バラ(宴) 〜雨薔薇(あめそうび)〜
- 2008/08/29(Fri) -
雨薔薇

『毎朝・・会うのが楽しみ・・優しいパステル色は・・「モーニングブルー」と呼んでるの』
晩夏に咲く濃い蒼、淡い蒼の朝顔を描いた素敵な文の一節を見つけた。(PANSY「蒼 濃く…淡く…」より)
「モーニングブルー」、なんて響きのいいイメ−ジ豊かなネーミングだろう。

突然、激しい雨が降り出した。庭が雨水で覆われる。たちまち、そばの川が濁り、流れが音を立て勢いを増す。
まるで夏の終わりを告げるかのような思いを抱かせる強烈な雨だ。
1時間程で小降りとなる。傘を差して外に出る。流れた後の水模様が庭に描かれる。
花々はどうだろう。枯れ色になった紫陽花が頭を地に付け、土の跳ね返りをかぶっている。
ニラの白い花が直立してすっと首を伸ばしている。

歩を進めると、その激しい雨の後にもかかわらず、いくつものバラが雨を溜めて綺麗に咲いている。
この赤い「『宴」を見た瞬間、ふと言葉が口からついて出てきた。
『雨薔薇(あめそうび)』……、雨滴を湛える薔薇をそう名付けて呼ぼう。
私の辞書にまた新しい言葉が加わった。「雨薔薇… モーニングブルー」。

    贅沢に寡黙に薔薇に降る雨は (原田青児)
 
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ハギ(萩・江戸絞り)
- 2008/08/28(Thu) -
江戸絞り

庭では白萩など、幾種類かの萩が揃って咲いている。
その中で、この江戸絞りは他に先駆けて7月の終わり頃から咲き始めていた。
マルバハギなどのような枝のしだれは顕著ではない。
白い花びらに薄紅色のグラデーションが部分的に広がる。
一番大きな上向きの花びらの中に、ちょうど絞り染め模様のような筋が広がる。
この花の名の由来はそこにあるのだろう。花自体は小さいが、品がある。
和の器に短く一枝挿して、さりげなく部屋の片隅に置くのがいい。

この萩のやさしさやいつも立ちどまる (高浜虚子)
 
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ヘクソカズラ(屁糞蔓)
- 2008/08/27(Wed) -
へくそかずら

人は時々勝手で、とんでもない発想をするものだ。
たとえば、自然が先にありきなのに、自分を中心に考える傲慢さがあったりもする。
この花の名前についてもその一例といえよう。
他の木々に絡みつきながら咲く可愛い小さな花「ヘクソカズラ」、葉茎の緑に白い色が映える。
フリンジのように縁を飾られた花びらと、その芯を彩る紅紫のコントラストも綺麗である。
しかし彼女は、自身に「屁」と「糞」を合わせて名付けられるなんて、思いもよらなかったことだろう。
茎を折ると強い匂いを発することに由来するというが、それにしても可哀想ではないか。
絡みつかれているのはエニシダ、これには金雀枝の字を当てる。随分な違いだ。

柳宗民の著の中で、その最後の行に「その花の可憐さからサオトメバナとも云う」とあるのを見つけ、溜飲が下がる。

名をへくそかずらとぞいふ花盛り (高浜虚子)

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マツヨイグサ(待宵草・ツキミソウ)
- 2008/08/26(Tue) -
マツヨイグサ

夕刻に開き翌朝にはしぼむ黄色い一夜花、マツヨイグサ。
以前、その開花を見ようとじっとその前に腰を下ろして待ったことがあった。
その時の様子は次のように記述されている。
 “開花はまだ周りが明るい夕方、細長い蕾のがくの部分に亀裂が入り、中の花びらがのぞき始める。
  そして15分後にはほぼ完全にはらりと開き終えた。”
朝が早い私はしぼむ前に、そのやさしいレモンイエローの花を見ることができる。

「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草(よいまちぐさ)のやるせなさ 今宵も月は出ぬそうな」
しかし実際には、竹久夢二が歌う宵待草(よいまちぐさ)という花はない。
彼は待宵草(まつよいぐさ)を音の響きと、その「人を待つ」にかけて「宵を待つ」と前後を入れ替えたのだろう。
またマツヨイグサは月見草としても一般化されているが、これも正しくはない。
本来の月見草(ツキミソウ)は白色4弁の花である。
私はそれを写真でしか見たことがない。

月見草夕月よりも濃くひらき (安住敦)
 
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クズ(葛・kudzu‐vine)
- 2008/08/25(Mon) -
クズ

蝉もいつやらその声が少なくなり、夜は秋虫が時を告げるかのように草むらで奏でる。
朝、キリギリスが庭で遊ぶのを見て捕まえ、部屋に入れた。
その胴に比して長い角度のある脚と前に伸びた触角の形態が面白い。
昔読んだイソップを思い出しながら、しばらく童心に返って眺める。

そろそろ秋の七草という言葉が語られ、耳に入る頃となった
葛がまるでニューロンのように庭先へ伸びてくる。
その芳香のある紫紅色の花はそれなりに美しさもある。
しかし、その強健な繁殖力を放任すればとんでもないことになる。
下の川から這い上がってくるのだが、これはとても困る。
ほっとくわけにはいかないので、様子を見て時々、大鎌でその蔓を切らなければならない。
情緒ある秋の七草とは言え、葛については花だけなら味わいもしようが、他は遠慮願いたい。
葛粉、葛湯、葛根湯…その有能な資源植物として、あるいは薬効は承知はするが…。
葛の英名は「[kudzu‐vine](葛という蔓植物)」、そのままである。

兎追ひし山こそ思へ葛の花 (所山花)


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