
この時期、ほかの花たちとは趣が違って、夕方から夜にかけて咲く花がいくつかある。その一つが、一般にツキミソウと呼ばれる待宵草(マツヨイグサ)である。
開花はまだ周りが明るい夕方、およそ小一時間かけて満開となる。開花にかかる時間が短いため、その前に腰を下ろしていると、肉眼で、まるでスローモーションの映像を見ているかのように、その開花を眺めることができる。時間を作り、その開花を観察することにした。午後7時、細長い蕾の、がくの部分に亀裂が入り、中の花びらがのぞき始める。そして15分後にはほぼ完全にはらりと開き終えた。レモンイエローの淡い色合いは夕刻にもはっきりと目に鮮やかに映って美しい。
今朝早くもう一度見に行くと、既に花は色褪せて閉じていた。
マツヨイグサ(ツキミソウ)はもともと江戸末期に渡来した、南米原産の観賞用の花であったが、今ではすっかり野生化して、野山や、土手などに草に取り囲まれるかのように人にあまり見向きもされずにひそやかに生きている。
この花を見ていると、若い頃聞いた日本を代表するプロ野球選手の言葉を思い出した。
「彼は昼に花咲く大きなひまわり、私は夜に咲く月見草」
彼とは誰のことか、そしてこの言葉を発したのが誰であるかを知っている人はかなりの野球通であろう。
なお、本来の月見草(ツキミソウ)はこの待宵草とは違い、生け花に用いられることもある白色4弁の花だと教えてもらったことがあるが、まだ私はそれを見たことがない。
半夏生も過ぎ、いよいよ夏本番を迎える。風鈴の音が涼を誘い、そろそろ蝉も土から出てくる頃となった。