヨドリと柿01

「真冬時の気温をすでに下回っています」
「路面の凍結に十分注意をしてください」
「不要不急の外出は控えましょう」
そんな呼びかけが入る。

ちらちらと雪が舞う。
明るさの度合いからいうと薄い灰色と言った方がいい外の景色。
柿の木に一羽のヒヨドリが留まる。
そこにあるのは熟柿。
そのねっとりとした甘みはこの時期の貴重な食糧。
嘴を差し入れ挟み取って喉へはこぶ。
捻るようにまた1口、2口。
そして何処かへ飛び立った。
まだ残っている。
明日も来るだろうか。

風がうなる。
窓が開かない。
凍っている。

   寒禽の取り付く小枝あやまたず  (西村和子)

ヒヨドリと柿03

ヒヨドリと柿02
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サザンカ(山茶花)  ~雪雪雪~
- 2014/12/17(Wed) -
山茶花12171

外は雪。
積もっている。
日中はずっと雪の予報。
最高気温も1℃。

防寒具に身を包んで始めるとしようか。
外はまだ薄暗いが。
とりあえず、人々の車が通り始める前に道から。
腕と肩と腰と相談しながら。
そして庭を。
少しずつ時間を掛けて。
久し振りのいい汗になる。

昨日、山茶花を一輪剪って挿しておいた。

  まれによき夢みし朝や雪降りつつ  (清水基吉)

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ヤマアジサイ(冬の山紫陽) ~枯れ姿にも四十八茶~
- 2014/12/16(Tue) -
冬のヤマアジサイ161

景色の中から鮮やかな色が消えていく。
多くは茶の世界に変わって。

江戸の人々はそんな自然の寂びた世界にも細やかな心をもって味わっていたらしい。
身のまわりのあらゆる微妙な茶の色相の変化に名前を付けて楽しんだと。
それらには四十八茶の名があるという。
繊細な感覚である。
雀茶、鶯茶、狐色、蝉の羽色、香色、媚茶、白茶、金茶、檜皮色、煤竹色、利休茶…。
その付けられた名の一つひとつがなんとも趣深い。
この枯れ山紫陽花の色は「柴染」というのか。

   木も草もためらはずして枯れゆけり  (相生垣瓜人)

冬のヤマアジサイ162

冬のヤマアジサイ163
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クリスマスローズ(Christmasrose)  ~寒さの中で~
- 2014/12/15(Mon) -
クリスマスローズ151

寒々…。

枯れ葉色の中に青々とした一角。
それはクリスマスローズの小径。
(私が勝手にそう呼んでいるだけなのだが)
掌のような大きな葉を広げる。
つややかに、ピンとして。
氷点下なぞものともしない。

腰を屈める。
クリスマスローズに子どもたちが生まれている。
株の中では花芽も育っている。

寒々…。
かさかさにぱたついた空気など。

   淋しさに慣れてゆく日々寒さにも  (稲畑汀子)

クリスマスローズ152

クリスマスローズ153

クリスマスローズ154

クリスマスローズ155
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F氏の像 ~若かったときは~
- 2014/12/14(Sun) -
藤本先生像13 - コピー

若い頃はよく男性の頭像を制作した。
いくつか残されている作品を見ると、男の表情もいいものだとまた作ってみたくなる。

F氏の像も20代の終わりのものだ。
モデルは、彫刻の仲間が制作の拠点としていた施設の館長さんをされていた方である。
時には私どものグループ展にメッセージ文を寄せていただいたりと、大変お世話になった。
確固たる信念を持っておられ、その厳しさの中にあって吾々若者に対してはいつも温かなまなざしを向けてくださった。
休憩時間にお聞きする話には冷徹さと懐の深さが感じられた。
そして品格と教養が。
この作品ができた後、氏は県教育委員長へ招聘され、公務が多忙となり二度とお目にかかる機会は訪れなかった。

こうしてみると、その粘土を手にモデルと向き合った情景が具に浮かんできて、懐かしさが蘇る。

雪が少し積もっている朝である。

   雪降れり時間の束の降るごとく  (石田波郷)

冬の杜鵑草
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サザンカ(山茶花) ~さむいね~
- 2014/12/13(Sat) -
冬のサザンカ1

さむいね
でもこのさむさがあるからはるにはながさくんだよね
さむさがいろいろをおしえてくれるね
ふだんかんじないことや
ふだんきにしないことや
ふだんかんがえないことをね

さむいね
せわしいときだから
ひえびえするときだから
まわりのモノがよくみえ
ヒトのこえがよくきこえ
よのなかのコトがよくわかるね

さむいね
まっしろなとうじきをながめつつ
こころのまどにともしびを
くちびるにあいのうたを
てのひらにたいようを
あしにはゆたんぽをだね

   朝寒(あさざむ)や生きたる骨を動かさず  (夏目漱石)  

冬のサザンカ2
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コゲラ(小啄木鳥・Japanese Pygmy Woodpecker) ~ギーイッギーイそしてチョンチョン~
- 2014/12/12(Fri) -
コゲラ12123

ギーイッギーイときしむ音のようでもある。
それは聞き慣れたいつもの声。
方向を頼りに見渡すといた。
ナシの木に垂直に留まるのはコゲラ。
尾羽を枝に付けて支え、細い脚を掛けている。
時々、嘴をちょんちょんと打つ。
何か腹に入れるものでも得ているのか。

寒さもだいぶ厳しさを増してきた。
明日は大雪になりそうだともいう。
小鳥たちはどこでどうやってそんな冬を過ごすのだろう。
素足で炬燵も湯たんぽもないのに。
自前の薄いダウンがあることはあるが。

   啄木鳥よ汝も垂直登攀者  (福田蓼汀)

コゲラ12121

コゲラ12122
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コナラ(小楢の葉) ~この葉も彫ろう~
- 2014/12/11(Thu) -
コナラの葉1

掃き集める葉。
茶色くなって、乾いて、
反りが出て、曲がって。
一枚一枚が為す造形美。

コナラの落ち葉、これも彫ってみよう。

桂の端材におよその形を描く。
輪郭を切る。
上から見て、へこみと出ているところの高低差を出していく。
横から見て、形の反りや曲り具合を確かめながら彫る。
彫る、彫る、ひたすら彫る。
縁辺の尖った部分と微妙な膨らみを出す。
親指と人差し指で挟みながらその厚さが一定になるようにし薄く薄くしていく。
ポイントとなるのは、反転する葉の先端と葉柄に向かう浮き上がった部分。
そこは刀を研ぎ直し、切れ味を良くしてからさらにやさしく彫っていく。
指先より、肩に力が入る。
葉脈も入れて完成。

八つ手の葉もあった。
次のモチーフにしよう。

   掃く落葉掃かぬ落葉も庭のもの  (稲畑汀子)

コナラの葉0

コナラの葉2

コナラの葉3

コナラの葉5

コナラの葉6

コナラの葉7
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カネノナルキ(花月) ~有ることと無いこと、持つ人と持たない人~ 
- 2014/12/10(Wed) -
カネノナルキ12101

カネノナルキが咲く。

「二度とない人生だから」で眞民さんは言う。   (『自選 坂村眞民詩集』より 部分)

………(略)
二度とない人生だから
まず一番身近な者たちに
できるだけのことをしよう
貧しいけれど
こころ豊かに接してゆこう

二度とない人生だから
つゆくさのつゆにも
めぐりあいのふしぎを思い
足をとどめてみつめてゆこう

二度とない人生だから
のぼる日しずむ日に
まるい月かけてゆく月
四季それぞれの
星々の光にふれて
わがこころを
あらいきよめてゆこう
………(略)          
                  

カネがあるということとカネがないということと、心の貧しさと心の豊かさということ。
持つことと持たないということと、求め続ける華やかな幸せと持続する喜びに充ちた小さな幸せと。

きょうだい4人を育ててくれた小さな母の教え。

12月10日、カネノナルキが咲く。
素敵な花月という名も持つ。

    日向ぼこ仏掌の上にある思ひ (大野林火) 

カネノナルキ12102

カネノナルキ12103
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マツバギク(松葉菊) ~一日を生きるということ~
- 2014/12/09(Tue) -
松葉菊1291

松葉菊は夏の花。
強い陽射しを受けて艶やかなピンクの花を開く。
その一斉に咲き揃う様子は花火のようでもある。

そして今、冬。
その名残りが1輪2輪3輪4輪…と。
心細げに半開き。
雪も降ったし、氷点下の朝も続く。

正月までということはないと思うが、ときどき覗いてみることにする。

「今日あなたが無駄に過ごした一日は、昨日死んだ人がどうしても生きたかった一日である」
外山滋比古がその著『日本語の作法』の中で紹介していた言葉である。

   とかくして風に聴き入る十二月   (堀 葦男)

松葉菊1292

松葉菊1293

日本語の作法
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エナガ(柄長・long‐tailed tit) ~かわいげな小鳥の声が聞こえる~
- 2014/12/08(Mon) -
エナガ1281

昨日の日曜日のティータイム。
庭に陽が広がりはじめ、朝までの雪もとけていく。
と、窓の外でチュリリ、チュリリと可愛い声がする。
窓越しに見ると、二羽のエナガがすっかり葉を落とした木の枝に留まっている。
一羽は楓に、一羽は山吹に。
声をしきりに上げながら楽しげに枝を移り渡る。
雪もやんで彼らも嬉しいのだろう。

「洗濯物干してえ~」
腰を上げる。

   雪落ちて細枝に二羽柄長啼き  (あや)

 エナガ1282

エナガ1283
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『求道師』 ~昭和のノスタルジア~
- 2014/12/07(Sun) -
求道師像

過去の作品をいくつか置いてある。
『求道師』を作ったのは20代、昭和の時。
見ると、その当時の「熱」を感じる。
表現の拙さとは別に、「思い」が伝わる。
内に迸る「勢い」を見たりする。
若かった自分のいるノスタルジア

今は負けている。
もっと「想」を大事にしなくては。
燃え尽きぬように、新たに薪を焼べよう。

  雪の降る町といふ唄ありし忘れたり  (安住敦)

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クリ(栗黄葉) ~本物を探して静かに生きる~
- 2014/12/06(Sat) -
栗黄葉1261

碩学のインタビューを集めた『黄金の時代』という本がある。
各分野におけるエキスパートの蘊蓄ある言葉が語り口調で収められる。
一人につき8ページ程のコンパクト版だ。

光る言葉、鋭い言葉、磨かれた言葉、愉快な言葉が並ぶ。
その中からいくつかを。

○安岡章太郎 
・人間は50歳から子どもにはけっして見えない、豊かな複眼の世界がひらけてくる。
○会田雄次  
・せめて60歳ですね。40歳なんて中身なしまだガキですね。私は60歳になってやっとこれからだと思いました。
○淀川長治
・年をとると、そこら体はガタきます。けど笑いころげ、ホロリと涙する…これがどんなに若さをたもつことか。 もう残り時間は少ないけれど、もっともっと勉強したい。
○藤沢周平  
・人間にはある程度、痛みや苦しみも必要。それは“生”の証だから。
○戸川幸夫  
・「見られている」と感じる、この動物的緊張でヒトは輝く。
○塩野七生  
・マキャベリの言葉から、「しないで後悔するよりも、してしまって後悔したほうがよほど良い」を贈ります。
○田村隆一
・二流人間を目指すと一流が見える。いま、日本人は三流ばかり。外国人の目、猫の目で一度、見てごらん。
○宮脇檀   
・家とは「宝島」である。掘れば掘るほど、いくらでもいろいろな宝物がでてくる。人間というのは、何か興味を持たないことには何も見えない。何も眼の中に飛び込んでこない。逆に何々が見たいと思うと、いくらでも向こうから飛び込んできてくれる。「忙しいからできない」という人がいるが、要するに時間の使い方と集中の問題。サラリーマンでも家にいる主婦でも、自分で自分の生活をプログラミング出来ている人は仕事にしろ家事にしろ旅行にしろイキイキとしていて、かつ意欲的。これを全部、人任せにしたり、タイムリミットなしでずるずるはっきりしない時間を積み重ねていくのは、本当に人生の無駄使いだと思うね。
○北島忠治
・僕は、自分が間違ったと思ったらすぐに非を詫びた。僕のモットーは“前へ前へ”、ラグビーと同じだ。
○西岡常一
・電気ノコギリだと切り口が毛羽立ち、水を吸いやすくなってすぐにカビが生えて腐る。ヤリガンナでで切ったものは水をはじく。

キャリアを積み重ねた人々の言葉には重みがある。味があり、深みがあり、説得力がある。
それらの言葉の少しでもを食べて噛んで飲み込む。

   黄葉大樹そは歓喜とも悲哀とも  (水野孫柳)

栗黄葉1262

栗黄葉1263
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ナンテン(白実南天) ~小さな楽しみを~
- 2014/12/05(Fri) -
白実南天1251

あるのは白実南天です。
房のところどころ欠けています。
それはヒヨドリでしょうか。
それともジョウビタキでしょうか。

時は師走です。
仕事に慌ただしく、忙しいと人が動きます。
そうかといって、心を荒くさせようにしましょう。
だからといって、心を亡くさないようにしましょう。

やってきたのは冬将軍です。
道にも雪を見るようになりました。
目の前の一つひとつをこなします。
小さな楽しみを積み上げていきます。

   たましひの抜けしにあらず白南天   (片山由美子)

白実南天1252
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サクラ(桜の葉) ~枝に一枚の葉、彫ってみましょう~
- 2014/12/04(Thu) -
桜の葉7

桜の葉が落ちるか落ちないかと枝に一枚、
「最後の一葉」ではありませんが、なんか愛おしくなります。

彫ってみましょう。

材は桂の板です。
およその輪郭を描き、周りをノコで切り落とします。
平面から立体へ、指先に集中です。
刀を送る力とスピードを調整しつつ、同時にブレーキを掛けながら。
反りやへこみを丸刀で削り出します。
実際の葉の厚みに近づけるように、できるだけ薄くしていきます。
でも、あまり薄いと割れたり裂けたりしますので、そこは丁寧に慎重に。
ときどき、光に翳してその薄さを確かめながら刀を当てていきます。
厚みはほぼいいでしょう。
葉脈を描き、ところどころに虫喰いも入れることにします。
そして葉柄の部分です。
ここは折れないように、印刀でやさしく削って細くしていきます。
強度の点でこれ以上は心配なので止めておきましょう。
最後は縁辺の鋸歯です。
ぎざぎざも入り、これでできあがりです。

「ほら、できたよ」
「え~っ、はっぱみたい」
「………」
「今度は八つ手はどう」
「そうだなあ」

左の人差し指を少し切りました。
深くはありません。

  日だまりの枯葉いつとき芳しき  (石橋秀野)

桜の葉1

桜の葉2

桜の葉3

桜の葉4

桜の葉5

桜の葉6

桜の葉8
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冬の葉 ~良寛の戒語~
- 2014/12/03(Wed) -
冬の葉1

良寛さんに90箇条になる『良寛戒語』がある。
人の話をする姿、その様子について戒める。
その中から拾う。

一ことばの多き
一口のはやき
一手がら話
一人の言いきらぬ中に物言う
一話の長き
一自まん話
一たやすく約束する
一ことごとしく物言う
一物知り顔に言う
一人のことわりを聞き取らずしておのがことを言いとおす
一おれがこうしたこうした
一あう致しました、こう致しました、ましたましたのあまり重なる
一はなであしらう

12月に入り、巷間は賑やか。
いい話、うまい話、見事な話…。
視点と論点、現実と事実、感覚と感性、反省と謙虚…。

聞く、聴く、訊く耳を持つ。
見る、視る、観る目を持つ。
何が本当で何が嘘か。
何が可能で何が不可能か。
何処をを向いているのか、誰に向けているのか。
話していることと話していないこと。
やってきたこととやらなかったこと。
選り分けられる力。

庭の木々に残る葉たち。
美しいものは美しい。

饒舌な語りの中から、底にある真善美を見分ける。

  かくれんぼ三つかぞえて冬となる  (寺山修司)

冬の葉2

冬の葉3

冬の葉4
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サザンカ(山茶花) ~色々をします~
- 2014/12/02(Tue) -
サザンカ1221

12月です。
色々を考えます。

一揃えの布団を処分しました。
たまった名刺を捨てました。
冬タイヤに履き替えました。
カレンダーを掛け替えました。
まだまだ、まだまだです。

店には華やかなクリスマス飾りと音楽。
そして正月飾りとおせち注文。

あと30日です。
いえ、まだ30日です。

赤い山茶花がたくさん咲いています。
赤い山茶花がたくさん散っています。

12月です。
色々をします。

   この冬をここに越すべき冬仕度  (富安風生)

サザンカ1222

サザンカ1223

サザンカ1224
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ヤキイモ(焼芋) ~「十三里!」~
- 2014/12/01(Mon) -
焼き芋141

「やきいもしよう」
「いいね」

私は熊手で落ち葉を集める。
台所では濡れ新聞でくるみ、さらにアルミホイルで包んで準備。

火を焼べる。
およそ1時間、おきができる頃。
芋を入れておきをかぶせる。

さらに1時間。
取り出す。
ところどころに皮が黒くなって、いかにも焼き芋色。

割る。
いい飴色、まさに食べ頃。
やわらか。
ほかほか。

「あちちっ」
「いいかおり」
「うまい」
「この少し焦げたところがいいのよね」
「十三里!」
「なに、それ?」
「栗より美味い十三里だよ」
「わからない」
「…………」
「来週もう一度しようね」
「そうだな」

服と帽子に煙の匂いがたっぷりと染みこんでいた。

  畑火よりにほひほのぼの藷焼けぬ   (飯田蛇笏)

焼き芋142

焼き芋1433

焼き芋144
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