カルミア (アメリカシャクナゲ)
- 2008/05/31(Sat) -
カルミヤ


まるでお菓子みたいな形と色をしているのはカルミヤのつぼみ。
それが口を開くと今度はパラソルを逆さにしたように花になる。
花芯にある赤紫色の糸でじぐざぐに縫われたような紋様も可愛い。
カルミヤは大きさ2cmほどの淡い紅色した花が枝の先に集まって咲く。
別名アメリカシャクナゲとあるように、躑躅(ツツジ)の仲間だが、その形は似ても似つかぬ。
それらしさは葉の形に見えるが、しかしそれも有毒物質を含んでおり、これも躑躅の仲間にはあまりない。
家に3本あるカルミヤは微妙に色が違って、濃紅色から白に近い薄紅色まであるが、いずれも爽やか感がある。
あまり手をかけてはいなが、毎年五月の庭にこうして顔を見せてくれる。

初夏の一日一日と庭のさま (星野立子)
 
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バラ (真紅の薔薇)
- 2008/05/30(Fri) -
真紅の薔薇


いくつものバラが競うかのように咲き出した。
庭がパレットのようになる。
それらを毎日剪りとっては数カ所の花瓶に挿す。
部屋が華やいでカラフルになる。
いたる所に魅惑的な甘い香りが広がる。

仕事を忘れて、薔薇と自分だけの時間と空間。
心安まり、気分も鎮まる。
油断していると、棘で服を引っかける。
指に刺すことも何度か。

  針ありて蝶に知らせん花薔薇 (乙由)
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レッドロビン (西洋紅カナメモチ)
- 2008/05/29(Thu) -
レッドロビン


道と我が家を隔ててるのはレッドロビンの生け垣。
隣家や下の川との境も同じくそれで囲まれている。
ちょうど今、艶やかな新芽が赤く染まり、目にも鮮やかに映る。
その萌芽力は旺盛で、刈込みして背丈や垣幅を揃えても暫くすると枝はたちまち伸びていく。
そんな赤い葉列の中からのぞくのがレッドロビンの小さな白い花である。
まとまって大きな花のように見えるが、一つ一つは梅を小さくしたような丸い五弁花でとても愛らしい。
葉が主役のレッドロビンであるが、葉陰に隠れるように咲く花に目をやると、そこにも自然の造形の美しさがある。
 
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キショウブ (黄菖蒲)
- 2008/05/28(Wed) -
キショウブ


この時期、家の一角を縁取るように黄色の長い帯ができる。
井水に沿い20㍍ほどにわたって咲く黄菖蒲である。
歌や絵のモチーフにでもしたくなるような優しい花だ。
高さのある花瓶などはその姿を引き立たせてよく似合う。
一輪もよし、二輪、三輪もよし、そして群がる姿を見るもなおよしの黄菖蒲である。
昔から日本にあるようにも思える花だが、実際は明治期に入ってきた外来種だという。
それはともあれ、和の風情にしっかりなじむ花といえる。

黄菖蒲の黄の映る水平らかに  (池内たけし)


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チャイブ (西洋浅葱・エゾネギ)
- 2008/05/27(Tue) -
チャイブ


淡い紫色の丸い花を頭に懐くのはチャイブ、一株に数え切れない程の花が並んで咲く。
ヨーロッパでは香りと味を楽しむハーブとして知られ、料理にも多く用いられるという。
香りよし、茎、葉、鱗茎のいずれも調理できるというのだから、有用な植物だ。
セイヨウアサツキの別名がある通り、元々はネギの仲間であるから当然だろうが、私は一度も口にしたことはない。
よく見ると、この葉の先端に花が咲く姿は確かにネギボウズそのものである。
冬になると姿を消し、春に葉を伸ばして初夏このように花を咲かせる。
手をかけずとも、毎年こんな可愛い姿を見せてくれるのはありがたい。
生けるのもよく、今玄関には数本の花がスーット伸びた立ち姿で花瓶に収まっている。

うれしさや小草影もつ五月晴れ (正岡子規)
 
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クジャクサボテン(孔雀仙人掌・オーキッドカクタス)
- 2008/05/26(Mon) -
クジャクサボテン


花は私の掌を広げたよりも大きいクジャクサボテン。
色形の美しさはひときわ存在感があり、目を奪う。
彼女はこうして、毎年その優雅で華麗な顔を私の部屋に届けてくれる。
花片のみならず、芯から覗く雄蘂、雌蕊の姿にも惹きつけるものがある。
わずか数日の顔見せの儚さ、心を置いて深く味わう。

   さぼてんの名の老いらくの恋といふ (富安風生)

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シラン(口紅シラン)
- 2008/05/25(Sun) -
シラン


 家には二種類のシラン(紫蘭)がある。
もともとは鮮やかな紫の花色から、その名がつけられた紫蘭である。
その中の一つ、これは口紅シラン、全体の色は白に近い。
唇弁の先端は薄い紅色で縁取られ、それが紅を引く若い女性の唇をイメージさせなくもない。
その控えめな優しい色形には、ほんの少しの色気と切なさが感じられる。

この花を見ていると、なぜだか南こうせつの「夢一夜」のメロディーが自然に頭に流れてきた。
 素肌に片袖通しただけで
 色とりどりに脱ぎ散らかした
 床にひろがる絹の海…
こうせつが高音で切々と歌うその映像のようなシーンに引き込まれて、何度も口ずさんだ歌である。

ゆふかぜのしゞにしらんの一トむしろ (久保田万太郎)

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アヤメ(白花あやめ)
- 2008/05/24(Sat) -
白アヤメ


 アヤメの仲間をアイリス(Iris)と呼ぶことは知られているが、他にflagという呼び方があるのを最近になって知った。
正確に言えば《アヤメ・キショウブ・ショウブ》など、葉が剣状の植物全体を指すのだそうだ。
Iris も、もとはギリシャ語「にじ」の意から付けられたとあり、その色合いが虹のように美しいということなのだろうか。
今、我が家の庭のいたるところでもアヤメ、ジャ-マンアイリス、イチハツ、キショウブなどが咲きそろっている。
私の好きなヒオウギは暑い夏の盛り を待ってからだろう。
カキツバタは今、茎がぐんぐん伸びているのでもうすぐかもしれない。
残念ながら、今年はシャガの姿はない。いつもなら5月頃咲くのだが。

このアヤメは少し背丈が低く、全体が真っ白で花の内側がほんのり黄色に染まる。
虹のようにカラフルとはいかないが、これはまたこれで美しく清らかである。

ひとくきの白きあやめなりいさぎよき (日野草城)
 

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バラ(エンジェルフェイス・天使の顔)
- 2008/05/23(Fri) -
エンジェルフェイス

 
庭に色々なバラが顔を見せてくれている。
これはエンジェルフェイス(天使の顔)という名の香りのいいバラだ。
他の彩りの中にあって、このオペラモーヴの優しい色合いはちょっとした存在感がある。
 花からの幸せ、花からの喜び、花からのありがたさ
“神の御使(みつかい)”を感じつつ、味わい眺める。


真実は鞭より強しばらの花 (星野椿)


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シンビジウム(ハーフムーンワンダーランド)
- 2008/05/22(Thu) -
ハーフムーンワンダーランド


蘭の育て方がいつまで経っても下手である。
なかなか大きくきれいに咲かせられない。
年によっては花を全然付けないこともある。
蘭はきっと、時間をかけ丁寧な面倒見が必要なデリケートな花なのだろう。

ところがそんな中にあって、5月に入ってから花を開いたのがこのシンビジウムだ。
陸上の中距離で言えば、周回遅れでやっとゴールが見えてきた選手のようだ。
ハーフムーンワンダーランド=半月の(夜の)不思議の国と、魅力的な名を持つ。
今年も蘭はだめだったとあきらめていただけにとても嬉しい。
花のキューピットが私の誕生月を知ってプレゼントとしてくれたのかもしれないと、一人ほくそ笑む。。

小満も過ぎ、いよいよ草木の枝葉も繁り盛んとなって、様々な緑色のパッチワークが広がっていく季節である。
万物長ずるが如く、己の心の木も色豊かにしていこう。

     蘭の香にありて己の夜をもてる (滝 春一)

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クレマチス(鉄線・風車)
- 2008/05/21(Wed) -
クレマチス


色や形、大きさの違う四種類のクレマチスが咲いている。
風薫り、日射し増すこの季節に相応しい、私の好きな花の一つだ。
クレマチスは日本に自生する風車(カザグルマ)や中国の鉄線(テッセン)などをもとに作り出された花だという。
今は店頭でも様々な顔をした園芸種が並び、気をそそる。

この花の咲くを見ると青山俊董師の言葉を思い出す。
「鉄線を見ると人間の身勝手を思う。蕾をもたげはじめると毎日のように足しげく通い、花を咲かせている間じゅうは大事にするのに、咲き終えて、特に冬など、振り向きもしない」
「古い枝のみ花を咲かせることができるというのに。花も葉も何もないときの、根や茎の養いこそ大切なのに。その結果としての花であるのに。結果だけをほしがり、結果だけを賞める人間のわがままと、視野のせまさを思う」
        『花有情 ~根や茎の養いをこそ~』より
“花も葉も何もないときの、根や茎の養いこそ大切”という言葉をかみしめたい。

                 鉄線にけふは若くものなき庭か (高浜虚子)  

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鎌田實「命を支える」 ~薔薇の花咲く季節~
- 2008/05/20(Tue) -
ばらピンクノックアウト

鎌田實さんの「命を支える」という講演をお聞きする機会があった。
「見放さない」「放り出さない」をモットーに地域住民とともに作る温かい医療実践を行っている鎌田さんは60歳。
チェルノブイリ、ベラルーシ、イラクへ自ら赴き、医療援助活動を続けられておられることは衆知の通りだ。
「がんばらない」「あきらめない」「なげださない」などの著は多くの人々に感銘を呼び共感を得ている。

「徹子の部屋」での黒柳徹子さんとの舞台裏やそのエピソードの紹介には、おかしく笑え楽しくもあった。
そして、温かな優しい語り口から、繰り出される「命」に関わる人の生き様、人と人との関係性のすばらしさは心打つ。
講演のキーワードは次ようなことであった。
 心は体と繋がっている。心が体を治すという事実がある。
 命は繋がりの中で守られている。三つの繋がりを自分のフィロソフィーとしている。
 それは「人と人」「人と自然」「「体と心」、この繋がりのどこかに綻びができると生きづらたくなる。
ほかにも、重く深く考えさせられる多くの言葉が紡がれるが、ここにすべてを記すことができないのが残念である。
体の芯まで温かくなり、脳の随まで言葉が浸透するような心洗われる余韻を残して会場を後にした。

庭ではピンクノックアウトという薔薇が咲いている。甘い香りが鼻を通し頭の奥まで抜けるようで心地よい。
目をつぶると、花がくれる幸せを感じる。これも鎌田さんのおっしゃる「人と自然」の繋がりなのだろう。
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メイフラワー( May flower西洋山査子)
- 2008/05/19(Mon) -
メイフラワー


レッドソックスの松坂大輔が開幕7連勝し、リーグトップタイとなったとメディアは報じていた。
MBLにあって勝率10割、防御率は2・15とはとてつもないすごいことである。
今後ますます彼の活躍から目が離せなくなる。
そのレッドソックスはアメリカ北東部の都市ボストンが本拠地である。
1630年イギリスからメイフラワー号に乗ってやってきたピューリタンによって建設された町だ。
彼らはここにイギリス本国の故郷の地に因むボストンの名を付ける。

我が家には可愛いメイフラワー(5月の花・セイヨウサンザシ)がある。
その名の通り、5月の声を聞いて咲き出した八重の小さな桃色の花で、花言葉は〈希望〉。

思い凝らせば山査子に日の戻りくる (手塚美佐))

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作品「哲」 ~大島紬~
- 2008/05/18(Sun) -
哲


所属している団体の公募展の会期が終わる。
新年度が始まって、色々と仕事に追われる中ではあったが、今年は2点出品することにした。

作りたい構想はたくさんあり、テーマが一旦決まると仕事は早い。
この「哲」は檜の木彫作品である。
短期間の制作だったので少し雑なところがある。
もっと時間をじっくりかけて、丁寧な仕事をしなくてはと反省する。
私の場合、丸い材に直接チョークで大まかなデッサンをして、一気にチエンソウで落としていく。
八割ほどをこのように機械で切ったり削り出したりし、後はアトリエに入れて細部に取りかかる。
そして最後に何本かのノミを使って仕上げる。
ほとんどが立ちっぱなしで体力のいる作業だが、疲れよりはむしろ無心になれる制作の心地よさに満たされる。

このあと、夏の公募展から秋の小品展までに3点の制作を予定している。
日常の仕事は忙しいが、これだけは自分に課せた最低のノルマとして毎年考えている。

五月いま噴くはおとこを励ます木 (谷口亜岐夫)
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コデマリ (小手鞠)
- 2008/05/17(Sat) -
こでまり


梅のような白い小さな五弁の花を枝にびっしりと咲かせるのはコデマリ。
ひとかたまりとなった20~30個程の花房が丸く可愛い鞠を思わせる。
今はまだ咲き始めだが、花数が増え始めるとしなやかな枝は弧を描いて下に垂れ、株全体を白く覆う。
コデマリはそんな多くの花を咲かせながらも、決して我を主張するでもなくあくまでも控えめである。
無口で淑やか、そんな言葉が似合う花だ。

こでまりやおんなごころを描くごとし (板垣鋭太郎)

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キングサリ(金鎖golden-chain )
- 2008/05/16(Fri) -
キングサリ


キングサリの姿は見るからに藤の花そっくりである。
上のほうから下に向かって徐々に咲いて垂れ下がる。
黄色い花は複葉の緑色とマッチして美しく映え、風にゆらゆらと揺れる。
しかし、実はその爽やかなイメージにとはそぐわない有毒の植物でもある。

暫く見とれていると、コジュケイの鳴き声が近くの林から響き渡る。
大きな声で、チョットコイ・チョットコーイ、チョットコイ・チョットコーイ…と。
鳥たちもいよいよ恋の季節である。

大空に又わき出でし小鳥かな (高浜虚子)

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ベニバナツメクサ(紅花詰め草・Crimson clover)
- 2008/05/15(Thu) -
紅花ツメクサ

 
まるで真っ赤な苺のように見えるのはベニバナツメクサ(クリムソン・クローバー)。
その色や形からストロベリー・キャンドルという別の名も持つ。
普通のクローバーの花穂が丸い鞠状に対し、これは蝋燭の炎のような紡錘状で大きい。
また、一般的に地に伏して広がるクローバーに対し、葉や茎が立ち上がった株になる。
毎年、このように同じところに顔を出し、あらとうとうの季節を教えてくれる。

四つ葉のクローバー ノートにあった淡い青春 (文)

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ナンジャモンジャノキ(ヒトツバタゴ)
- 2008/05/14(Wed) -
ナンジャモンジャノキ


ナンジャモンジャノキ。
本来の名はヒトツバタゴ。
深い切れ込みのある長細い白い花を多数付け、その群れ咲く姿は遠目には雪のようにも見える。
江戸時代、木を白く覆うほどに咲くこの木の名を誰も知らず、人々に「なんじゃもんじゃ」と呼ばれていたと、ある書で知る。
そんなユーモラスな名のある木だが、花はとても清らかで、しなやかな花柄はわずかな風にも揺れる

ナンジャモンジャ・なんじゃもんじゃ・ナンジャモンジャ・なんじゃもんじゃと唱えると遠い幼い日に戻った気分になる。

窓を開ければ、外の月下美人の葉に雨蛙がちょこんと座っている。
土色から、青い濡れ色に衣装替えしての初登場だ。
私はこのあどけない小さな雨蛙が好きである。

雨蛙おのれもペンキぬりたてか (芥川龍之介)

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アヤメ(渓蓀・菖蒲)
- 2008/05/13(Tue) -
アヤメ


アヤメである。

これを見て尾形光琳の《燕子花(かきつばた)図》を思い浮かべる人もいよう。
燕子花がリズミカルに上下し、左右に広がっていく図案の屏風絵だ。
裕福な家に生まれた彼は放蕩三昧で、分け与えられた財を使い果たす。
そして、ようやく39歳にして絵描きとして自らの身を立てることに意を決する。
その後、弟乾山の絵付けに始まり、そのほか染織や蒔絵の意匠図案にも手を染めその活躍の場を広げていく。
その究極が《(燕子花)(かきつばた)図》となって彼の才を開花させる。

しかし、これはアヤメ(菖蒲)であり、カキツバタ(燕子花)ではない。
菖蒲(アヤメ)は比較的乾いた土でも元気を保つが、カキツバタは水辺を好みその咲く時も微妙にずれる。

絵心を惹きつけ、歌心を誘う花である。

ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな (『古今集』巻十一)

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ボタン(牡丹)
- 2008/05/12(Mon) -
牡丹


昨日「母の日」、信州の味覚を贈ることにした。
母から電話があった。「届いたよ。有り難う」と。
そして「昨日はあなたの誕生日だったね。忘れて電話できなくてごめんなさい」と母。
「よく思い出してくれたね」と私。
大正の世に生を受け以来、様々な歴史と共に歩み、色々なことを乗り越え越えてきた母。
小さい体だが、大きな存在だ。

赤、紫、朱、白などの牡丹が六株並ぶ。
中でもこの花は、私の手のひらを広げたよりもさらに大きい。
美しい布を撚り合わせるように花びらが幾重にも重なる。
そして自らの重みを持ちこたえられずに日に日に顔が下向きになっていく。


牡丹十日母にもの言ふ如きかな (細見綾子)
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サクラウツギ (桜空木)
- 2008/05/11(Sun) -
サクラウツギ


サクラウツギはその名の通り、まさに桜色したウツギである。
五弁の花は布を色染めしたかのようにその周辺のみが淡い紅色に染まる。
そしてその外側は細い絵筆で描かれたように白い線で縁取られる。
花びらはその先がやや尖塔形で、ちょうどクレマチスを小さくしたようでもある。
白い雌蕊を取り囲む10本の雄しべの上部はカニのハサミのような形をし、花弁と同じ薄紅色をしている。
ひとつひとつの枝にびっしりと咲く姿はこれもまた桜を彷彿とさせる。
優しさを感じさせる花である。

紅うつぎ風移る間も紅保つ (莬絲子)

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イチハツ (一八 鳶尾草  roof iris)
- 2008/05/10(Sat) -
一八

アヤメ科の花々が咲き揃う季節になり、色とりどりの軟らかな花姿が風に揺れる。
様々な種類の中、私の庭にいつも一番先にその彩りを届けていくれるのはこのイチハツ。
アヤメの仲間で“最初に咲く”ことからこの花にイチハツの名があると聞く。
英名でroof iris〈屋根に生えるアイリス〉とあるのは、この花に火災を防ぐという民間信仰があるとこころに由来するという。
とても丈夫で乾燥にも強く、我が家ではあまり肥沃でない道路脇で咲いている。
外被の花片には濃紫色の斑点が見られ、 内側から白いとさか状のものが上に乗り、その中に鮮やかな赤紫の波模様が描かれる。
そして中心部からは先割れした細い花片がつんと立つようにあるのが特徴的だ。
全体には眩しい紫色した、まるで女性の着物を思わせるかのような美しい花である。
和を感じさせる穏やかでしっとりとした趣深い表情がある。

一八やちよんと結びし母の帯 (細川加賀)

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キイチゴ(木苺 カジイチゴ)
- 2008/05/09(Fri) -
キイチゴ


これは私の背丈ほどになるカジイチゴ、日本在来の木苺で、棘はない。
花は他の草苺などど同様に白い五弁の花。
花びらの輪郭がフリルのようになり、全体が少し波打つ。
蕊は多数、これがイチゴのつぶつぶの元になるのか。
初夏、橙色に熟した果実は甘く、畑の作業のひとときなどに口に運ぶのが楽しい。
鳥たちも喜んでやって来ては啄む。
地下茎で広がり、あちこちから顔出すのが少し難点。

よく見れば木苺の花よかりけり (高浜虚子)

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ライラック(lilac・リラlilas)
- 2008/05/08(Thu) -
ライラック


フランス語でリラ、 和名はムラサキハシドイ。
淡い紫色のやさしい色した芳香のある花が密集するようにまとまって咲く。

「春先に咲く花であることから,花言葉は〈初恋の味〉。また白い花は〈処女・純潔〉のシンボルで,年ごろの娘をもつ家では婚期を逃さぬよう室内にこれを持ち込まないよう注意する。」 (荒俣 宏の著より)        

初恋の味ってどんなだったろう。そういえば、ダークダックスにこんな歌があった。

幼なじみの思い出は 青いレモンの味がする 閉じるまぶたのその裏に 幼い姿の君と僕
幼なじみの思い出は 青いレモンの味がする 愛のしるしのおさなごは 遠い昔の君と僕

日本語の美しきときリラの花 (後藤夜半)

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グミ(茱萸・胡頽子)
- 2008/05/07(Wed) -
グミ


グミは枝から垂れ下がるように長く伸びた花柄の先に筒形の白い小さな花を開く。
と言っても、4弁に見えるのは萼で実際は花びらはない。
夏に入り日射しが強さを増す頃、鮮やかな赤い実を付ける。
実はやや楕円に近く、完熟すると少しの酸味を伴う甘味がある。
しかし、私が口にするのはせいぜい10個にも満たない。
これも鳥たちの好物だからである。

転生のなぞを解いてる茱萸の木よ (斎藤慎爾)

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カリン(榠樝・花梨 カラナシ・キボケ)
- 2008/05/06(Tue) -
かりん

 
淡い紅色のカリンの花にはカラナシやキボケの名もある。
カラナシの名は中国(唐)から渡来したことに由来するのだろう。
秋には芳香を放つ洋梨にも似た黄い楕円形の実を付ける。
しかし、その味覚を誘うかのような見た目の形と違い、果肉は硬くて生食に適さない。
キボケとは木瓜のような花を咲かせる大きな木ということか。
木瓜も同じように黄色い実を付けるところは、遠からずの親戚かもしれない。
我が家にある2本のカリンはいずれも5~6㍍にもなる。
そんな名前の由来などを適当に推し量っては楽しむ。

榠樝の花数へたくなるやさしさに (相馬遷子)

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ハナズオウ(白花花蘇芳)
- 2008/05/05(Mon) -
白ハナズオウ


白いハナズオウに蜂が来て蜜を吸っていた。
私はこの花の香りをかいだことがない。
しかし、いろいろな蜂が吸っては離れ、次々に移るのを見ると、きっと甘くておいしい香りがするのだろう。
ハナズオウはこうして葉がまだ出ぬうちに、細い枝に直に花つける。
花は不定形に見えるが、よく見ると五弁の蝶形花をしており、マメ科の花であることがわかる。
花が終わり、秋になるとあの枝豆を大きくしたような莢果を付ける。

何かを求めて来る人、行く人、道はいつもにまして車が通る。
私は汗して、じっと自分と向き合う時間を過ごす。

蘇芳花を尽くしぬ為せしこと少し (石塚友二)



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リンゴ(王林の花)
- 2008/05/04(Sun) -
王林

 
ほのかに赤みを帯びるリンゴの花、これは秋に緑がかった実を付ける王林の花だ。
植えて何年目になるか忘れたが、店ではなじみ深い甘みの多いリンゴだ。
福島県伊達の人による掛け合わせの智慧で作られた比較的新しい品種のようである。
名はその品質の良さから、「林檎の王様」と呼んだことに由来するという。

この木、一昨年は20個ほどの実を付けたが、昨年の収穫はゼロであった。
それにもまして驚いたのは1年に春、夏、初秋それに晩秋と4度も花を咲かせたことである。
あの猛暑がこの花の体内バランスに変調をもたらしたのではないかと思ったりもした。
今年は今のところいつもの倍以上もの花を付けている。
このまま順調に生育してくれればいいのだが。そうすればきっと実りも…と思う。

白雲や林檎の花に日のぬくみ (大野林火)



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ハナカイドウ(花海棠) ~楊貴妃の垂れる花~
- 2008/05/03(Sat) -
ハナカイドウ

薄桃色の八重の花、花海棠。
その色が何とも優しくて美しい。
長い花柄の先に花が垂れるようにやや下向きに咲く。
花がまるで糸の先に垂れ下がるように見えることから、漢名で垂絲海棠の名があるという。
そして故事にちなんで、その美しい姿を楊貴妃の垂れる花と言うと。

このところの強い日射しと高い気温と風が花片をどんどん散らす。
ひとつひとつに分かたれた花片は落ちてさらに紅色を増す。
地に敷かれる自然のレイアウトもまた味わい深い色模様となる。

海棠の日陰育ちも赤きかな (小林一茶)
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シャクナゲ(西洋石楠花)
- 2008/05/02(Fri) -
西洋シャクナゲ


道路から入る家の入り口で迎えてくれるのがこの鮮やかな色をした西洋石楠花である。
南アルプスを越えて朝日が昇ると、真っ先に日射しを浴びる。
「うたげ」という名を持つこの花、こうして大輪の美しいピンクの花をたくさん咲かせる。
時期を同じくして植栽した、対になっている西側のはいつもそれより大分遅れて咲く。
そちらの真紅の花はまだ蕾のままだが、その中にも少し紅が差してきたのが見える。
同じ石楠花でもこうして咲く時期を違え、長く楽しませてくれるのがまた嬉しい。
ラジオではこのところの「高温異常気象」に対し、果樹や農作物への注意を促している。
こうした急激な気温の上昇で西側の石楠花の開花も早まるのかもしれない。

石楠花を隠さう雲の急にして   (阿波野青畝)
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ハナモモ(箒桃・照手桃)
- 2008/05/01(Thu) -
ハナモモ

これは照手桃といピンクの八重花桃である。
白や源平など、ほかの花桃に先んじて咲く。
ちょうど竹箒を逆さにしたように上に行くに従って広がる樹形となる。
隣には同じ照手の白があり、二つがコンビとなって一角を紅白模様に彩る。
花桃とその名の通り、実を得るためのものではなく花そのものを鑑賞するために作られた園芸種のようだ。
実際には杏ほどの大きさの実もなるが、食用には向かないと聞く。
当然のことながら私は食べたことはない。
よく考えたら、あの鳥たちも食べているのを見たことがない。まずいのだろうか。
どんな味がするのか、今度試しに口に入れてみようと密かに思っている。
今日から5月、また山笑う私の好きな季節がやってきた。

 花桃や蕊をあらはに真昼時 (飯田蛇笏)


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