
『未来を模索する君たちへ~IPS細胞、山中伸弥教授のメッセージ~』を観た。
NHKの成人の日特集番組として、高校生を対象にした特別授業の一コマを中心に編集されたものだった。
知られるように教授は、ノーベル賞の最有力候補にもあげられる今最も注目を浴びている医学者である。
教授の発見したIPS細胞は人間のすべての組織や臓器に変わることのできる万能細胞である。
この発見により心臓病やこれまで治療が困難といわれた多くの難病などを治せる可能性へ道を開いたと。
若くしてのこの発見をした教授は頭脳明晰にして凄い才能の持ち主であろうと誰もが思う。
すべてが順調な歩みで、その階段を着実に登ってきたのだろうと。
しかしここまで到るにはむしろ挫折の繰り返しだったという。
教授は語る。
自分は二度挫折している。
一度は臨床医を逃げ出し、もう一度は研究者を逃げ出したと。
研究者をやめることも考えた。もう限界だと感じた。
一時期はノイローゼ・うつ病状態にさえなる。
そんなとき思い出したのが「VW]の言葉だという。
VはvisionのV、WはworkのW、つまりVision & Hard workを意味する。
これは大学の恩師ロバート教授が若い頃教えてくれた言葉だという。
つまり夢と未来像を描くこと、あるいは洞察力を持ち、勤勉、すなわち一生懸命努力することが大切だという教え。
教授のIPS細胞はこうして逆境から掴んだものだったのだ。
教授は高校生に向かって次のように語りかける。
「山あり、谷にあり、失敗することは恥ずかしいことではない」。
「失敗をおそれていたら前には進めない。失敗し、工夫し、立ち上がる」。
「工夫しながら、チャレンジを繰り返す。やる気があって一生懸命にやればなんとかなる。」
そして最後に「ビジョンとワーク、いい時も悪い時も頑張る」と。
道は真っ直ぐで歩きやすいだけとは限らない。しかし、自分の足を使う以外に前には進まない。
道は見通しよく開かれているとは限らない。自分の手でかき分け押し退けて道を切り拓く。
先の予測はできない。しかし、今そこに踏みとどまっていては今以上の進歩はない。
失敗するということは次に同じ失敗をしないことを学ぶということである。
自分の中に失敗する「思考」や「行動」を淘汰するということだ。
若者向けのメッセージではあったが、私自身励まされた番組だった。
大寒のよき眠りより覚めにけり (八木林之助)
