アジサイ・ライムライト(Hydrangea Limelight)
- 2009/07/31(Fri) -
ライムライト

ライムライトが咲き出した。
アジサイで一番最後に登場する。
淡い裏葉色の花色は日を重ねて徐々に白を強くしていく。
今年の花房が小さいのは、剪定をしなかったからである。
いつもの半分にも満たないが、それはそれで愛らしいとしよう。

雨続きの日に終止符が打たれ、久しぶりに夏らしい太陽が顔を出す。
窓の外では蝉たちが待っていたとばかりに、ボリュームをいっぱいに上げる。
これでようやくこの季節といったところだが、7月も今日で終わりである。

蝉の来て胸に留まるや七月尽(しちがつじん) (文)
 
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カサブランカ(Casa Blanca)
- 2009/07/30(Thu) -
カサブランカと雨蛙

登山は中止である。
南アルプスの仙丈ヶ岳(3033m)に登る予定だった。
これだけ雨が降り続くのではいたしかたない。

家に戻り、傘を差して花などを眺めながら庭を歩く。
雨に濡れて真っ白なカサブランカが咲いている。
山百合から作出されたというだけに、やはり香りは強い。
大きい花は雨を含み下を向いている。
「ん?」、カサブランカを見る私を見る目がある。
雨蛙が花びらの一つに乗ってこちらを向いていたのだ。
目をそばに寄せると、なんともいい顔をしている。
とても居心地良さそうに、じっとして動かない。
いい場所を見つけたものだと、この絵に私も嬉しくなった。

  百合の香を深く吸ふさへいのちかな (村越化石)
 
カサブランカの上の雨蛙
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ヤマユリ(山百合・Japan lily) 
- 2009/07/29(Wed) -
ヤマユリ

大きなヤマユリから芳香が広がる。
6枚の白い花びらには赤い斑が不規則に落とされる。
反り返る花びらの中央に引かれる淡黄色の条。
赤褐色の雄蘂が風にりんりんと揺れる。
神秘的で美しい。
ほかの百合も美しいが山百合の美しさは際立つ。
雨の降る中で咲いたばかりである。

偽りのなき香を放ち山の百合 (飯田龍太)
 
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ツユクサ(露草・月草) ~夏の七草~
- 2009/07/28(Tue) -
つゆくさ

いつものようにラジオを聞いていた昨日の朝のことである。
アンカーが「夏の七草」について話していた。
少年の頃の夏研究として「夏の七草」を調べ、押し花にしたのだと。
アカザ、イノコズチ、ヒユ、シロツメクサ、ツユクサ…。
あと二つは聞き落とした。
ここで初めて、私は「夏の七草」というものがあることを知った。

ツユクサは2cmほどの青い花である。
その属は英名でDayflowerの名を持つという。
「一日だけの花」というのだろうか、儚い花だ。
6本の雄蘂のうち、2本だけが長くて花粉を持つ。変わっている。
こんな可愛い花に「若者達の愛の言い伝え」があることを知ったのは2年ほど前の夏のことである。

  月草や澄みきる空を花の色 (蓼太)
 
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オリヅルラン(折鶴蘭)
- 2009/07/27(Mon) -
オリズルラン

一般的にオリヅルランは葉が主役の座である。
白い色が内斑となったりあるいは外斑となって緑の葉にアクセントを付ける。
それが涼やかで美しく、人に愛でられるのだ。
今、葉間から伸びた花茎の先の方に、数輪の白い花が咲いている。
それは小さくて目立たないが、目を凝らしてみるととても可愛い6弁の花だ。
1センチを少し超えるほどの花からは、これも可愛い黄色い蕊が突き出る。
冬は部屋の中に入れ、春になって外に出すことを、もう何年も繰り返してきた花である。
長い付き合いだけに愛着を感じる。

そんなオリヅルランを眺めていると、トンボが2匹私の頭の上を飛んでいった。

いさぎよし折鶴のごと朱夏の花 (文)

折り鶴蘭
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ルドベキアタカオ ~黄花に瑠璃小灰蝶~
- 2009/07/26(Sun) -
ルドベキアタカオ

ルドベキアタカオが、大きな株の茎頂にたくさんの黄花を咲かせている。
花の径は3cm~4cmほど、夏の日射しを受けるように上に向いて咲く。
縁取る黄色の舌状花と焦げ茶色の筒状花とのコントラストが映える姿は小さな向日葵にも似る。
株から離れその周辺にも幾つか咲くのがあるが、それはこぼれ種から今年生まれたものだ。
茎葉が緑濃く繁るため、周りの木々に溶け込み、野生の花のような雰囲気がある。
黄色はやはり昆虫を惹きつける色なのだろう、連なる株の上に蝶や蜂などがよくやって来ては花の上を移り歩く。
ルリシジミ(瑠璃小灰蝶)が盛んに長い触角を花央に突き挿していた。

今日は久しぶりの草刈り、鎌を使ってその株の下などを小一時間掛けてきれいにした。
 
   蘂に置く蘂よりほそき蝶の足 (粟津松彩子)

るどべきあ株

るどべきあたかおと蝶


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アブチロン(Abutilon)
- 2009/07/25(Sat) -
アブチロン

アブチロンは木槿や芙蓉、ハイビスカスと同じ仲間のアオイ科。
ナイロビとオレンジ、サテンピンクが3本並んで咲いている。
全ての顔は下垂し、地面に向かって咲く。
形容される「天使の鈴のような可愛い花姿」を見るには、頭を傾けて見上げるようにしなくてはならない。
小さな木にぶら下げた真っ赤な風鈴のようだ。

「大暑」も過ぎた。ますますこれから暑くなる。
やるべきことがたくさん待っている。
夏に負けないようにしよう。

そういえば芥川龍之介が「唯ぼんやりした不安」との理由を残し、自ら命を絶ったのは1927年7月24日。
彼35歳、暑い夏のことである。

  兎も片耳垂るる大暑かな (芥川龍之介)

アブチロンサテンピンク


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ハツユキソウ(初雪草「氷河」・ユーフォルビア)
- 2009/07/24(Fri) -
初雪草

一頃より日の出が遅くなったのを実感する。
勤め前に畑仕事をする私にとっては朝の時間は貴重なのだが…。
草カキをし、キュウリや苦瓜を誘引し、トマトの茎を結ぶ。
李のてっぺんで早くも鵙が鳴いている。

花々に南アルプスを越えたばかりの淡いオレンジかった朝陽が射す。
やわらかな緑の葉に白い覆輪を持つ涼しげな立ち姿を見せるのは初雪草。
英名でもSnow-on-the-mountainとあり、その白が人の目を引くのはどの国でも同じのようだ。
花はといえば、ごく小さく葉に紛れて目立たない。
しかも本来の花はその中にさらに小さく見える黄の色だという。
どうやらこの植物、花より葉の美しさを進化させたのかも知れない。
だいぶ前に植えた記憶はあるのだが、それ以来毎年のようにあちこちに増えている。
一年草だというが、こぼれ種で増えるのだろうか。
夏色の鮮やかな花が多い中、「涼」を運ぶ花である。

涼しさに心の中の言はれけり (細見綾子)

ユーホルビア

ハツユキソウ

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グラジオラス(Gladiolus・sword lily)
- 2009/07/23(Thu) -
赤グラジオラス

グラジオラスは和名で唐菖蒲(とうしょうぶ)、あるいは和蘭(オランダ)あやめというのだとある。
南アフリカ原産のアヤメ科の植物で、現地では球根を食用にすることがあると書にはあった。
球根は見るからに硬そうだが、料理するとどんな味になるのだろう。ユリネのような感じだろうか。
 
これまでの植えっぱなしのものに加え、今年はさらに30近くを植えた。
そのうちの三分の一ほどが今咲いている。色も取り取りである。
雨が降ると、株全体が倒れ込むようになり、せっかくの花が土を被ったりして可哀想になる。
支柱をしてやれば済むことだが、倒れる姿もその花なのだと、あるがままに。
赤と白と薄いオレンジ色のを剪り取って部屋に入れた。
花数があり、それぞれ一つひとつの花も大きくて丈もあるので、豪華な感じになる。
水に挿しても長い間元気でいるのも嬉しい。

昨日11時、仕事の手を休めて空を見上げた。
太陽が三日月になっていた。大人がみんな子どもになっていた。

グラジオラス揺れておのゝゝ席につく (下田実花)
 
白グラジオラス

雨のグラジオラス
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キキョウ(白桔梗) ~皆既月食の日に~
- 2009/07/22(Wed) -
白キキョウ

桔梗が咲いてから遅れること10日ほどして、白桔梗も咲き出した。
矮性のため、青紫の桔梗に取り囲まれて見下ろされるようにある。
さても、なんともすがすがしく形の整った花だろう。
その花容を喩えるなら17、18の初々しい乙女か。
ふと、遠くの島の優しい童歌を思いだした。
月の美し(さ)や 十日三日
娘美し(さ)や 十七つ

私は白桔梗をじっと見る。

  白桔梗男も乙女になりにけり (文)

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ノウゼンカズラ(凌霄花・trumpet‐creeper) 
- 2009/07/21(Tue) -
ノウゼンカズラ

ノウゼンカズラは橙色の花が横を向いて咲く。
英名でtrumpet‐creeperとあるようにラッパの形をしている。
その花冠は先端が五裂して開き、中には羽を広げたような可愛い蕊がある。
垂れ下がる円錐花序は上の方から下に向かって咲いていく。
次のが咲けば先に咲いたのは色も形もそのままにその花冠を落としていく。
上が賑やかな花にあふれるのと同じように、地面にもその花が広がる。
2階の屋根を越えるほどに高く大きくなる木でありながら、自立性はない。
ノウゼンカズラは他のものに付着根を出して巻き付けて伸びる他力に頼る蔓性落葉樹である。

凌霄や花を垂れたる蔓の花 (籾山梓月)

凌霄花

のうぜんかずら


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ネムノキ(合歓木・silk tree)
- 2009/07/20(Mon) -
ねむのき

10㍍近くになる大きな合歓の木を今年は伐ろうかと思っていた。
バラなどの花に日陰を作ることと、毎年のように発生するカイガラムシに辟易していたからである。
しかしこうしてふんわりとした優しく美しい花が木いっぱいにあるのを見るとためらいが出てくる。
もう少し待って半分ほどの高さにするか、庭屋さんと相談することとしよう。

ネムノキの名は暗くなると葉を閉じて眠ったように見えるためとある。
そうなのかと思って、玄関の外に置いてある鉢植えのを夜に見る事にした。
広がっていた羽状の葉は確かに暗闇の中で閉じていた。
暗くなってから葉が閉じるのには何らかの働きがあるのだろう。
ネムに合歓の字をあてる意味を思いつつ、夜の花姿にもちょっとした物語を感じたりする。

夕合歓の花はおぼろに葉は閉じて (文)

合歓木

夜のネムノキ

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ハギ(江戸絞り) ~白と牡丹色の染め模様~
- 2009/07/19(Sun) -
江戸絞り

初蝉の頃にハギの江戸絞りも咲きだした。
萩は草冠に秋と書く。つまりは秋を代表する花のイメージだが、今は真夏。
強い光を浴びて、向日葵やハイビスカスや合歓の木と時を同じくして咲いている。
萩には風が少し涼しくなった頃のやわらかい日射しが似合うと思うのだが。
萩と太陽か、はたまた萩と芒、萩と虫の音…私の頭の中で時々季節感が混乱する。
江戸絞りは他の萩より少し小振りである。
絞り染めの模様にも似た白と牡丹色の花弁が可愛い。

この萩のやさしさやいつも立ちどまる (高浜虚子)

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イトバハルシャギク(糸葉春車菊)
- 2009/07/18(Sat) -
イトバハシャギク

イトバハルシャギクは8枚の舌状花を持ち、その形は一見、コスモスに似ている。
コスモスほど丈が高くならないこと、そして叢生であることでその違いはすぐ分かる。
一株の径は1㍍近くになり、それが黄色い花で埋め尽くされている。
この鮮やかな夏色の花が、次から次と咲き続け、蜂たちを誘う。
名に糸葉を冠するように、オカヒジキにも似た細い葉が特徴である。
とても丈夫で、移植や株分けも容易なため、至る所に分けて植えてある。
ここにあるのは実を付けた梨の木の下にあるもの。
木の根元を取り囲むように咲いている。

くさぐさの色目や夏のおもむきに (上川井梨葉)

イトバハルシャギクと蜂



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ヒメシャジン(姫沙参) ~たおやかに~
- 2009/07/17(Fri) -
ヒメシャジン

ヒメシャジンは嫋やかである。
薄い花さえをも支えきれないほどに、細い茎は湾曲する。
僅かな風にも株は揺れる。
桔梗に似た白い花はその顔を地面に向けて咲く。
繊細で無口な少女のようである。

  梅雨明けや胸先過ぐるものの影 (吉田鴻司)

姫沙参
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オミナエシ(女郎花) ~蜂も遊ぶ~
- 2009/07/16(Thu) -
おみなえしと蜂

7月に入ってすぐから女郎花が咲いている。
いつもよりだいぶ早い。
花は直立した茎の先端に、たくさん寄り集まって咲く。
黄色い花の大きさはわずか数ミリ。
その5裂した花冠の中に小さな雄蘂が4本のぞく。
離れて見る姿もいいが、またこうして目を近づけて見る小さな花も可愛い。
そんな女郎花を蜂も好きらしい。

おみなへしといへばこころやさしくなる (川崎展宏)  


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ヤブカンゾウ(藪甘草・ double tawny day‐lily)
- 2009/07/15(Wed) -
ヤブカンゾウ

ヤブカンゾウは英名でdouble tawny day‐lilyとあるように、八重咲きの一日花である。
赤橙色(tawny)した、ユリ科特有のラッパ状の花が、朝方に咲き、夕方にはそれを捻るように窄める。
性質はかなり強健で、匍匐茎が地下で伸び、庭の至る所に野生化している。
美しい花だが、他を脅かすほどのその強さ故、毎年かなりの株を引き抜くことになる。
若芽や蕾、それに花は甘味とぬめりがあって、美味だとあるが私は食べたことはない。

朝早くから蝉の声が賑やかい。
私は「桃」を収穫した。まだ堅めであるが、それなりの甘さだった。

甘草や昨日の花の枯れ添へる (松本たかし)
 
もも
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ムクゲ(木槿・Syrian hibiscus)
- 2009/07/14(Tue) -
白木槿

木槿の花粉はたっぷりである。
蜂がその奥に入るなどしたら、脚や尻はたちまち白い粉まみれになる。
ちょうど運動会のパン探し競争で小麦粉の箱に突っ込んだ顔を思い浮かべるといい。
木槿の花を飛び移って遊ぶそんな蜂の姿が朝の庭にある。
真っ白な花びらの奥には鮮やかな赤い色の尖塔模様が放射状に広がる。

木槿は朝に開いて夕にしぼむ5弁の一日花。
毎日次々に咲く花と同じく、木の下には咲いた分だけの花びらを閉じた姿が広がる。
生と死を同時に見せる一日だけの美しさと儚さ。

 あはれさに折りて持ちけり花木槿 (樗良)
 
ムクゲと蜂

木槿
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ギボウシ(擬宝珠)
- 2009/07/13(Mon) -
擬宝珠

ギボウシが茎を伸ばす。
花がその下の方から咲いていく。
咲くにつれ、先に咲いた下のはしぼんでいく。
ラッパ状の五弁の花びらは淡い紫の筋を持つ。
花冠から突き出た白い雌蕊と濃紺の雌蕊は鈎のようにその先端を内側に戻す。
そんなギボウシが庭いっぱいにある。
その株は100近くあるかもしれない。
そこはさしずめ、ギボウシの小径。

擬宝珠の行く手遮るを手でよけて (文)

ギボウシ

庭の擬宝珠
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チェリーセージ
- 2009/07/12(Sun) -
ちぇりーせーじ

チェリーセージホットリップスはなんとも可愛い花である。
多くは二つずつが寄り添うように咲く。
私には仲良し小好しのお嬢さんがお二人一緒というように見える。
スカート広げてステップ踏むような、そんなことを思い浮かべたりする。
ホットリップスの名は唇形花の下の赤い色を唇に見たのだろうか。
花径は2㎝ほど、数が吹く度ゆらゆら揺れて、とにかく可愛い。
こうして秋半ばまで、細い枝にたくさんの花が庭を飾る。
花言葉は「燃ゆる思い」だとか…。

蚊に刺され、畑の仕事を終える頃、蜩の初鳴きを聞く。

突として蜩の鳴き出でたりな (高浜虚子)
 
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ヒペリカム
- 2009/07/11(Sat) -
ヒペリカム

ヒペリカムの黄色い花と赤い実が並んである。
花は五弁。たくさんの長い蕊が花を飛び出す。
やがて花びらは落ちて、艶やかな赤い実となる。
今年の花咲きは少し早かったのか、この時期にもう終わりになろうとしている。
昨年は7月いっぱい咲いていた気がする。
晴れた日にはその黄色と赤のコンビネーションが遠目でも目立つ。
そしてまた、雨に濡れた姿も味わい深い。
派手やかさはないが好きな花である。
切り花にすると花は程なく散ってしまうが、そのまま赤い実が長く楽しめるのもいい。

梅雨深し花の移ろい傘の中 (文)

ひぺりかむ

 
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セイヨウノコギリソウ(西洋鋸草・sneezewort)
- 2009/07/10(Fri) -
セイヨウノコギリソウ

西洋鋸草の花はわずか3~4㎜。
そんな小さな花が密集して茎頂に散房花序を作る。
五弁の花びらの中には、さらに小さな黄色い蕊も確かめられる。
これは何年も前に種を蒔いたものだが、しっかり根を下ろして広がり、毎夏このように花を見せてくれる。
しかし、他を脅かすほどのその強健な繁殖力から、かなりの株が私に抜かれてしまうはめになる。
葉は鋸歯状で、名の鋸草はそこから来ているのだろう。
英名ではsneezewortとある。直訳すれば「くしゃみ草」ということか。名付けの違いも面白い。
ところで、こんな小さい花にも蜜があるのか、時折、虫が留まっているのを見つけたりする。
この頭と尻が濃赤色した、羽に艶のある黒い夏の虫は何だろう。

夏虫をなにかいひけむこころからわれも思ひに燃えぬべらなり (凡河内躬恒)「古今和歌集巻十二」
 
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コオニユリ(小鬼百合) ~雨に打たれる花々~
- 2009/07/09(Thu) -
こおにゆり

夜半の雨音に目が覚めた。

花たちも雨に濡れる。
小鬼百合が咲き出した。
まだ蕾の方が多い。
咲くにつれ花びらの先端が徐々に反り返っていく。
鬼百合と小鬼百合には零余子ができるかできないかで区別が付く。
ところで「鬼」の名が付くのはなぜだろう。
その名づけられた由来なども知りたい。
このコオニユリは「食用百合」として購入したものを食べずに植えたものだ。
それが増えて今年はいくつかの場所に分球した。
これはその一つで、梨の木の下にある。

今日は天竜川を挟んで市内が一望できる小高い山に登る。
往復20キロほどの行程になる。天気予報は一日雨だという。

雨粒の落ちる落ちない小鬼百合 (文)

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リアトリス(百合薊・麒麟菊) ~熊蜂も遊ぶ~
- 2009/07/08(Wed) -
リアトリス

リアトリスは林立するようにまっすぐに茎が伸びる。
それを細かい毛のような紫紅色の花が覆う。
花は上部の先端から咲き始め、順次下へ向かって開花していく。
百合薊の和名は薊のように花が密集して咲くことや百合のような細い葉をしていることにもとづくのだろう。
同じく別名の麒麟菊もその長い立ち姿をキリンに見立てて名づけられたのと容易に想像が付く。
この一風変わったリアトリスは丈夫で手間もかからず、植えっぱなしで毎年花を咲かせる。
そんな花の林に蝶や蜂もよく散歩に来る。
今日やってきて盛んに蜜を吸ってのはどうやらクマバチ(熊蜂)のようだ。
体を捻ったり逆さにしたりと態勢を変えながら、随分長い間、口を花に付けている。
その動きが少しユーモラスで、可愛く楽しい。
雨がやんだちょっとした間、ひとときの庭の光景である。

  百合薊熊蜂の口が右左 (文)
 
リアトリスと蜂
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ナンテン(南天の花) ~実るかたちをして~
- 2009/07/07(Tue) -
ナンテンの花

ナンテンに白い色がびっしりとある。
それが花であることを知るには、よほど目を近づる必要がある。
6枚の白い花弁に6本の黄色いおしべ、そして丸い膨らみを持つ1本のめしべ。
あの房状になる赤実の前身だ。

ある形になる前のある形。
ある仕事をまとめる前の準備。
何事も一気にとはいかない。
目に見えるものにする前の目には映らない積み重ね。
実る形のための確かな時間。

白い小花は時を経て人に求められる赤い実となる。

  花南天実るかたちをして重し (長谷川かな女)

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ホオズキ(鬼灯) ~ほおずきの歌~
- 2009/07/06(Mon) -
ホウズキの花

早い朝のラジオからは時折懐かしい歌が流れる。
さだまさしの「ほうずき」がかかった。悲しい歌である。
若い女性アナウンサーは「さださんてグループで歌っていたんですか。声が若いですね。」と話す。
「グレープ」時代の澄んだ高い声のさだのことを知らなかったようである。
相方の男性アナは「いい歌ですね。『精霊流し』にも通じるものがあります。」と説いていた。

いくつかの水たまりを残して
梅雨が駆け抜けてしまえば
しめった風の背中越しに
きみの好きな夏が来ます

歌を聞いて庭に出た。
ほうずきの白い花は一つだけ残っていた。
みんな青々とした袋になっていた。
まるで紙風船。


   鬼灯の一つの花のこぼれたる (富安風生)

ほうずき
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ノリウツギ(糊空木・さびた)
- 2009/07/04(Sat) -
ノリウツギ

ノリウツギもアジサイの1種である。
円錐形の花序に多くの白い花をつける。
空木(うつぎ)とあるように空洞の茎はパイプになると聞く。
湖空木の和名は幹の内皮から和紙の糊料を作ることに因むとのこと。
北海道では「さびた」と呼ぶという。
華やかさはないが、繊細で上品な印象の花である。
控えめな白一色の花もまたいい。

水より風澄む日なり花サビタ (上村占魚)
 
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アジサイ(アナベル)
- 2009/07/03(Fri) -
あなべるあじさい

紫陽花は開花してから少しずつその色を変えていく。
七変化あるいは八仙花などの異名はそこに由来する。
咲きはじめの白から淡紅,紅,紫紅に、あるいは白から浅緑、そして青、青紫へと。
そんな色移りが、紫陽花の魅力の一つと言えよう。
しかし、このアナベルは少し違う。
蕾は緑、そして開いて薄緑に、満開では真っ白になる。
他の紫陽花が徐々に色を濃くしていくのと全く逆の道を辿る。
咲ききった時はまるで白い手鞠のようである。

  緑より出(いで)しの白き手毬花(てまりばな) (文)

あなべるアジサイ
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キキョウ(桔梗・balloon‐flower)
- 2009/07/02(Thu) -
桔梗

続いた雨がやむ。
桔梗が濡れている。
花びらを流れた雨粒が一つ二つと残る。
雨を乗せた花びらもまた風情があっていい。
いい色だ。これを桔梗色という。
先端が反り返った五弁の花びらに五本の雌蕊に一本の雄蘂。
閉じた蕾は紙風船を思わせる。英名で balloon‐flower というのはそこからくる。
朝鮮民謡に『トラジ』と言うのがあると聞く。
トラジとは桔梗のことで、恋を夢見る純情な田舎の乙女の歌だと知る。
なるほどにその優しい花容は素朴で可憐な乙女の姿にも見えてくる。

きりきりしやんとしてさく桔梗かな (一茶)
 
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ハナショウブ(花菖蒲・Japanese iris)
- 2009/07/01(Wed) -
ハナショウブ

花菖蒲の多くは池の畔や水辺にある。
生育環境としてそのような場所が適している花である。
安藤広重の浮世絵「 名所江戸百景『堀切の花菖蒲』」にも池水が描かれている。
このようにイメージとして花菖蒲と水は対になって思い浮かぶのが通常である。
しかし我が家のはバラやダリアなど他の花々と一緒の庭にある。
周りに水がなく、気の毒な身の置き所である。
この白い花菖蒲には「高嶺雪」の名が付いている。
基部に花菖蒲特有の黄色いマークがある以外はただただ白い。
だらりと垂れ下がる大きい花被片は繊細そのものだ。
英名でJapanese irisとあるように和の情趣あふれる花である。

今日から7月、もう今年も折り返しになるのか。

    はなびらの垂れて静かや花菖蒲 (高浜虚子)

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