キショウブ(黄菖蒲・yellow flag)
- 2010/05/31(Mon) -
キショウブ

また、5月も今日で過去となり、心や言葉の歳時記も春から夏へと衣替えを迎える。
しかし、季節の針は確実に前へ進むのだが、体には感じるのはずっと続く肌寒さ。
今日の最高気温も20℃を切る予報で、なかなか半袖に切り替えられない。

家の縁辺にキショウブが長く並んで咲いている。
和の情緒が漂う花だが、本来はヨーロッパを故郷とする外来種。
心を元気にしてくれるような爽やか色を次々と届けてくれる。
しかし、これは一日花、今日の姿はこれもまた明日は過去になる儚い花でもある。

      先人は必死に春を惜しみけり (相生垣瓜人)  

黄しょうぶ

黄菖蒲
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ムラサキツユクサ(紫露草) ~あるべきものがないと淋しい~
- 2010/05/30(Sun) -
紫露草に蜂

蜜蜂の減少が心配されている。
数年前に比べ半数、あるいはそれ以下だという。
蜂群崩壊症候群いうコロニー損失現象なるのも起こしているという。
働き蜂が育児放棄したり、女王蜂の周りから忽然と消え去ったりと。
ハチミツ業者はもちろんのこと、果樹農家、イチゴ農家はその対応に苦慮している様子。
蜜蜂ではないが、毎年、いくつも大きな蜂の巣を見る我が家でも、昨年はひとつも巣ができていなかった。
おかげで、アシナガなどに例年は複数回刺されていた私だが、去年は一度も痛い思いをしなかった。
やはり、自然の営みの中で、あるべきものものがないと淋しい。
いるべきものがいないとなお淋しい。
しかし、多くの命を繋いできた生態系は確実に壊されているような気がする。
もちろん人間の手で。

今年初めて、花に留まる蜂を見た。
紫露草の黄色い花粉に口や足を盛んに動かしていた。
久しぶりの出逢いに、じっとその動きを見ていた。
蜂のニュースの後だけに、嬉しくなった。

     どうぞと紫露草蜂迎え (文) 

 紫露草

紫露草
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カキツバタ(燕子花・杜若)~業平の妻恋ひ~
- 2010/05/29(Sat) -
カキツバタ

カキツバタは濃紫色の六つの花弁を持つ。
だらりと垂れ下がる外の三つには真ん中に白い一本の線。
細い内側の三弁は、対照的にただ一色にきりっと立ち上がる。
アヤメのような模様もなく,色もシンプルで慎ましやかだ。
根は水の中にある。
緑の中に一つ、二つ、業平の妻恋花。。
今年はいくつ咲いてくれるのだろう。

か(風)ぜわたる
き(木)ぎのみどりに
つ(包)つまれて
は(花)なむらさきは
た(誰)れをぞおもふ         (文)

        燕子花高きところを風が吹き (児玉輝代)

かきつばた

燕子花
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コデマリ(小手毬・小粉団)~白い花 それは~
- 2010/05/28(Fri) -
コデマリ

白い花
それは
木の思い出?
私の思い出?
            (『いそがなくてもいいんだよ』岸田衿子より)

5弁の白い花はコデマリ。
1㎝にも満たない小さな花が密集して咲く。
その姿を「小さな手毬」に見立てた、いにしえ人の優しい感性。

「霜注意報が出ています。野菜の管理には十分ご注意ください」
そんなアナウンスが入る。
まだまだ天気が落ち着かない。
もうすぐ5月も尽きるというのに。

これから先、この花のように、まだたくさんの思い出を丸く作っていくことができるだろうか。

      小でまりのたのしき枝のゆれどほし(轡田 進)
 

こでまり
 
小手毬
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クリムソン・クローバー(Crimson clove・紅花詰草) ~四つ葉のクローバー~
- 2010/05/27(Thu) -
ストロベリー・キャンドル

ん、イチゴ?違う、違う。
それはクリムソン・クローバー。
この時期、毎年姿を見せる花。
クリムソンという名、そのままに深紅色。
ストロベリー・キャンドルという別の名がある理由も頷ける。

若い頃の歌に『四つ葉のクローバー』がある。
歌うのはかまやつひろし。作曲も彼による。
普段に知る彼のイメージとはかなりのギャップではある。
しかし当時、その優しい歌い方が好きで、よく弾き語りをした。
 
 四つ葉のクローバー ノートにあった
 あのときあなたが 摘んでくれた
 あれは遠い夏のことさ
 今では行方も知らない人
 四つ葉のクローバー 枯れたけれど
 二人の想いで 今も残る
 夢のように消えた夏よ
 幼い初恋 愛した人
                  (『四つ葉のクローバー』作詞 山上路夫 作曲 かまやつひろし)

下宿でこの歌を弾いていた頃、巷間では映画『ある愛の詩』(Love Story)が封切られ、話題を集めていた。
アンディ・ウイリアムスの歌う情感あふれる主題歌も心に残る。

四つ葉のクローバーを見つけるとこの年になっても嬉しい。
一人微笑む。

      あっ、四つ葉と見つけて嬉しわれ一人 (文)
 
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エクスバリー・アザレア(西洋ツツジ・Exbury Azalea) ~ゆかしき色にて~ 
- 2010/05/26(Wed) -
西洋躑躅

エクスバリー・アザレアは陽当たりのいい場所を好む花、光をたくさん浴びる所でよく育つ。
でも、ここは百日紅と紅梅と楓に囲まれた庭の片隅。
可哀想だが、何故かそこに植わってしまっている。
たまたま、空いていたスペースがそこだったのかも知れない。
背の高い木々に囲まれ、当然のことながら陽は充分に届かない。
それでも、こうして健気に花を咲かせる。

花は朱色だが、同じオレンジ系でもほかのツツジとは微妙にその色合いが異なる。
派手さのない、優しいソフトな朱色、あるいは品のいい朱色とでも言おうか。
日陰に咲くことで、却ってその落ち着いた色合いがしっくりと収まっている。
大きな株になっているので、今更移し替えることはできない。
本来の適した環境ではないが、このままにて静かに成長を重ねてくれればと思う。

          眦につつじの色のかたまれる (上野泰)

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キングサリ(金鎖・黄花藤・golden chain) ~雨が空から降れば~
- 2010/05/25(Tue) -
キングサリ

雨が空から降れば
思い出は地面にしみこむ
雨がしとしとふれば
思い出はしとしとにじむ
                (『雨が空から降れば』六文銭)

最近、ラジオに懐かしい曲がよくかかるようになった。
メロディーとともに頭の中は若い時代へ一っ飛びに戻り、感慨に浸る。
遠い昔のことなのだが、その歌の流れていたあの日、あの頃のことが鮮明に映像となってプレイバックする。
自分が何処で何をして、どんな本を読んでいたのかさえ、クリヤーに思い出されるから不思議である。
ジーパン(ジーンズとは言わなかった)はファスナーでなく、金属製のボタンだったことなども。

浅川マキの「赤い橋」も好きだった。
「昭和ブルース」…、ブルーベル・シンガーズなど、もう知る人はいないかも知れない。
「僕の好きな先生」は忌野清志郎の若い頃の声だ。

梅雨の走りにしては激しい雨だった。
雨上がりの庭ではキングサリが花穂を垂れている。
golden chain、金の鎖、メルヘンチックの名がいい。

       走り梅雨古表札のまづ濡れて (小林清之介)

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ジャーマン・アイリス(German iris) ~雨の日は雨の中にある~
- 2010/05/24(Mon) -
白に青のジャーマンアイリス

雨の日、傘を差して庭を歩く。

デスクワークから離れて外へ出ると、頭がリフレッシュされる。
自然のパレットが生み出す木々の緑や花の色で目の疲れも取れる。
カチカチやヨレヨレやバタバタの心にも優しい気が沁み込むようだ。
だから私は雨であれ、雪であれ、もちろん猛暑の日でも庭を歩く。
それぞれの天気の中で見せる花たちの表情もそれぞれに趣が違っていい。

ジャーマンアイリスが雨の中にある。
今咲くのはまだ4色だけ。
これからいろいろな彩りが加わっていく。

irisとはギリシア神話中の虹の女神イリスのことだという。
そのイリスが天から虹を渡って地上へ下りて姿を変えたのがこの花だと。
それゆえに、虹のような多くの色を持つ花なのだろう。

雨の日の花もまた美しい。

         アイリスを見ゆる一眼にて愛す (日野草城)

ジャーマンアイリスライトブルー

黄色と青のジャーマンアイリス

黄色いジャーマンアイリス
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ボタン(牡丹・tree peony) ~ぼうたん二十日草~
- 2010/05/23(Sun) -
芳紀

並ぶ二つの赤い牡丹、白い牡丹。
それぞれ「芳紀」「御国の曙」の名が付く。
花びらはふんわりやわらか、千重万重。

牡丹は平安時代、空海によって中国より齎されたという。
和名に「二十日草」とあるを見るが、その由来を知らない。
白居易に「花開き花落つ二十日、一城の人皆狂うが若し」と、牡丹を詠んだ歌があることを事典に見つける。
名付けはそのあたりにあるのだろうか。

雀も庭に来て遊ぶ。
日本全国で雀の数が半数近くにも減少していると聞く。
今日はまた一気に10℃ほど気温が下がるという。
色々が「変」な気がする。
 
     ぼうたんと豊かに申す牡丹かな (太祇)

御国の曙


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アメジストインスノー ~本当のもの~
- 2010/05/22(Sat) -
アメジストインスノー

  本当のもの    八木重吉

どうしてもわからなくなると
さびしくてしかたなくなると
さびしさのなかへ掌をいれ
本当のものにそっとさわってみたくなる
                (「定本 八木重吉詩集」より)

木々の勢いが盛んである。
目に映る緑のなんとも様々で綺麗なこと。
色、色、色…、白緑、裏葉、菊塵、虫襖、鶸色、海松、抹茶、蓬、木賊、 若苗、 若菜、 萌黄、 柳色…。
そんな色言葉に囲まれた林の中からは鶯の声が聞こえてくる。

欅の若葉の下ではアメジストインスノーも咲く。
紫と白のコンビネーションが美しい。

     うぐひすやもののまぎれに夕鳴きす (暁台)  

アメジストインスノー 
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ミヤマオダマキ(深山苧環) ~愚鈍なり~
- 2010/05/21(Fri) -
みやまおだまき


「おだまき」…、前から優しい響きの名だと思っていた。
漢字では「苧環」の文字が充てられる。
なかなかそれを「おだまき」とは読めない。
知らなかった、「苧環(おだまき)」とは紡ぎ糸(苧)を巻(環)く、糸巻きのことだと。
花容が、その糸巻きの形に似ているところからその名付けがあると。
そういうことなのかと、一人合点する。

深山苧環はその名の通り、もともと山地にある花。
全体に青紫色の小さくて繊細な花である。
距の先端には淡い黄色でアクセントを付ける。

こんな可愛い花なのに、なぜか苧環の花言葉には「愚鈍」とある。
寒山拾得の如く、「愚直なまでにひたすらな姿なり」ということか。

       手をつなぎ深山をだまき崖に折る (河府雪於)
 
ミヤマオダマキ
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スノーボール ~雪形の季節~
- 2010/05/20(Thu) -
スノーボール 

-遅霜で農業被害1億7000万超-
そんな見出しが地元新聞に大きく載り、次のような記事が報じられる。
 春先の遅霜により、 果樹を中心に農業被害が発生し、大幅な収穫減が予想される。
 ナシ、モモ、リンゴ、カキ、ウメなどのめしべが枯れたり、低温で受粉が進まず、着果できない。
 特に、受粉期に遅霜が直撃したナシの被害が最も多く、アスパラガスやトウモロコシなどの野菜にも被害が及んでいる。

我が家で見渡せば、アンズに着果が一つもない。
これは初めてのことだ。
ナシには僅かに実が確認できる。
ウメももぽつりぽつりだ。
やはり、天候不順な春であったことが、庭の果樹、花木を見てもわかる。
今年は、果物に多くの収穫は望めそうもない。

違う面には農時暦を示す雪形が紹介され、山々を背景にして進む田植えの様子も載る。
米の育ちは大丈夫だろうか。

スノーボールが咲いている。
咲き始めは緑、そして薄緑、最後に白と移り変わっていく。
白い手鞠のような花である。

    雪形の駒かけのぼる駒ケ岳 (井口幸朗)

 スノーボール

  スノーボール
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エニシダ(金雀枝・broom) ~黄色い蝶が枝いっぱいに~
- 2010/05/19(Wed) -
エニシダ

びっしりだ。
ああ、びっしり。
こんなに咲いてくれると気持ちがいい。
いい。
いいなあ。

金雀枝と書いてエニシダ。
そうか。
なるほど。
文字の繋がりや視覚感もいい。
でもなんで雀なんだろう。

一つひとつは可愛い蝶に見える。
枝にびっしりの黄色い蝶。
黄蝶枝とも書きたいね。

     金雀枝の咲きあふれ色あふれけり( 藤松遊子) 


えにしだ

金雀枝
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エビネ(蝦根・海老根・化偸草) ~その名は根の形にありて~ 
- 2010/05/18(Tue) -
エビネ 

エビネが咲く。
可憐な花。
枝葉から僅かに漏れる光。
スポットとなる。
日陰がいいと思う。
樹の下がお似合い。
私はこの花の根を見たことがない。

    しづけさのひかりとどめてえびね咲く (高原初子)

エビネ
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アネモネ(poppy anemone) ~美のはかなさ~
- 2010/05/17(Mon) -
 青いアネモネ

青いアネモネ。
白いアネモネ。
赤いアネモネ。
たくさんのアネモネ。
一重のアネモネ、八重のアネモネ。
たくさんのアネモネ。
まっすぐ伸びた茎の頂に一つ。
風が吹けば首振り人形。
じっと土中で根を伸ばす冬。
春の声がけで顔を出し。
暖かな光を浴びて花開く。
たくさんのアネモネ。
散るアネモネ一つ二つ。
咲くアネモネ散るアネモネ。
美しいアネモネ、哀しいアネモネ。
美ははかないもの。
永遠の美など夢のまた夢。

    まっさらなノートいろいろアネモネ語 (永末恵子)

白いアネモネ

赤と青のアネモネ
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アヤメ(文目) ~よい便り~ 
- 2010/05/16(Sun) -
アヤメ

  ほととぎすなくや五月のあやめ草あやめもしらぬ恋もするかな
                                      「古今集 四六九 (よみ人しらず)」

見れば、そんな歌の深い想いも解る気がする文目。
色は勿論のこと、花も葉も茎もその一つひとつが形として整い美しい。
そしてまたその立ち並び、揃い咲く姿は一枚の屏風絵であり、静かで繊細な調べにも感じられる。
すべてにおいて、あるだけで見る人に和の心を惹起させる。
そばに佇めば自ずと誰しもが歌人となり画人にさせるようなそんな花だ。
ノルマやデータや結果、そして評価…、様々な人間模様の日常すら忘れさせてくれる。
花言葉は「よい便り」。
5月も半ば過ぎ、年を重ねた私にも嬉しい便りが届くのだろうか。

    一人立ち一人かゞめるあやめかな (野村泊月)

アヤメ  

アヤメ 
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ボタン(牡丹・tree peony) ~豊麗なる白~
- 2010/05/15(Sat) -
白い牡丹

和名に見る名は深見草に二十日草。
漢名で表されるのは花王、花神、富貴花。
鮮やか色、華やか色、気高き色のさまざまな牡丹
でもみんなまだ蕾、まだまだ宝珠の形をしている。
そんな中で一つだけ先駆けて花開いたのがこの白牡丹。
やわらかくもやわらかな花びらがふわりふわり。
木漏れ日が花びらの上を揺れる。
豊な白が一層白く麗しく輝く。

   飛ぶ胡蝶まぎれて失せし白牡丹 (杉風) 

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ゲッケイジュ(月桂樹・Bay laurel) ~木々の香~
- 2010/05/14(Fri) -
月桂樹

濃い艶やかな緑葉の中に淡黄色の花がある。
近づけば芳香が鼻に入り込む。
佳香を放って咲くのは月桂樹の花。
可愛い小さな花だ。

葉にも特有な香りがあり、以前は乾燥させて香味料としてカレーに入れたりもした。
最近はメニューにカレーはあがらない。
この頃は料理用にと葉を摘むこともなくなった。
庭歩きの途中、葉をちぎっては鼻で嗅いで楽しむ。

今朝も4℃近くと冷え込んでいる。
今年は神様のご機嫌を損ねたのか、いつまでも三つの季節が蛇行を繰り返す。
そろそろ夏へ一直線でいいと思うのだが。

   木々の香にむかひて歩む五月来ぬ (水原秋桜子) 

 月桂樹
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ツクバネウツギ(衝羽根空木)~春大名~
- 2010/05/13(Thu) -
ツクバネウツギ

季節がひと月も逆戻りしたような寒い朝である。
天気予報士はこの時期の強い冷え込みを「冬将軍」に倣って「春大名」と名づけていた。
将軍より位は下がるものの、それでも一国一城の主ほどの貫禄のある「寒さ」ということになろう。
その即妙な喩えがうまく、なるほどと思わず肯く。
今日は九十九夜、5月の半ばのこの頃に大きな遅霜の被害が出ることから「九十九夜の泣き霜」の言葉がある。
当分、野菜苗の植え付けは延ばさざるを得ない。
今年はなかなか畑仕事がスムーズに進まない。

衝羽根空木が咲く。
喇叭のように伸びた白い花が下向きに咲く。
花の中には橙の網目が広がる。
本来は山地の林間に育つもの
それらしく控えめな静けさが漂う。
植えてから二十数年も経つ。
私の生き様を長く見てきた木である。

ツバメが頭の上を駆け抜ける。
コジュケイの鳴き声が響く。

       山に鳥多くなりたる皐月かな (滝沢伊代次)

 ツクバネウツギ

ツクバネウツギ 
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ミツバツツジ(三葉躑躅)~鈍すれば~
- 2010/05/12(Wed) -
三つ葉つつじ

鮮やか色のこの花は三葉躑躅。
他の躑躅に先駆けて咲く。
よく見られる躑躅のように一面を同じ色で覆うほどに密集して咲くのではない。
枝は細く立ち上がってくねるように伸び、花の向きはそれぞれにしてややまばらである。
我が家の庭に仲間入りしてから数年が経つ5月の花である。

しかし、そう、しかし。
こうして私が眺めていたこの花はどうやら三葉躑躅ではないようなのだ。
確かに2株ともミツバツツジのタグが付いていたのを園芸店で購入して植えたのだった。
しかし、最近になり、三葉躑躅の一番の特徴は雄蕊が5本(あるいは6本)であるということを知る。
では雄蕊が10本もあるこの花、いったい何躑躅だろう。
葉はちゃんと3枚ずつ出ているのだが。
よく分からない。
難しいことはその道の人に任せよう。
この花は、私にとってこれまで三葉躑躅だったし、これからもそれでいいことにする。

鈍すればミツバツツジの散りかかる (金田咲子)

三ツ葉躑躅
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ブルーベリー(ラビットアイ・ブルーベリーrabbiteye blueberry)
- 2010/05/11(Tue) -
ブルーベリー

函館で桜が満開となり、大分では蛍が舞い、沖縄は梅雨入りだという。
ここに若葉青葉の広がるとき、違う季節が北と南にある。
いろいろな5月、いろいろな顔、いろいろな景色。

ブルーベリーが釣鐘状の白い花を房状に咲かせる。
鈴蘭やドウダンツツジに似た可愛い袋の花だ。
これはラビットアイ系のウッダードというブルーベリー。
ラビットアイというように熟して青黒くなる前の実は、うさぎの目のような色をする。

夏の日射しが強くなる頃、野良仕事の合間につまんで食べる。
そんな時は自分が子どもの顔に戻る。

   木々の香にむかひて歩む五月来ぬ (水原秋櫻子) 

  ブルーベリー

 ブルーベリー
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ライラック( lilac・lilas・紫丁香花)~美しきとき~
- 2010/05/10(Mon) -
 ライラック

    リラの花が 胸に咲く今宵  
    ほのかな 夢の香に
    あゝ思い出の あのささやき
    遠くはるかに 聞こえくるよ
                      (『リラの花咲く頃』より一番  作詞 寺尾智沙)
  
ライラックは淡紫色の花が房になってかたまり咲く。
フランス語ではリラ、日本での名はムラサキハシドイ(紫丁香花)。
白い花のハシドイ(丁香花)の仲間で、紫の花であることでその和名を持つ。
丁香の字が示すようにやわらかな芳香がある。
花言葉の〈初恋の味〉は春先に咲く淡く優しい色合いの花であることから。
私の畑の入り口に左右一対で迎える。

    日本語の美しきときリラの花 後藤夜半

  ライラック

ライラック
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シラネアオイ(白根葵)~山彦が聞こゆ~
- 2010/05/09(Sun) -
シラネアオイ

白根葵は日本固有の花。
それも1種1属1科の貴重種。
本来の生育環境は雪の多い林間やその縁辺など。
我が家では大きく張り出した李の木陰。
花は茎の先に一つ。
色は美しい淡紫。
おしとやかで品がいい。
喩えるなら古風な女性か。
母は着物姿が似合う人だった。
写真の母にも剪って見せることにしよう。

      白根葵咲けりといふよ山彦も (水原秋桜子)  

白根葵
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グミ(茱萸)~永遠の願いはやがて結ばん~
- 2010/05/08(Sat) -
茱萸

      『小さいグミの木』      ロシア民謡、日本語詞:楽団カチューシャ

  なぜか揺れる 細きグミよ
  かしらうなだれ 思いこめて
  かしらうなだれ 思いこめて

  広き川の 岸をへだて
  高き樫の木 ひとり立てり
  高き樫の木 ひとり立てり

  グミの想い 樫に伝えん
  わが身ふるわせ 語るときに
  わが身ふるわせ 語るときに

  細き枝を 君によせて
  日ごとささやく 若葉のこえ
  日ごとささやく 若葉のこえ

  グミの心 とどかざれど
  永遠の願いは やがて結ばん
  永遠の願いは やがて結ばん


象牙色の茱萸の花は枝に垂れるように咲く。
その筒状の花の中を覗きたくなって頸を傾けて見上げる。
にょろりと曲がって伸びる可愛い蕊がある。
風が吹く。
花は振り子のように揺れる。
この花が赤い実となる不思議。

       転生のなぞを解いてる茱萸の木よ (斎藤慎爾)

 茱萸
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タツタソウ(竜田草・糸巻草) ~控えめに慎ましやかに~
- 2010/05/07(Fri) -
 立田草

ある時   山村暮鳥

まつ黒い
春の土から
かげろふのやうに
わいたんだらう
とつても大きな静けさである
それだから
だれをみてもにこにこと

そしてまた寂しいのである
                 (室生犀星編『山村暮鳥詩集』より「月夜の牡丹」から)

竜田草は淡い青紫の花。
蓮の葉に似た小さな葉が並び立つ中に一輪二輪と隠れるように咲く。
「竜田」の名から、奈良斑鳩あたりに自生するのかと思っていたが、明治の渡来だという。
控えめで慎ましやかな花である。
ただ密やかにひっそりとして咲くこの花には「遠慮」の花言葉が寄せられる。

   慮る想いを綴るか竜田草 (文)

タツタソウ
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イカリソウ(錨草・碇草) ~忍ぶ想いは星に~
- 2010/05/06(Thu) -
錨草 

木漏れ日の中にある小さな花は錨草。
その薄赤紫の色は枯葉に紛れて目立たない。
花茎の先に集まる花は地面に着くほどまでに垂れ下がる。
変わった形の花の一つひとつは確かに船の錨にも見える。
じっと冬を耐え来て夏立つ頃に咲く。
人里離れた山地の林下を故郷とする静かな野の花。
こうして木陰でひっそりと佇む姿がよく似合う。
それ故に忍ぶが如くに繊細さが漂う。
風が渡り、枝葉から漏れる光が錨草の上で揺れる。

 碇草生まれかはりて星になれ (鷹羽狩行)

錨草
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リンゴ(富士と王林とアルプス乙女) ~林檎の花は初恋色~
- 2010/05/05(Wed) -
王林

「富士」と「王林」「アルプス乙女」。
家の林檎に花が咲く。

丸い蕾は濃い紅(べに)の今様(いまよう)色。
綻べば淡く移って朱鷺(とき)色に。
蕊が顔を見せると薄紅の粗染(あらぞめ)と。

少女を思わせる林檎の花。
無垢で純な乙女色。
淡い恥じらい初恋色。

私にも清く幼い時もあった。

  夢のいろのうす紅や花りんご (及川 貞) 

アルプス乙女


富士林檎の花
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ハナカドウ(花海棠)~或る時~
- 2010/05/04(Tue) -
はなかいどう

    或る時   山村暮鳥

(略)
さいてゐる
花をみよ
かうしてゐられぬと思へ

花をみること
それもまた
一つの仕事である
それの大きな仕事であることが解ったら
花をみてその一生とするもよかろう

花はおそろしい
ほんたうにおそろしい
なんという眞劔さであろう
だが、またそれは
あまりの自(おのずか)らさである
                       (室生犀星編『山村暮鳥詩集』から「月夜の牡丹」より)

私は毎日花を見る。
花を見る私には一生の仕事は別にある。
見る私に花は教える。
おそろしさと眞劔さと自らさとを。
おだやかさと誠実さと頓らさとを。
無我愛と無心行。

花を見ているとしなくてはならないことが見えてくる。

欅の下の花海棠を見る。

          海棠に乙女の朝の素顔立つ (赤尾兜子)
 
ハナカイドウ

 花海棠
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サクラ(鬱金桜)~八十八夜の黄桜~
- 2010/05/03(Mon) -
鬱金桜

昨日は八十八夜。
鍬を持つ私の耳にラジオから茶摘みの話題が届く。
お茶好きの私にとっては、そんな便りを聞くのは嬉しい。
おりしも、小さな袋に入った新茶が郵便で運ばれてきた。
早速、味わう。

「役場からお知らせします。」
「明日は凍霜害の恐れがありますので、農作物の管理には十分ご注意ください。」
ここ数日、午後4時頃になると、このような放送が流れる。
町や農業団体が遅霜への注意を喚起する。
そばの梨畑では凍霜ファンが毎日のように廻っている。
例年にない寒さのせいで今年は野菜の成長も遅い。
「八十八夜の別れ霜」という。
そろそろ、朝も寒さから解き放たれたい。

鬱金桜が我が家の桜のトリをつとめる。
黄緑色の八重の桜だ。
ソメイヨシノとはまた違った趣がある。
なによりも、その色がいい。

青を背に八十八夜の黄桜かな(文)

うこんざくら

ウコンザクラ

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サクラ(普賢象)~人は娯月、私は吾月~
- 2010/05/02(Sun) -
普賢象

五月は穏やかで気持ちのいいスタートとなった。
これまでの不順の寒さに耐えていた草木が、一気にその成長を促すかのように生き生きと見える。
外にいるだけで気持ちがいい。

「普賢象」の名を持つ八重桜が川にせり出すように枝を広げる。
花芯が象の鼻のように長く伸びる。
やわらかで、ふんわりとしたサクラである。
これは剪って活けるにはなかなか難しい。
花自体が重くて、ほとんどが下を向いてしまうからだ。
こうしてそのままを眺めるのが一番いい。

人は娯しむ5月。
私には節目の月。
自分を高める5月としよう。

       八重に八重の重なりてゆらりゆらりの桜かな (文)

フケンゾウ

ふけんぞう

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ハナモモ(白八重花桃)~笑う季節~
- 2010/05/01(Sat) -
 花桃

八重の花桃が叢がる。
こういうのをびっしりというのだろう。
溢れた花が枝を覆い隠す。
枝はその重みでしなる。
枝の中で花の押し合いへし合い。
花達の言葉が聞こえてきそうだ。

観る私は頬がゆるむ。

5月、山が笑う。
木も花も草も笑う。
自然に人も笑う。

        故郷やどちらを見ても山笑ふ (正岡子規)

花桃

  花桃
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