
畑の真ん中の一畳ほどにニラが植えてある。植えてあるというより、植わっているという方が正しいかもしれない。なぜなら、そのニラは畑の縁に自然に生えてきたものを移植したもので、気がついたらその広さまで占めるようになったというのが正しい。
それ以後、ずっとその場所で冬に枯れては春には芽を出しを繰り返し、何年も味噌汁や餃子の具として重宝している。一つやっかいなのは極めて生命力、繁殖力が強いので、ほかの野菜や花々の間にもすぐに顔を出すことである。抜いても抜いても根が少しでも残っていると必ず復活する。
今、ちょうど花が咲き出した。これがすべて揃い咲きすると、白一色になり結構な見応えになる。ばっさり切り取って花瓶などに活けてもまた自然の味があっていい。
花は不思議な咲き方をする。花柄の先端がまず紡錘状に膨らむと、その薄い幕がベールを脱ぐかのように外れ、中から三角錐のような蕾が20~30現れる。それがさらに割れて花開く。花は白く小さく可憐である。
そういえば以前、建築家藤森照信氏が、『ニラハウス』を建築したことを思い出した。木で葺かれた屋根にニラを植えてあった。夏にはその白い花が一面に咲き揃って、その自然と建築との融合というユニークな発想には驚かされた。赤瀬川源平氏の自宅である。(1997年、日本芸術大賞受賞)
この強健な植物ならいろいろな可能性があるのかもしれない。私もテラスに植えてみようかなどと、密かに目論んでいる。