シャラ(夏椿・沙羅)
- 2008/06/30(Mon) -
シャラ


白ツバキに似た五弁のシャラ、去年休んで今年咲く。
花びらには少しのフリル、中には密集した黄色いおしべ。
厚みのある椿とはその味わいを異にして奥ゆかしい美しさがある。
その形と色を変えることなく花が落ちる。
多くのおしべもつけたままにして、中心が抜けたように穴があく。
花のあった後を見ると一つのめしべだけがぽつんと木に残る。
実に変わるべく、花びらやおしべとの別離、哀れ。

葉の色に白は淋しき夏椿 (高木晴子)

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花菖蒲(Japanese iris 高嶺雪)
- 2008/06/29(Sun) -
花菖蒲高嶺雪


全国的に雨のようである。
庭の花菖蒲も雨に濡れている。
高嶺雪という名を持つ大輪の白い花だ。
内花被、外花被ともに大きい6英咲きである。
芯にわずかに黄色味を残し、白の中に優しいアクセントを付ける。
雨を受けて花被が重そうに垂れ下がる。
花菖蒲の濡れ姿も趣がある。

はなびらの垂れて静かや花菖蒲 (高浜虚子)

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百合(オリエンタルリリー)
- 2008/06/28(Sat) -
オリエンタルリリー


百合の蘂(しべ)みなりんりんとふるひけり (川端茅舎)

百合の咲く季節となった。
先日、2時間ほどかけて山道を歩いた。道沿いに薄いピンクの笹百合が咲いていた。
林の中に似つかわしい清楚な立ち姿である。長野県では絶滅に瀕すと聞いていただけに、その出会いは嬉しかった。

庭にも色々な百合が顔を見せている。
頂部に一輪咲きのものから、多数群れ咲くものまで色も大きさも様々である。
今年はそこにヤマユリも加わった。つぼみを付けている。楽しみだ。
私の百合の原点はテッポウユリである。その白い花が一面の野原に広がる。脳裏に焼き付く原風景である。

筑波嶺のさ百合の花の夜床にも愛(かな)しけ妹ぞ昼も愛しけ (万葉集 四三六九)
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ナツロウバイ(夏臘梅)
- 2008/06/27(Fri) -
ナツロウバイ


雨に濡れ、大きな葉に隠れるように下向きに咲く花はナツロウバイ、わずかに薄桃色を帯びる。
隣地との境の水しぶきを浴びる川沿いで、栗と白木蓮に囲まれるようにひっそりと佇む。
そこは石が多く日当たりもさほど良くない場所であるが、それにもかかわらずこうして生育を続け花を咲かせる。
英名でChinese sweet shrubとあるように原産は中国、春に咲く黄色い艶やかなロウバイの仲間で、芳しい香りがする。
一日二日の間を置いてまた雨が降り出した。
しばらくは雨との付き合いが続きそうである。

ありとあらゆるもの梅雨降る音の中 (長谷川素逝)
 

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アジサイ(ヤマアジサイクレナイ)
- 2008/06/26(Thu) -
アジサイ紅


ヤマアジサイ紅は今から30年程前に当地、伊那谷の山地で地元の人によって発見された。
本来は山中の木漏れ日の中で育つものである故に、自然の味わいをそのままに残す。
一般的な紫陽花に比べ花も葉もきわめて小さく、野趣に富む清楚な花である。
小さな可愛い装飾花は3枚、三菱にも似る
咲き始めは白く、徐々にピンクに色を変えそして最後は全体が真っ赤に染まっていく。
色が少しずつ濃く染まって表情を変える、そんな色移りが日々楽しめる。
梅雨の曇り空の下にその花姿は似合う。

紫陽花やはなだにかはるきのふけふ (正岡子規)
 
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クチナシ(梔子)
- 2008/06/25(Wed) -
クチナシ


  口なしの花はや文の褪せるごと (中村草田男)

梔子のつぼみが膨らみはじめていたのは知っていた。
しかし、続く雨でその近くに顔を近づけることができずにいた。
今日は梅雨の晴れ間、側によるといくつも花開いているではないか。
雨では気づかなかった香りも、今日はその甘さが鼻まで届く。
夏は色鮮やかな花が多いように思っていたが、このように白い花も多いことに気づく。
 
書を紐解くと、「花は、花飾や香水とし,三杯酢にして食べたり、乾かして茶の香りをつけ、実は古来、黄色染料とされ
布をクチナシ染とし,無毒なので栗飯などに入れたり、きんとん、たくあん、クワイを染める」とある。 (福岡 誠行)
古来より染めの材料としてあったことを知る。
愛しい人の心に私の想いがしっかり染まって欲しいと願った恋歌だろうか、平安人の歌にも詠まれる花である。

  みみなしの山のくちなし得てしかな思ひの色のしたぞめにせむ 《古今和歌集》巻十九

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ヒメシャラ(姫沙羅)
- 2008/06/24(Tue) -
姫シャラ

梅雨らしい日が続く。
時折、屋根を激しくたたきつける程に急に降ったりする。
前線と寒気による不安定な気象で、花々もそろそろ日射しが欲しいところだろう。
傘を差して庭に出ると、すべてのものが雨を纏って顔を地に傾ける。
花びらも傷み、形を崩す。
風雨にさらされてあるがままに身を任す。

ヒメシャラの白い花が一つ二つと咲き出した。
一重の5弁の花、シャラの花よりやや小さめだ。
雨に濡れて淋しげな表情を見せる。
姫沙羅、漢字で書けばまたその名にも風情を見る。


肌さやめくもの静けさの梅雨心 (鹿野依風)
 
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シュンギク(春菊)
- 2008/06/23(Mon) -
春菊


二日にわたって東京からモデルを呼んでの写生会が終わる。
毎年恒例の事だが、主催者として4月からの準備等で結構気疲れする。
ともあれ無事終わり、次は7月下旬の作品研究会と8月の彫塑講習会の準備にとりかかる。
このところ本業以外のこうした仕事が続く。しかしこれも自分磨きの一つと考えればいい。
自分の疲労感は参加者の喜びの顔で癒してもらう。

花心の黄色から白のグラデーションとなって咲いているのはシュンギク。
そう、野菜の春菊である。食べるのが追いつかず、そのまま成長を続けて今は花の盛りとなっている。
この素朴で楚々とした花が畝いっぱいに溢れ、風に揺れて蝶を誘っている。
多くは花を見ずに終わる野菜も、それが花を咲かせると意外に美しく、愛らしいものがある。
この花を小さな一輪差しに挿すのもいい。

春菊の大きな花は黄が褪(さ)めし (高野素十)

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バラ ~ジョン・エフ・ケネディ~
- 2008/06/22(Sun) -
ジョンエフケネディ


ヒラリーとオバマの戦いは決着が付いた。
最新号の週刊朝日を開くと、星条旗に向かうオバマの後ろ姿がトップグラビアを飾る。
その見出しは“黒いケネディ(Black Kennedy)”、その人気ぶりをJ・F・Kに喩えてのことだ。
次のページにはケネディ元大統領の長女キャロラインさんと並んで聴衆に手を振るオバマの姿。
いつしか人々は彼の若さと、weを主語としたわかりやすい言葉に酔い心を惹きつけられた。
伝説の若き大統領ケネディに彼をダブらせて、今のアメリカを変えることのできる「何か」を期待する。
11月の本選はどうなるのか、無関心ではいられない。

我が家の庭で雨に濡れる白い薔薇、その名もジョン・エフ・ケネディという。

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バイカウツギ(梅花空木)
- 2008/06/21(Sat) -
梅花空木


サラサウツギと並ぶように梅花空木も咲いている。
こちらは純白の花、それぞれ自由気ままに好き好きを向いて咲く。
梅花の名の通り、梅のように美しく、ほのかな香りもする。
少し波打つような薄い花びらは4枚、花心にはたくさんの黄色い雄蕊。
まるで白い蝶がそこらじゅうを舞っているようにも見えて楽しい。
一輪切りとれば、それは和の調度に合う。

卯の花に酔はねば花も暮れかかる (壇一雄)
 
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ビワ~枇杷の実と鵯の巣~
- 2008/06/20(Fri) -
枇杷と鳥の巣


今年の枇杷は大きさといい数といい、まずまずのできである。
黄色く色付いた実を眺めているだけでも嬉しくなる。
上に一つその下に三つ、横に二つ、葉の陰に一つ…と目で追う。
そんな癒されるような形の実を見ていると、”まどみちお”の童謡「びわ」が浮かんできた。   
  
  びわはやさしい 木の実だから
  だっこしあって うれている
  うすい虹ある ろばさんの
  お耳みたいな 葉のかげに

  びわは静かな 木の実だから
  お日にぬるんで うれている
  ママといただく やぎさんの
  お乳よりかも まだあまく

子守歌のような優しい歌詞である。
そういえば気づかぬうちに実のその上にヒヨドリが巣を作っていた。(写真では実の後ろ側に)
彼らも枇杷の実の優しさに包まれて子育てしたかったのだろうか。

枇杷黄なり空はあやめの花曇り (素堂)

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サラサウツギ(更紗空木)
- 2008/06/19(Thu) -
サラサウツギ


この八重の桜にも似た花はサラサウツギである。
花はいずれもその顔をやや下に向けて咲かせる。
全体的には白い花だが、外側の花びらだけは蕾の段階から薄い紅色を差して、色を添える。
それがまた、ほかのウツギと違った美しさの魅力となり、目を惹きつける。
たくさんの花びらが桜のように分かれて散っていくのもいい。

押しあうて又卯の花の咲きこぼれ (正岡子規)

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ひるざきつきみそう
- 2008/06/18(Wed) -
ヒルザキツキミソウ

ヒルザキツキミソウが風に揺れる。
そよそよと揺れる。
たおやかに揺れる。

私は朝のこの花が好きだ。

種を蒔いてから10年も経つだろうか。
夏の日射しを感じる頃になると毎年咲き出す。
庭の縁に溶け込むように控えめに咲く。
昼咲月見草は素朴な趣のやさしい花である。

開くとき蕊の淋しき月見草 (高浜虚子)
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アスチルベAstilbe(泡盛草)
- 2008/06/17(Tue) -
あすちるべ


赤や薄いピンク、そして白いアスチルベが咲いている。毎年咲く宿根草の花である。
小さな株もあちこちに見られるので、少しずつ増えているのかもしれない。
アスチルベはいくつかの花穂が集まって、杉にも似た尖塔形の大きな穂状の花となる。
しかし、実際の花はごく小さく、花びらに至っては1~2㎜程しかない。
数えてみると一つの花穂に数十個の花が付いているので、全体とすれば何千もの花が咲いていることになる。
その微細な花を拡大鏡で覗くと、中心からはちゃんと蕊が伸びていて、とても可愛い。
しかし花が密集しすぎて、一つの花の花びらが4枚なのか5枚なのか確かめられない。
それでもと目を凝らしてじっと見ているとくらくらしてきた。
和名に泡盛草とあるようだが、次々とわき上がって咲く様を泡に喩えているのだろう。
ふわふわとしたやわらかな花である。

   泡盛の香こそめづれ小盃  (田中田士英)

沖縄の泡盛は関係ないか。
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バラ ~父の日の黄色いバラ~
- 2008/06/16(Mon) -
黄色いバラ


朝6時、町一斉に河川清掃をする。毎年の行事である。
山や川を近くにして暮らすこの地域は雨による自然災害が発生しやすい。
昭和36年には近くの村の大西山が崩れ多くの人々が犠牲となった。
天竜川は暴れ、各地に甚大な被害をもたらした。俗に言う36災害である。
それゆえに、人々は水の恐ろしさを知っている。
河川清掃はその教訓を忘れないための作業でもある。
繁った葦などを伐り取り川岸へ上げていく。
誰が指示するまでもなく、それぞれが気働きをし作業は手際よく進む。
およそ1時間、川は見違えるようにきれいになった。

作業を終えて戻り、そのまま庭に出てぐるりと歩く。
今年はバラがうまく咲いてくれている。
ふと黄色いバラが目に留まる。そういえば「父の日」だった。
切って花瓶に挿し、父の笑顔の前に置く。
今年の父の日、父はいない。空の向こうへ旅立ってもう3ヶ月が経った。

膝曲げて軽き 禱りの薔薇享くる (平畑静塔)

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ドクダミ(八重咲蕺草)
- 2008/06/15(Sun) -
ドクダミ八重


梅と椿の下で八重咲きのドクダミが地に群がり生えている。
広がる葉の緑色と小さな花の白い色が木陰の中でうまくとけ合う。
ちょっと踏みつけたり、茎を傷付けると、言い表しようのない独特の臭いを放つ。
その匂いは決して人に好まれるものとは言い難い。
しかしその特有な臭気や名のイメージとは離れ、きわめて有用な植物でもある。
別に十薬の名があるように、化膿,創傷など人体の様々な症状に効能があり、古来より重宝されてきた。
事典には「根茎はデンプンを含み,食料不足のときに煮て食べたこともあった」(山崎 敬)ともある。
あるメーカーが販売している「爽健美茶」にも配合されており、その薬効成分が認められていることが分かる。
この花で花びらのように見えるのは実は葉の変化した総包で、その中心に小さくあるのが本来の花だという。
名前の音としての響きは決していいとは言えないが、可愛い花である。

どくだみの香にたつ土の薄暑かな (西島麦南)

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カシワバアジサイ(柏葉紫陽花)
- 2008/06/14(Sat) -
カシワバ紫陽花


いろいろな紫陽花が咲き出した。
それぞれの株は、咲き始めが白、薄い黄緑、青紫、薄い紅、濃い赤…と最初からすでに色が違う。
それらは、さらに一雨毎に色を深め、色を変えていく。
その変化をわびさびの美と見る人あれば、はかなきものと見る人もいる。
人の心移りに重ねる人あれば、人の一生に喩える人もある。
菱田春草はそれをすべての生あるものの宿命として天女衰相になぞらえ”水鏡“に表した。
いわさきちひろは雨を楽しむ少女のシンボルとして描く。
紫陽花は人それぞれの物語を作る。

カシワバアジサイは白い。そして白いままである。
ほかの紫陽花にない違った趣がある。

紫陽花にことばのあやの如きもの (岬雪夫)
 
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シュッコンカスミソウ(宿根霞草)
- 2008/06/13(Fri) -
カスミソウ


宿根カスミソウは、径にして1㍍近くのかなり大きな株になる。
薄紅色した八重の清楚な小花が無数について、枝が四方に伸びる。
私はその群れ咲く姿が好きで、庭の何カ所かに分けて楽しんでいる。
これは一番日当たりのいいところにあるもので、まさに霞の如く数㍍ほどにも広がる。
週に一度程、根元から一枝二枝と切り取って大きな器に入れる。
それだけでそのふわっと感が部屋に広がって優しさに包まれる。
よく花嫁のブーケなどに他の花の添え物として用いられることが多いが、単独でも妙趣がある花だ。
花ことば『深い思いやり』だと。自らは決して主にならず、陰で支える花故なのだろうか。

乳母車通ればそよぐ霞艸 (石原八束)

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スイカズラ(忍冬・吸葛)
- 2008/06/12(Thu) -
スイカズラ


毎朝4時50分頃から「今日の誕生日の花と花言葉」がNHKのラジオから流れる。
私は畑や庭での仕事をしながらポケットラジオのイヤホーンを耳にして聞く。
昨日の花はスイカズラ、花言葉は”愛のきずな”。

我が家でもちょうど今スイカズラが木萩などに絡みつくように蔓を伸ばして花を咲かせている。
花は二つずつ寄り添うように揃って咲く。
咲き初めは白く、時間が経つにつれて黄色くなっていく。
それを金銀の色に見立てたのだろうか、金銀花の呼び名もあると知る。
上の4枚の花びら合体して一つとなり、先端が4裂してその名残をとどめる。
下の花びらは舌を伸ばしたように細長く突き出る。
5本の雄蘂と丸い柱頭を持った雌蕊の先はそれぞれに反り返って上に向く。
そこからはとても良い香りが放たれ、奥に甘い蜜がある。その香に誘われてよく蝶や蜂がやってくる。
昔の人々はその蜜を吸っては味わい楽しんだようである。それが吸葛の名の由来となる。

すひかづら今来し蝶も垂れ下り (東中式子)

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バラ ~紅薔薇(べにそうび)の歌~
- 2008/06/11(Wed) -
赤いバラ


今、秋元松子歌集「紅薔薇(べにそうび)」を手にしている。
ご本人から頂いたものだ。もう20年程前のことになる。
彼女は佐々木信綱に直接指導を受けた、千葉県流山の歌人である。
正しくは、画家であり歌人であるというのが正しい。
なぜなら日展で特選になるなどの洋画家でもあるからだ。
菱田春草に関わる取材のため、流山のご自宅を尋ねてお話をお聞きしたときはもう九十に近いお歳であった。
貴重な春草との出会いの一端をお聞きするとともに、求めていた空白部分の事実を確かめることができて意義ある旅となった。
松子さんのお話を紡ぎ合わせながら、目的が達成された満足の思いで帰途についたのを今でも鮮明に覚えている。
紅の薔薇を見る度、その時のことを思い出す。

30ほどの薔薇の花を摘んで風呂に入れ、赤やピンク、オレンジの彩りと香りを楽しみ疲れを癒した。

つきつめて思ふことをまた思ひをり夕陽に痛き紅ばらの冴え (秋元松子)

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ユズ(柚子の花)
- 2008/06/10(Tue) -
ゆずの花


ミカンの仲間はどれも同じように白い花をしている。
実が付いていなければ、なかなか見分けがつきにくい。
これは柚子の花である。やや厚みのある五弁の花だ。
今年は昨年よりやや花が少ない。いい香りがする。
近くの山村ではこの実を柚餅子にする。室町の頃より続く伝統の味覚のようだ。
私はその術を知らないので、風呂に入れて柚子風呂で楽しむ。

今の時期になるとアゲハチョウの幼虫が葉を貪るようになる。
蝶が好むのは柚子のみならず、柑橘類全般に言えることなのかもしれない。
アゲハチョウが美しく舞う姿もいいが、柚子の木が虫食い状態になるのは可哀想である。
情けを捨て、一匹二匹そしてまた一匹二匹と葉から手で取っては草むらに投げる。
どこかでほかの木に宿って生き延びてくれればと思いつつ。

かにかくに逢へばやすらぐ柚の香 (野澤節子)
 
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マツバギク(松葉菊)
- 2008/06/09(Mon) -
まつばぎく


我が家のグランドカバーとして広がるマツバギク、太陽の光を撥ね返すように輝いて咲く。
鮮やかなピンク色の花がびっしりと埋め尽くし、まるで美しい絨毯のようだ。
一つ一つの花はきれいな円形を作り、花片が規則正しく放射状に伸びて花火のようでもある。
咲くのは日中だけで、夕方には一斉にそろって閉じるのもまたおもしろい。
冬には茶色い茎が裸身をさらし、枯れたようになるが、春が来ると葉を出し、そして初夏からこうして花を見せる。
ただ、繁殖力が旺盛で他の花をも取り囲むように浸食することもあるので、時々整理してやることになる。
元々は南アフリカ原産というのだが、凍てつく信州の冬にも耐えて、もう何年も生き続けているありがたい花である。

石垣に咲くや下田の松葉菊 (阿部筲人)
 
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バラ ~蜂が遊ぶ~
- 2008/06/08(Sun) -
バラと蜂


バラの下の草取りをした。
目に付くのはスベリヒユやカタバミ、アカザ、メヒシバなどだ。
バラの根を傷めないように手カキを使って慎重に取っていく。
小一時間の作業できれいになった。
長袖を着てやったのだが、終わってみると腕のそこらにひっかき傷があった。

早速クマバチが遊びにやってきた。
顔を花芯に付けては、手足を盛んに動かし花を次々に移っていく。
しばらく眺めていると、ひょんなことに気づく。
たくさんある花でも、留まるのとそうでないのがある。
よくよく見ると黄色い花粉があるのだけに留まっているのだ。
花心が白いのは、もうすでに食事済みの花だったのである。
蜜を吸いに来るのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが、蜂の花移りを見て今頃気がついた。

草を見、花を見、虫を鳥を蜂を見ているといろいろなことを教えられる。

人追うてはちもどりけり花の上  (太祗)
 
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サルナシ(猿梨・コクワ)
- 2008/06/07(Sat) -
サルナシ


この白い5弁の花はサルナシ、秋にコクワの名で知られる緑色の実を付ける。
ちょうどキウイフルーツを小さくしたような楕円形の実で、甘みと少しの酸味が同居してそれなりに美味しい。
本来は山地に生えるマタタビの仲間であるが、私はその物珍しさもあって畑に植えてある。
つる性植物のため、他の植物に絡んで伸びるので気をつけなければならない。
今年は例年になく花付きも多く、蜂もよく遊びに来ているので、秋の実りが楽しめそうだ。

六月を奇麗な風の吹くことよ (正岡子規)
 
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ムラサキツユクサ(紫露草)
- 2008/06/06(Fri) -
紫露草


梅雨の時期、紫陽花のように雨に似合う花々もある。
このムラサキツユクサもそのひとつだろう。
紫の花びらと、黄色い蕊と細長い葉と、丸い雨粒とが一つの姿になる。
俳人、歌人がいたらきっと筆を走らせることだろう。
画人は絵筆を持って下図を描くにちがいない。
そんな思いを感じる雨の中の紫露草だ。

この花は至る所で目にすることができるので、ずっと、日本の野の花だとばかり思っていた。
しかし、北米原産の園芸植物で、その歴史も比較的新しく、明治の初めに渡来したのだと書で知る。
私は桜の木の下、李の木の下、水辺、そして日当たりの良い畑の一角と分けて植えてある。
環境を選ばずどこにでもよく育つ強健な性質の花である。

肌さやめくもの静けさの梅雨心 (鹿野依風)
 
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バラ(センチメンタル)
- 2008/06/05(Thu) -
センチメンタル

 
マイク真木がテレビに出て「バラが咲いた」を歌っていた。
そのメロディーがなつかしくしばらく聞き入っていた。
齢を重ね、あの頃の爽やかで若々しい声の張りはなく、伸びが失われていたが、やはり本家本元、さすがである。
私がギターを手にし、コードを初めて覚えて練習したのがこの曲だった。
その頃のギター初心者の練習曲の定番はこの歌と、佐良直美の「世界は二人のために」だったような気がする。
遙か、昔のことだ。もう佐良の名を知る人も少ないだろう。

年が過ぎて、気がつけば庭にはたくさんのバラがある。
毎年のように一つ二つと株が増え、色が増えていって小さなバラの園になった。
時折、通りがかりの人が眺めていく。側によって香りを楽しんでいく。
好きなら、自由に剪って持って行って部屋に飾ってもらってもいいと思っている。

そんな中にあって、このセンチメンタルはほかのバラと違って目立つ。
多くのバラは赤や黄色ピンクなどのモノカラーであるが、これには花びらに絞りがあるからだ。
白い布地に赤いインクが染みこんだような、そんな印象のバラだ。
オーソドックスなバラのイメージからすれば少し異質な感がある。
しかし姿形は違えど、私はすべての薔薇が好きである。

雷過ぎしことばしづかに薔薇を撰る (石田波郷)

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シラン(紫蘭)
- 2008/06/04(Wed) -
紫蘭


雨にしっとりと濡れる紫蘭。
何か考え事をするかのような淋しげな顔にも見える。
唇弁の上に幾重本か伸びる縦ひだは、ドレスのフリルにも似たやわらかな美しさがある。
そして、その花衣はまさに”紫の蘭”の名に値する優しい色を纏う。
雨はまた花の趣を巧みに引き出し、表情を豊かにする。
時には、雨に濡れた花々を見るのもいい。
晴れた日とは違った味わい深い姿がそこにある。

紫蘭咲いていささかは岩もあはれなり (北原白秋)
 
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イボタノキ(水蝋樹・Ibota privet)
- 2008/06/03(Tue) -
イボタノキ


新枝の先端に白い小さな花を密集して咲かせているのはイボタノキである。
やや細長い先の四裂した筒状の花からはほのかな芳香が漂う。
小枝は分かれて良く伸び、刈込みにも強い。
また移植や株分けが容易で、しかもあまり環境を選ばないようである。
家でも自然に生えてきたものなど、庭やその周りにいくつもある。
幹はさほど太くはならないが、その材は緻密で硬く、印材としても有用な木として知られる。
しかし、イボタノキはこのように木を覆うほどに溢れるほどに花を咲かせるのだが、他の木々に比べて知名度は低い。
知る人が知り、見る人が見て、味わう人が味わえばそれでいいのかもしれない。
我が家ではいくつもの枝をばっさり剪って、まとめて大きな花瓶にどばっと挿してある。
「人見るもよし、見ざるもよし、我は咲くなり」そんな達観の語を思い浮かべる。

信州も例年より一週間も早い梅雨入りとのニュースである。今朝も強い雨が降っている。

六月やものを思へば雨降つて (栗山秀代)
 
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ユユラウメ (山桜桃・Chinese bush cherry)
- 2008/06/02(Mon) -
ユスラウメ


丸一日、畑で過ごした。
梅雨が来る前に、草取りと草刈りなどを済ませておきたかったからだ。
木々や草花をよく見ると、色々なものが形を変えて一気に動いている。
栗の木には長く垂れ下がる花が付いている。その葉をシラガダイジンがいくつも葉を食んでいる。
一昨年はほとんどの葉を食い尽くされ木が枯れかけた。手で一つ一つ取っていく。しばらくは毎日チェックが必要だ。
ネムノキはカイガラムシにやられて枝が異様な光景になっている。
伐れるだけ伐って燃やしたが、高いところのものは一人では無理だった。

一段落して、お茶を片手に歩く。
山桜桃の赤い実がたくさんなっている。形、大きさはサクランボに似る。一つ取って口に運ぶ。
サクランボより抑えた甘さだ。中の種を口から”フッ”と飛ばす、子どものように。もう一つ口に運ぶ。

梅を収穫する。木の丈がそれほど高くはないので作業は楽である。たちまちいっぱいになった。
漬けるにはこれくらいでいいだろう。

杏の実も色づき始めた。ジューンベリーも。スモモ、プルーン、ラズベリ-、ブラックベリー、木苺…。
夏を迎えるこの時期、秋とはまた違った収穫の喜びがある。
そういえば、例年になく大豊作のサクランボは、すべてヒヨドリの主食となった。
なんて大らかなんだろうと、きっと彼らに感謝されているのかもしれない。

つづきたる雨の間に熟れゆすらうめ (五十嵐播水)
 
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シャクヤク ~芍薬、雨に濡れて~
- 2008/06/01(Sun) -
芍薬


今日から6月、雨の季節だ。
一雨毎に草木は背を伸ばし、枝を広げ、葉の繁りを増す。

小雨降る中、傘を差して庭に出る。
終わったはずの牡丹が淋しげに一輪返り咲き。
色変化のハコネウツギも白い花を覗かせている。
カシワバアジサアイ、ヤマアジサイ、アマチャなども色づき始めた。
スイートアリッサムも其処彼処にちらちらと。
サルナシもユズもイボタノキも…。

雨が草木を支え、花を喜ばせる。

芍薬も雨に濡れて、また色艶やかに咲く。

芍薬を嗅げば女体となりゐたり ( 山口誓子)
 
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