
努力する。
熱心に取り組む。
精いっぱいやる。
一生懸命打ち込む。
献身的に奉仕する。
………………………。
そんなまじめな生き方。
そんな一途な生き方。
しかし。
結果として何も変わらないことが多々ある。
必ずしも報われるわけでもない。
望むような良い結果に結びつかないこともある。
でもやはり、そうして生きること。
しないよりすることの方が何かを必ず生むのだから。
したこと、やったことで自分の中に残る「何か」こそが大事なのだろう。
時々古い本をベッドに持ち込む。
寝る前のわずかな読書である。
今は『ソクラテスの弁明・クリトン』(プラトン著)。
開くページも少し色褪せている。
クリトンに薄く引かれた鉛筆の線。
消えかかった私の青春の跡。
〈ソクラテス〉 一番大切なことは単に生きることそのことではなくて、善く生きることである。
〈ソクラテス〉 不正を行うということはいかなる場合にもこれを行う者にとっては悪であり恥辱である。
人はまた不正に報いるに不正をもってすべきでもない。
奥付には定価が書いてない。
★が一つ付いているだけだ。
当時それは50円を示していた。
たった50円でギリシャ哲学の端っこを学んだ若い頃のことである。
今夜で終えそうだ。
白い薔薇がいい顔で咲いている。
見よや君 あすは散りん花だにも
いのちのかぎり きょう一日を咲く
ひと拗ねてものいはず白き薔薇となる (日野草城)




