
朝が早い私は『ラジオを深夜便』をよく聞く。
先日は「特集100年インタビュー」(再放送)で、建築家安藤忠雄が語っていた。
特に興味深かったのは、建築家になるまでの前半の部分である。
彼は小学校、中学校と喧嘩早く、成績はずっと下位であった。
高校へ入っても成績は同様で、腕に自信のあるところからボクシングを始め、プロデビューをする。
しかし、当時の世界チャンピオンのファイティング原田の練習を見て、その世界の違いに圧倒され、グローブを外す。
少年は平屋であった家を2階に建て増しした時、手伝ったのをきっかけに大工や左官に興味を持ち、建築に関わりたいと思う。
そして高卒後、建築事務所でのアルバイトをしながら猛烈に勉強し、建築士試験に合格して資格を取る。
当時ありとあらゆる資格取得のため、ひたすら努力を続けたという。
彼は大学で建築の専門教育を受けてはおらず、ここまでの道のりは全て独学である。
そして個人住宅「住吉の長屋」で日本建築学会賞を受賞し、その後の活躍は言うまでもない。
打ちっ放しのコンクリートによる建築表現で各地の公共施設、商業施設などを手がけ世界的に高い評価を得る。
「光の教会」などを見ると、それは建築というより崇高な芸術作品である。
高卒の彼は、最高学府である東京大学教授を経て名誉教授、現在は特別栄誉教授である。
「漲る緊張感が自分を育てる」と彼は言う。 「それをずっと持ち続けたい」と。
話を聞きながら私の頭には次の言葉が浮かんできた。
「努力は決して裏切らない。流した汗の分だけ、必ず結果は出る」
「夢を追い求め、果敢にチャレンジする事で、夢の方から近寄ってくる」
「行動の繰り返しが、難しい事をも簡単にさせる」
心の回転軸は年齢とは関係ない。
常に求めて生きているかで、絶えず回り続ける事ができる。
無為に気を抜けば、ぶれてよろめいてしまう。
一つひとつの事を確実に為しながら、高めながら、深めながらエネルギッシュに生きたい。
放送が終わる頃には夜が白々と明けてきた。
最後の締めくくりは「今日の誕生日の花と花言葉」。
これも楽しみのコーナーの一つである。
今朝もこんな早くから蜩が鳴いている。
蜩はこの仄暗さが好きなのだろう。
算術の少年しのび泣けり夏 (西東三鬼)

