ヤツデ(八手・Japanese Aralia) 〜虫たちの観覧車〜
- 2009/11/07(Sat) -
八つ手


今日は立冬、冬の字が暦に現れ歌に冬の言葉が詠まれていく。
そんな、季節が寒さを感じさせる頃に咲く花もある。

ヤツデがたくさんの花を咲かせる。
花は乳白色の小さな花が球状に集まって円錐花序をつくる。
朽葉(くちば)色の膨らんだ花盤と拳を握って腕を伸ばしたような蕊が目立つ。
花びらはあるのかないのか、凝らして見なければ分からない。
目をマクロにすると尖塔形の反り返った花びらが僅かに確かめられる。
天狗の羽団扇とも呼ばれる掌状の葉は7あるいは9の奇数に裂する。
8裂はしないのに八手というのが面白い。
きっと縁起良くあれと末広がりの八の字を充てたのだろう。
花の少ないこの時期にその蜜を求めて蜂などもよくやってくる。
空の青をバックにすればそれは虫たちの観覧車。

    花八つ手日蔭は空の藍浸みて (馬場移公子)

ヤツデ


八手


やつで

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サフラン(洎夫藍・saffron)
- 2009/11/06(Fri) -
さふらん

日射しの中に淡紫色の優し気なサフランがある。
マツバギクを、磯菊を自分の葉のようにしてそれらに紛れながら。
あるいは枯葉を座布団にして。
紐のようにくねりと伸びた葯の黄や花柱の橙赤色と淡紫色の花被との補色コントラストが美しい。
そっと顔を出したそんな花を見つけるなどは思わず頬もゆるみ嬉しくなる。

吸い込まれそうな青空の日が続く。
秋の空はどうしてこうも澄み渡るのだろう。
何一つないこの青が、冴え冴えとした月を浮かべる夜の深い色と一緒なのかと思うと不思議だ。
「不来方のお城の草に寝ころびて/空に吸はれし/十五の心」と啄木は歌った。
ああ、体が空中浮遊して高く登っていく…私をもそんな気分にさせる秋の好日。
テニスに夢中になり、あるいは胴乱や展翅板をもって蝶の採集をした日々の私の十五。

  白紙に委任の愛の手形ぞサフランは (原子公平)

サフラン
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イソギク(磯菊・岩菊)
- 2009/11/05(Thu) -
いそぎく

磯菊はその名の通り、主に海崖や砂浜に生える花である。
関東から中部にかけての温かい太平洋側を分布地とする。
そんな菊が寒々としたこのアルプスの見える地で花開くようになってから何年にもなる。
厚みのある緑色の葉は白で縁取られる。
園芸書では「イソギクは黄色い筒状花だけの花である」との説明がなされる。
しかし我が家にはその小さな両性花と周りに菊独特の白い舌状花を持つ2種類がある。
それらが混ざり合って咲いている。
どういう事かは分からないが、そういうことなのである。

初霜があった。車のフロントは全面白く覆われる。
ワイパーでこそぎ落としてから勤めに出る。
季節がまた進む。
木々も徐々に粧いを落とし、春までの眠り支度を始める。

磯菊に秋冷いたる竜の里 (文) 

イソギク

磯菊
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イチョウ(銀杏・公孫樹)
- 2009/11/04(Wed) -
銀杏

イチョウが四方八方に手を広げる。
モミジとはまた違う感傷の色を目に届ける。
この木に銀の名を与えるのはなぜだろう。
私には黄金色に見えるのに。
光が葉の影を葉の上に同じ葉の形で幾重にも映し出す。
着物にするといいのではないかと思うほどに素敵な図柄だ。
木枯らしが無情に枝から葉を引き裂く。
落ちた葉の上にまた落ちる葉。
地に敷かれいくもまた愁いおびて美しい。

一色に大樹の銀杏落葉かな (小澤碧童)

イチョウ


いちょう


銀杏落葉


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ジョウビタキ(尉鶲) 〜北の大地の友〜
- 2009/11/03(Tue) -
ジョウビタキ雄

「やっと逢えたね。」
そう声を掛けたくなったのはジョウビタキ。
秋の色づきとともに毎年我が家にやってくる私の友達だ。
初声を耳にしたのは10月の中頃、ああ今年もやってきたんだと嬉しくなった。
しかし、なかなかその顔を見ることはできず、そうこうして2週間以上も時が過ぎていた。
ところが先週、いつもと様子がちょっと違うことに気がついた。
ツッツッツッ…と見なくても分かる馴染みのその声が、別々の場所から聞こえてきたのである。
聞き違いかとも思ったが、いや確かに一羽ではない。
そして今朝、その姿は庭に現れた。そう、雌雄のつがいで来ていたのだった。
地でじゃれ合う、あるいは枝から枝に追いかけ合うように、そして宙でもつれ合うように。
柿の木で、イボタノキで、梅の枝にと睦まじいつがいをしばらく眺める。
雄は銀灰色の頭に綺麗なオレンジと黒に身を包み、雌は全てを地味な茶灰色で纏う。
横羽の白い三角紋は一緒だ。

初冠雪、初氷の便りが届く文化の日、私には北の大地から一年ぶりに友がやってきた。
好きなムラサキシキブはたっぷりと用意してあります。
3月までお二人でごゆるりと滞在ください。

  一羽来てすぐ一羽来て尉鶲 (坂本宮尾)

尉鶲雌
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ムシトリナデシコ(虫取り撫子・小町草) 〜名残花〜
- 2009/11/03(Tue) -
むしとりなでしこ

長い萼筒に薄いピンク色の花びら。
ムシトリナデシコは夏の花である。
暑い盛りに庭や土手で気ままに群れなして咲いていた。
もともとは江戸時代に鑑賞用として移入されたものだという。
しかし、今ではこのようにすっかり野の花となっている。
そして11月、深まりゆく秋にその名残の花がある。
淋しげに一つ風に揺れ、一つ陽を浴びてと。
そこへ蟻も来ては茎を上り下りして遊ぶ。
この花に小町草の名もある。
才色兼備と謳われた平安歌人の顔を思い描きながら眺め見る。

いやはや、寒い寒い朝だ。肩と足が冷える。部屋に暖房が欲しい。
ムシトリナデシコにはこの急激な冷え込みはこたえるのではないか。
楚々としたその姿もそろそろ見納めかも知れない。

今日は一日、私だけの文化の日としよう。

朝ごとに秋深くなる木草かな (角川源義)

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フジバカマ(藤袴・白藤袴) 〜想ひごとふと声に〜
- 2009/11/02(Mon) -
白藤袴

フジバカマが、隣り合わせに二種類ある。
先に咲いたのは白藤袴、遅れてようやく淡い赤紫のも咲き出した。
梢上に撚れた糸のような小さな花が集まる。
野の趣そのままに、飾り気のない素朴な花である。
万葉人はこの花に何を感じ、何を思って「秋の七草」に詠んだのだろう。
蜂が留まり、アサギマダラが休む姿を憶良も見ていたのだろうか。
花言葉には「ためらい」「あの日を思い出す」「優しい思い出」。
想い出を呼び戻すつゆごもりはづきの朝。

 想ひごとふと声に出づ藤袴 (永方裕子)

藤袴赤
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